父と娘⑧
セイウンもようやくまじめな表情になってくれた。さっきまでふざけていたのが嘘のようだった。
セングンは役割のことを記した表をセイウンに渡した。彼の口から言ってもらいたかった。口から発することで、みんな各々の部署に対しての使命感が湧くはずである。役割はセイウンとセングンが、じっくりと話し合って決めたものだった。
「頭領は俺。つまりセイウン=アドウールだ。異存はないな」
異論を唱える者は誰一人いなかった。みんなセイウンが頭領で当たり前だと感じているからである。
「なんだか俺が頭領ってのも気恥ずかしいな。ちゃんとやっていけるかな……」
「それはお前次第だぞ、セイウン」
セングンが言った。
次に歩兵を統括する大隊長だった。これはバルザックに決まった。
「頼むぞ、バルザック」
「お任せください、セイウン殿。期待を裏切るような真似はいたしません」
相変わらずだった。もう少し気さくに対応してくれればいいのにとセイウンは思った。
騎馬の大隊長はデュマだった。この人選はセングンが決めた。彼は普段、デュマとは気が合わないが、実力は認めていたので、この部署に任命したのである。
「まさか、俺を騎馬の大隊長にしてくれるとは感謝しているぜ、セングン」
「うぬぼれるな。しっかり働かないと、クビにするぞ」
「分かってるよ。それなりの働きはしてみせるぜ」
セイウンは続けて読み上げた。
「ガストーは、バルザックの副官として歩兵に当たってくれ。サイスも同じく歩兵の小隊長としてバルザックの下につけ」
ガストーもサイスも補佐する役割が上手な人々だった。特にサイスはセイウンの父のクリストが起こした反乱にも加わっていたので戦には慣れている。バルザックをうまく補佐してくれるはずである。
ガリウスは兵糧関連の調整を行う役についた。彼自身は、兵を動かすこと自体、そんなに上手ではなかったが、計算に関しては一流だったので、この役職に就けた。