父と娘⑨
「ヴィドーはパクト山の守備隊長だ……あれ?ヴィドーは?」
辺りを見回したが、ヴィドーは影も形もなかった。
「先にパクト山に行ってもらったよ」
「あっ、そうだったの」
パクト山は反乱軍の重要な拠点だった。大事な書類や武具甲冑、軍資金などはそこに隠しておいた。ヴィドーの役目はパクト山の防備及び、機密などが外にもれることを防ぐのが役割だった。
ちなみにパクト山にはハイドンも行ってもらうつもりだ。機密を守るのにはヴィドーだけでは不安だからだ。
「レジストは騎馬の将校だ」
「分かったぜ、セイウン。だけど、お前の副官はどうするつもりだ?今までお前の副官の役割は俺がしていたからな。誰を抜擢するんだ?」
「俺の副官はエレンだ」
「えっ、私?」
「お前は俺といる期間も長いから、俺のことを誰よりも熟知しているはずだ。だから副官の役割をあてることにしたんだ」
しかし、これは表向きの理由であり実際はそうではなかった。エレンは幼いころに父親に受けた虐待で、暗闇を極度に怖がるようになっており、セイウンと一緒でないと平常心を保っていられなかった。
彼女を独立した指揮官に任命するのは心配だった。そこでセイウンはセングンに頼み込んで、エレンを副官にすることにした。
「レジストには、デュマの副官になってもらう」
「本当か、セイウン?」
「ああ。お前はデュマと同じような単純なタイプのように見えるが、実際は思慮深いところが見られる。だから、しっかりとデュマを補佐してくれ」
「分かった。そこまで言うのなら、俺もしっかりと自分の職務を果たしてみせるよ」
「頼んだぞ」
「お前もしっかりしろよ。もし少しでも、エレン嬢が身体的にも精神的にも傷付いたら、俺は即刻お前を殺すからな」
「もし殺しに来た時は、返り討ちにするよ」
セイウンが言い返すと、その場にいたみんなが笑い出した。
ただし、エレンを除いて。




