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紅頭巾Ⅰ  作者: サッソウ


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10/11

第十篇 街中の大通りで

 ブルハは、トレード魔法を魔法杖で発動させます。魔力が弱い者は、魔力のサポート用として、魔法杖や魔法陣を使用します。これらにより、消費する魔力を引き下げ、安定して使うことができます。

 購入した腐葉土が徐々に少なくなり、トレードの対象となった貯水タンクの水が1Lのペットボトルを満タンにしていきます。ちなみに、トレードは座標固定ですが、トランスという変化魔法を上乗せして、双方の出現位置の座標をねじ曲げているのです。ですので、腐葉土は貯水タンクの外部に積もり、水はペットボトルに入るという、すごく説明しづらい絵面になっています。

 あっという間に3本のペットボトルが水で一杯になりました。

「確かに、3キロね」

 紅の母は、はかりを使わずに言いました。魔法で調べる様子もありません。

「解除の魔法、使用を許可しましょう」

「姉様! ありがとうございます」

 ところで、お気づきだろうか。もはや、親戚の集まりである。なお、お祖父さんは、紅ずきんの父方のお祖父ちゃんであり、姉妹とは血縁関係ではありません。


 午前9時。花屋に面する大通りの交通量は増え、通りすぎる人は皆、痛い目でこちらを見ます……。

「邪魔だ! 立ち読みなんかするな!!」

 本屋の店長が、熊沢さんを追い出します!

「マイ ブラザー! そんな冷たいこと……」

 ……、本屋の店長が熊沢さんのお兄さん!?

「もし弟だろうが、立ち読みは許さねぇ。それに、店先で何をやってるんだ!? 営業妨害だぞ!!」

 熊沢さんの兄らしき、リーディングベア・クマザワさん、長いので、熊沢兄は、本屋を営業しています。店名は、熊沢書店。

「くまたんのお兄ちゃん?」

 紅ずきんが熊沢兄を眺めます。あまりにも眺められるので、

「……なんだ?」

 熊沢兄が紅ずきんに聞きましたが、紅ずきんが答える前に、魔女たちが大変なことに……。何が大変なのかといいますと、お祖父さんが人間に戻らないで、巨大化してしまったのです!!

 戦隊ものを思い出します……。

「あぁ~あ、大変なことになっちゃった……」

 紅ずきんが、巨大お祖父さんを見上げます。人ごとですか?

「あっ、ウルフ……」

 熊沢さん(熊沢弟)は、口を開けながら、指差しました。

 外見は狼に戻り、巨大化したお祖父さん。頭に血が上っているのか、暴れ始めました。公共物破壊及び器物損壊、自動車・歩行者通行妨害、日照権侵害等々……。巨大狼は一瞬にして凶悪犯に……。パトカー出動で辺りは大騒ぎです。

 熊沢兄弟が巨大狼を止めようと試みますが、無駄です。魔女は魔力の使いすぎで倒れてしまい、危機的状況、つまりピンチです。ブルハの魔力では、耐えきれなかったのです。しかも、魔法が暴発して、最悪な状態に。

 しばらくして、西洋の町並みに戦車が現れました。銃器を持つ人々が巨大狼に向かって撃つのも時間の問題です。(世界観も崩壊しそうです)

 紅ずきんは熊沢書店に入り、何かを探しています。熊沢さんが紅ずきんを手伝います。熊沢兄は、その行動を見るだけで、何をしているのだろうか……という顔をしています。

「あった!」

 紅ずきんが、探していた本を見つけました。表紙は朱色で、全部で12巻にも渡り、1巻あたり1000ページ程はあるでしょうか。

「探さないと……」

 紅ずきんは本の索引からあるものを探しはじめました。

「……おい、立ち読みは」

「兄貴、立ち読みじゃありません。だって、座ってますから」

 と、熊沢さん。

「同じだろ……。見るんだったら、買え」

 熊沢兄は弟に呆れているように見えましたが……。

「くまたん、全巻ヨロシク」

 紅ずきんが言いました。

「うぇっ!?」

 熊沢さん、なんか変な発音になりましたよ……。

「全巻で61028ポト」

 熊沢兄が電卓で計算しました。ちなみに、ポトは熊沢書店での通貨のようなものです。ここの書店は会員制のようですから……。9ポト=294円です。

「たっかぁー」

 と、熊沢さん。円に換算すると約199万円。高いですね。

「文句をいうなら倍にするぞ」

 熊沢兄の脅迫でしょうか……。倍ということは398万円!?

