第九篇 明朝
朝日が顔を出し、新たな1日が始まります。
街に戻った紅ずきんたちは、花屋に着きました。
「紅、遅かったじゃない!!」
お母さんが頭からツノを生やして、雷を落とします。
「お父さんも、猟なんかするからよ」
説教はおそらく30分以上に及んだのではないでしょうか……。 説教が終わると、紅ずきんが、
「お母さん、実は人探しをしているんだけど……」
魔女は説教の間、隣の本屋で立ち読みをしていました。熊沢さんは、週刊誌を立ち読みしています。釣り、家、科学、名作漫画やアニメ原作等々……。ついには、動物図鑑を立ち読み……。熊を目次で探して、写真を眺めています。熊が立ち読みって、想像すると……。
紅ずきんが魔女を呼び、お母さんに紹介するはずが……
「姉様!?」
えっ!!? お母さんが魔女の姉!?
「ブルハ!? 家から出るなと言ったはず!」
お母さんは花に水をやっていましたが、手を止めてそう言いました。ちなみに、魔女をスペイン語でいうと、”bruja”っていうみたいですよ。……もっといい名前をつけてあげましょうよ……。まぁ、ここはスペインではないので、違う意味なのかもしれませんが……。
魔女のブルハは姉、紅の母と言い争いをしました……。そこへ、常連客が……
「ブルハ!?」
……丁度来た常連客がブルハを知っているということは……
「姉様……」
ご都合主義ってヤツですかね。
「あなたは、家にいなさいと言ったでしょ!」
お母さんと
「お姉様の言う通りだわ!」
常連客のクリアントが魔女を責めます……。どうやら、お母さんが長女で常連客が次女のようです。
「やめて!!」
紅ずきんが言いました。
「紅の言う通りだ。店先でもめてみっともない……」
と、お父さん。花屋は大通りに面しています。
「……早く戻せ」
お祖父さんが急かします。
「姉様、私に魔法を使わせてください。このご老人を元に戻してあげたいのです」
ご老人ねぇ……、他に言い方がなかったのか?
「簡単には無理よ。あんたの魔法は欠陥なのだから。私たちが、どれほど頑張らなければいけないのかも知らずに……」
微妙な空気が流れるなか、
「じゃあ、ゲームをしようよ。勝ったら、お祖父ちゃんを戻してね」
紅ずきんの提案は可決しました。ルールは長女であるお母さんが決めます。
「では、”トレード”の魔法をこの場で使用して、重さが3.0kgジャストのモノを用意できれば、勝ちと認めましょう。制限時間は3分。それを超えると、あなたの負け。おうちに帰りなさい」
急に魔法モノが濃くなっているので、みなさんに簡単に説明すると、魔法使いは血縁、つまりは血のつながりが大きく関わります。長女、次女、三女の順に、受け継がれる魔力が格段に下がり、一般的には、四人目には魔力が受け継がれることはありません。ですので、三女であるブルハの魔力は、受け継いだ量が少なく、”欠陥”呼ばわりされているのです。なお、兄弟も同じです。生まれた順に、魔力が減っていくのです。
「"トレード"の魔法って……?」
紅ずきんは、当然の疑問を聞きます。
「"トレード"とは、取引とか貿易でして」
熊沢さんは、本を片手にそう言いましたが、誰にも相手にされず、かわりに紅の母が答えますが、
「魔法は、まだあなたには早すぎるわ」
そう言いました。血縁が関係するのであれば、そう、紅ずきんも魔法が使えるはずです。しかし、魔法の存在自体をお伽噺のように感じています。お母さんは、紅ずきんにまだ話していなかったのです。
「"トレード"で、3kgのものを……。分かりました。姉様から頂いたこのチャンス、頑張ります」
ブルハは周囲を見渡し、トレードの対象となるものを探します。トレードは、基本的には1対1の等価交換を行う魔法ですが、対価として、対象物の距離が関係します。かみ砕いて説明すると、対象物と発動する人の距離と、交換する物の重さと2つの物の距離が関係するのですが、ややこしい計算などはなく、単純に発動者の勘やノウハウです。なぜなら、魔力の強い人は、魔法の重ね合わせで、どうにでもなりますので……。
「3キロのものなんて、あるの?」
紅ずきんは、何かを探しているブルハに聞きます。
「ひとつでは難しいでしょう。だから、複数のものを準備しないと」
「それなら、石とか砂とか?」
紅ずきんは、花屋の腐葉土などの袋を見ながらそう言いました。しかし、腐葉土などは、10kg単位の袋売りです。
「3キロにするには……」
ブルハは悩みます。はかりが無ければ、本当の重さは分かりません。考えるうちに、時間が過ぎていきます。残り時間は2分。
果たして、このゲームに勝つことができるのでしょうか。そして、お祖父さんはもとに戻るのでしょうか。
次回が、紅頭巾Ⅰの最終回です。
To be continued…




