第三章 地方と中央①
すでに五日たった。風は強くなっているが、雨にたたられることもなく順調に進んでいる。もう数日ほどでレストリウス王国の領内に入ることができるはずである。
ロウマは手に息を吹きかけた。
ここ数日、寒さがだいぶ増してきた。まだ十月に入ったばかりだというのに、この寒さである。レストリウス王国にいたころは、まったく無かった事だった。
「寒いの?」
一緒に騎乗しているナナーが声をかけた。彼女はロウマの前に騎乗していた。ナナーは乗馬の訓練をした事が無かったので、ロウマと一緒に乗ることになった。
ロウマも喜んで自分の愛馬に騎乗させた。
「寒いさ。こんな気候だからな。お前は寒くないのか?」
「私は大丈夫。これでも寒いのは平気な方だから」
「強いのだな、お前は」
「そんなことないわ。体は丈夫でも心は弱いわ。その点、あなたの方がまだ……」
「やめよう、そんな話」
二人は馬上で黙った。湿っぽい話は、もうこりごりだった。これからは明るく生きていきたかった。何事にも負けず、まっすぐ前を向いて生きていきたい。
だが、それはレストリウス王国に帰還して、国王から許されればの話だった。
「ロウマ、手を出して」
ナナーが言った。
よく分からなかったが、ロウマはとりあえず冷たくなった手をナナーに差し出した。
ナナーはロウマの手を握ると、自身の息を吹きかけた。手どころか全身が熱を持ってしまい、ロウマは固まって何も言えなかった。
「もしかして、びっくりした?」
「…………」
「そんな石像のように固くならなくてもいいじゃない。あなたの手が冷たいのだから、これぐらいしてもいいでしょう」
ナナーがねだるような目で見つめてきた。




