表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
惑星は推しを滅ぼせない 〜文明保護ダンジョンとフレブル連れの探索者〜  作者: まえった


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/47

1話 落下と管理核

はじめまして。

本作が初投稿となります。


拙い部分もあるかと思いますが、

少しでも物語を楽しんでいただければ幸いです。


応援やご感想をいただけると、とても励みになります。


また、イメージイラストや外伝の設定集も公開しています。

あわせてご覧いただければ、世界観をより深く楽しんでいただけると思います。


展開の予想やアイデアなどありましたら、

感想欄やなろうのメッセージ機能からお寄せいただけると嬉しいです。

すべてに返信はできないかもしれませんが、大切に読ませていただきます。


それでは――

「落下」から始まる物語を。


1話 落下と管理核


四十六億年生きてきた


大量絶滅を五回見送った

文明の芽が消えるのも見てきた


だが


いまの人類は、少しだけ違う


火を扱うだけの生き物だったはずが

歌を作り

物語を書き

映像に涙を流し

誰かを推して生きる


尊いとか言う


滑稽で

愛おしい


滅ぼす予定だった


でも


もう少しだけ

見ていたくなった


だから


試験的に

ひとつだけ

迷宮を作ってみた


作業の合間に

新作アニメの最終話を見たり、小説を読んだり…


気づいたら

その真上で高層ビルが育っていた


……え、空き地じゃなかったの



地下機械室は、いつもより静かだった


竣工前夜

現場の音が落ちる時間帯


昼間は人と機械で騒がしいが

この時間は、ビルが自分の骨格だけを鳴らしている


真田一はその音が好きだった


配管の僅かな振動

換気の風切り音

遠くで鳴るリレーのカチ音


異常は音でわかる


だから最後の夜も

自分で歩く


図面を見て

現物を見る


現場監督の仕事は

完成したものを褒められることではない


事故を起こさないこと


そのために

最後の最後まで嫌われ役をやる


真田はクリップボードを脇に抱え

配電盤の表示を確認していた


その瞬間


床はある


だが足裏の感覚が一瞬遅れた


揺れではない


浮遊感


胃がふわりと持ち上がり

内臓がわずかに上へ引かれる


エレベーター急降下の初動に似ている


違うのは


この感覚が

止まらず続いたこと


工具箱が数センチ浮く

ボルトが床を離れる

耳がキンと鳴る


真田の脳が冷静に計算する


縦だ


建物全体が

真下へ沈んでいる


音はまだ来ない


鉄骨の破断も

コンクリートの破砕も


先に来るのは

重力が狂う感覚


免震構造の揺れではない


杭は支持層を掴んでいる

地盤沈下ではない


液状化でもない


ならば


下に空間がある


口の中が乾く


現場監督としての常識が

世界の異常を拒否する


だが足が答えを返す


落ちている


二秒あれば死を計算できる


高さ

重量

衝撃速度


助からない


真田は叫びそうになり

それを飲み込む


叫んだところで何も変わらない


変わらないなら

最後まで見る


それが現場の癖だった


白い閃光


次の瞬間


世界が叩きつけられた



衝撃は

破壊音ではなかった


圧殺音だった


巨大な何かが

下敷きになる音


骨が砕け

鱗が潰れ

翼が裂ける


轟音のはずなのに

耳は遠い


粉塵の匂い

鉄の匂い

焼けた油脂の匂い


暗闇の中で

真田は息を吸う


吸える


生きている


あり得ない


瓦礫の圧はある

胸は苦しい


だが潰れていない


視界が少しずつ戻り

暗闇の輪郭が生まれる


目の前に横たわっているのは

黒い鱗の巨大な竜だった


長い首

折れた翼

尾が震え


そして止まる


超高層ビルの基礎杭が

その頭蓋を貫いている


黒竜


神話の言葉が

現実になって横たわっている


真田は理解できない


なぜ地下に竜がいる

なぜ自分が生きている


答えは

黒竜の胸から溢れ出た


青黒い光


濃密なエネルギー


それは空間を震わせ

逃げ場を探すように漂い


真田の胸へ吸い込まれた


拒否する暇はない


息が止まる


視界が白くにじみ


半透明の文字が浮かぶ


【管理核 接触確認】

【SP +1000】

【闇属性 適合】


体の奥で何かが書き換わる


骨が強くなる

皮膚が硬くなる


瓦礫の圧が

軽くなる


無傷ではない

だが死んでいない


防御が

世界の理不尽を受け止めている



「え、ちょっと待って」


少女の声


暗闇の上から降ってくる


「そこ、空き地のはずだったんだけど」



「……高層ビル、建ってたの?」


