運、云々
運、云々
妹はファミレス運が悪い。
ファミレスですんなり食事ができることは、ない。
○家族でファミレスに行く。妹にだけ水が来ない。
○家族が食事を終わる。まだ妹のオーダー品はやってこない。
○妹がほうれん草のバター炒めを頼む。青虫がついてくる。
○妹がオニオングラタンスープを頼む。半分凍ったまま出てくる。
○妹がオムレツを頼む。菜箸のかけらが入ってくる。
○妹がコーヒーを頼む。ミルクピッチャーが空のまま出てくる。
エトセトラ、エトセトラ、エトセトラ……。
妹とファミレスに行くと、さて今日は何が起こるか?とワクワクして待つのだが、最高にウケたのは、妹がアイスティーを頼んだ時のこと。
○妹がアイスティーを頼む。ガムシロップが入ってくる。
妹は冷静に右手を上げて店員を呼ぶと
「アイスティーにガムシロップが入ってるんですけど」
とこれまた冷静に伝える。
店員は怪訝な顔をする。(そりゃアイスティーなんだからガムシロップ入れるでしょうよ?何言ってんの、この客?)と言ってる心の声が丸聞こえだ。
妹がアイスティーのグラスを持ち上げて、店員に見せる。
満々と注がれたアイスティー。たっぷりの氷。その氷たちの真ん中に、ガムシロップのポーションがポツン、と、いる。
ぶは!と店員が吹き出し、慌てて表情を改め頭を下げる。
「すぐにお取替えいたします!」
そう言って次に出てきたアイスティーはこぼれそうなほど満杯。たぶん、サービスなのだろう。
ほうれん草のバター炒めも、オムレツも、オニオングラタンスープも、取り替えてもらった品はすべて量が多く、出来立てほやほやで普通より美味しい。
それを思うと妹の運は、もしかしたら良い運なのかもしれない。
妹は懲りもせず、またファミレスに行くだろう。
いつもどおり、ドリンクバーのエスプレッソマシンのミルク切れに立ち会う。
そして、冷静に、右手をあげる。