 借金がまた増えた熊沢さんです。

 紅ずきんと熊沢さんは、購入した本を山積みし、一巻一巻索引から調べていきます。

「ありました。10巻のジャストスリーセブン、777ページの上から18行目以下のところです」

 熊沢さんが発見しました。すぐにそのページを開くと……

「”解魔法の呪文”……。くまたん、すごいよ」

 紅ずきんと熊沢さんが探していたのは、魔法の呪文の本で、解魔法の呪文を探していたみたいですが、呪文を探して一体どのように……まさか!?

 熊沢さんは、魔女の杖を拝借し、それを紅ずきんに渡します。自分は本を持って紅ずきんが見やすいようにします。さぁ、紅ずきんが呪文を唱えます!!

 空が暗くなり、稲妻が走り、辺りは緊迫した様子です。

 そして! 紅ずきんが杖を振った直後、巨大狼が消え、人間に戻ったお祖父さんが……。一発で成功です。

「さすがは、魔女の血をひく子供か……」

 意味深な発言を残し、熊沢兄は店内に戻りました。


   *


 お昼過ぎ、おつかいが途中の紅ずきんは、お母さんに叱られるも、お祖父さんの件で褒めてもくれましたが、やっぱり無茶をしたので叱られました……。

 さぁ、紅ずきんは昨日のおつかいを完了すべく、熊沢さんとバイクに乗って、お祖母さんの家に向かいます。忘れたとは言わせません。

 お祖母さんの家に着くと、ドアをノックして中に入りました。すると……

「……くまたん。アレって……」

 紅ずきんがベッドを指差して言いました。

「……ウルフでしょうか?」

 ベッドの上で寝ているのは、おなかを膨らした狼です。

「もしかして、お祖母さんはあのウルフに……」

「くまたん、変なこと言わないでよ……」

 狼が2人……正しくは1人と1匹(?) の会話を聞いて目を覚ましました。

「誰だぁ~?」

 狼が言いました。もうここまでくると、動物が喋っても不思議に思えなくなった自分が怖いです……。ちなみに、喋れる理由は続編で分かります。

「ん~……?」

 目をこすり大きなあくびをする狼です。

「えっと……」

 後退りをする紅ずきんと熊沢さん。

「……」

「……」

 沈黙が少しあったあと、狼が

「食ってやる!!」

 紅ずきんと熊沢さん目掛けて飛びかかってきます!!

 そこへ、右側の窓からお祖母さんが飛び膝蹴り!!

 狼がぶっ飛びます!!

「可愛い孫になにをする気だねぇ!?」

 お祖母さんは、狼のしっぽを握って、ぐるぐると回します。すごい……。

「たぁぁーー!!」

 狼を外に投げ出しました! 狼は星に……。

「全く、お祖父さんが狼になってから毎日毎日、野生の狼がナンパしにくるから大変だよ。全く……」

 と、お祖母さん。

「……」

 紅ずきんと熊沢さんは目をあわせてぽかーんと口が開いたままに……。

「っで、どうしたのかい?」

「あっ、お祖母ちゃんに届けものが」

 紅ずきんはテーブルの上の籠の中を見ます。

「あれ? みたらし団子がない……」

(ギクッ!)

 熊沢さん、異常な量の汗が……。

「まぁ、いいよね」

 開き直りの紅ずきん……。熊沢さんはホッとしました。

「はい。コーラと花の種」

 紅ずきんが、コーラと花の種をお祖母さんに渡しました。

「ありがとう。丁度喉が渇いてねぇ……」

 お祖母さんがコーラを開けた途端、コーラが噴水のように噴き出しました。あんなに籠を振るから……。


   *


 あれから半年……

 紅ずきんがお祖母さんの家に行くと、花が咲いていました。

「きれいなお花……」

 紅ずきんが花に見とれていると、お祖母さんが

「確かにきれいな花だが、不愉快だね。こんな花を贈るなんて……」

 お祖母さんは苛立(いらだ)っていました。

 紅ずきんが半年前に届けた花の種は黄色のチューリップに成長していました。

「……黄色のチューリップの花言葉って知っているかい? ……”望みのない恋”だよ。私が花に詳しいことをあの子は知っているはず……。なのに、こんな花を贈るなんて……。まぁ、チューリップだけならまだしも、西洋苧環(オダマキ)の種まで……。花言葉は”愚者”……」

 そんなお祖母さんは、お母さんに生きた虫を送りつけたとか……。お祖母さんが町から離れて住んでいる理由がなんとなく分かったような気がします……。


THE END...

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