軽い


悪びれない


それが逆に恐ろしい


「作りかけのまま、新作アニメ一気見してたら、完成してた?」


小さく咳払い


「まあ、いいか」


「黒竜、先に死んだし」


「きみ、生きてるし」


声が少しだけ弾む


「面白い」


「お気に入りにしようかな」


真田は喉の奥で息を殺す


誰だ


何者だ


問いかける前に

黒竜の体が崩れ始める


鱗の縁から光が滲み

肉が霧のようにほどけ

骨が粒子になって散る


死体は残らない


残ったのは


拳大の黒い石


鈍く、重い


視界に浮かぶ


【黒龍の魔石 獲得】


拾い上げる


冷たい

だが鼓動のような振動がある


少女の声


「それ、いいやつ」


「たぶん、世界で最初」


世界で最初


その一言で

規模感が崩れ落ちる



真田は瓦礫を押しのけ

上体を起こす


懐中電灯だけが生きていた


点けると

光が石壁をなぞる


瓦礫の下に石の床がある


人工の石造


壁は削ったように真っ直ぐ

角は不自然なほど直角


そして

圧倒的に広い


東京湾岸の地下に

こんな空間があるわけがない


ここは現場ではない


現場の外


世界の外


懐中電灯の光が足元へ落ちる


影が濃くなる


その影が


揺れた


水面のように波打ち

奥へ広がっていく


真田は息を呑む


少女が楽しげに言う


「闇」


「適合」


「やってみて」


真田は指を影へ差し入れる


抵抗がない


指先が沈む


手首まで

肘まで入る


冷たい

だが痛くない


そして


影の中は


広い


黒い空間

何もない

なのに圧迫感がない


ただ存在する闇


少女の声


「そこ、管理層の名残」


「本来は中枢」


「モンスター入れない」


「人は許可制」


真田は手を引き抜く


指先に冷気が残る


理解は追いつかない


だが身体は拒絶しない


受け入れてしまっている



「お前、誰だ」


真田はようやく問う


少女は少し間を置く


得意げに


「惑星」


「地球」


喉が鳴る


馬鹿げている


だがこの空間の圧は嘘を許さない


「なんでこんなことをする」


「俺たちは侵略されてるのか」


少女は軽く笑う


「侵略じゃないよ」


「軌道修正」


「きみたち、最近ちょっと危ないし」


軽いのに

言葉が重い


「滅ぼすことだってできる」


一瞬だけ

温度が落ちる


「でも、やめた」


「いまが一番面白いから」


真田の背中が冷える


それは愛だ

だが同時に

審判でもある



巨大な石門が見える


中央に光の輪


【入退場ゲート】


真田は門の前で止まる


「地上に戻れるのか」


「戻れる」


「でも」


少女の声が少しだけ真面目になる


「きみが持ってるもの、世界が欲しがる」


真田は短く息を吐く


目立ちたくない

騒ぎも嫌いだ


だが状況は

それを許さない気配がある


真田は言う


「俺は目立ちたくない」


少女は一瞬黙り

それから小さく笑う


「じゃあ、うまく隠して」


「お気に入りなんだから」



真田は光の輪へ踏み込む


冷たい光が体を走査する


痛みはない


視界が白に塗り潰され


次の瞬間


夜風


潮の匂い


ヘリの音


サイレン


遠くの群衆のざわめき


真田は立ち尽くす


目の前に立つのは


白い巨大な正方体の建造物


四方に入口


上部に巨大モニター


光る文字


【第一迷宮 稼働】

【探索者登録 自動付与】


半透明のUIが視界に浮かぶ


ステータス

ログ

ダンジョン内ルール


世界が変わった


変わってしまった


真田は夜空を見上げる


星は、いつもと同じ位置にある


だが


自分の中には闇がある


胸の奥に

管理核がある


黒龍の魔石がある


そして


地球が言った


お気に入り


少女の声が

どこか楽しげに囁く


「ここから、もっと面白くなるよ」


真田は唇を噛む


面白いで済ませるな


だが


反論する暇もなく


世界は

迷宮の名前を表示した


【はじめてのだんじょん】


真田は一瞬、目を細める


ふざけているのか


それとも


本当に“はじめて”なのか


少女の声が少しだけ誇らしげに言う


「うん、第一号」


「いちばん最初」


「ちょっと張り切った」


真田は息を吐く


壮大な陰謀のはずなのに

名前が軽い


だが


その軽さが逆に怖い


四十六億年生きた存在が


“はじめて”と言った


それが


いま始まった



※本話の漫画はイメージ用です。

拙い点もあるかと思いますが、雰囲気として楽しんでいただければ幸いです。

漫画作成かなり時間かかるので、小出しでたまに、出したいな


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