むかしむかし、サバンナで
むかしむかし、サバンナで
昔々、サバンナで、草食動物の王様を決めようと、話し合いをしていました。
ライオンやヒョウに対抗するため、群れが大きいものが王様になるべきだ。
という話になり、グループ分けが決まりました。
馬科と牛科、それと、自分で身を守ることのできる大型草食動物たちの群れに分かれました。
キリンや象などの大型のものたちは、一頭ずつの力はありますが群れが小さいので、王様には選ばれませんでした。
馬科は群れは大きいのですが、シマウマ一種類だけなので、王様には選ばれませんでした。
牛科の中から王様を選ぶことになり、立派な角を持ったヌーが王様に選ばれました。
しばらくはサバンナに平和が訪れました。
しかし、肉食獣の数が増え、ライオンの群れが多勢で攻めてきて、草食動物たちは散り散りになりました。
満腹したライオンが去ると、また草食動物たちは集まって、いくら力があっても角があっても、肉食獣には勝てない。
やはり、必要なのはスピードだ。
と、話し合い、足の速いガゼルが王様に選ばれました。
王様ガゼルは、しばらくはライオンと戦うため、先頭に立って走り回っていましたが、
次第に疲れて、ラクをしたくなりました。
そこで、前衛をトピに押し付け、自分は後ろのほうで、ふんぞり返りました。
トピは必死で逃げ回りますが、だんだん危なくなってきます。
トピのSOSを聞き、ガゼルのうち、トムソンガゼルが、前衛に戻ろう!と叫び、群れから離れていきました。
残ったグラントガゼルは、このままでは、トムソンガゼルが勝手に王様になってしまう!と焦って、トムソンガゼルに群れに戻り、後衛にもどるよう要請しました。
前衛に疲れてきたトムソンガゼルも、一つの群れに戻りたいと思いましたが責任感が強かったので、群れごと前衛に行こうと言いました。
ガゼルの話し合いは上手くいかないまま、だれが王様か、よく分からなくなって、サバンナは混乱しました。
向こうの藪の中で、チーターがこちらをうかがっています。
ライオンも、また腹を空かせて、にじり寄ってきています。
しかし、ガゼルは言い争うばかりで、肉食獣の警戒すら忘れています。
それを横で見ていたキリンや象は、ガゼルたちの保身の行動に呆れ返りました。
自分の身は自分で守ろう。
と思いましたが、サバンナには身を隠すところなどありません。
肉食獣が大挙してやってくれば、大型であっても、草食である以上、勝ち目はありません。
草食動物たちは、自分の命が危険なことを自覚しても、半ばあきらめて、ただガゼルたちの騒ぎをみつめるしか、ありませんでした。