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二十歳で行き遅れと嘲られた辺境伯令嬢ですが、二人の王太子に一途に求められています。  作者: 奏楽雅


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第5話:当然のことをしただけです

「お前何者だよ!」

セシルを人質に取った野盗が周囲を見て震える声で聞いてくる。

うめき声と、気を失ったもので周囲は埋め尽くされていた。

20人はいた野盗で立っているのは僅かである。

腰の引けた人は後回しにしたので立っていても震えていたりする。


「ミネルヴァ・ド・ヴァルシス…」


「名前のことじゃねえ!」


「20歳の行き遅れです…」


「そんなこと聞いてねえ!」


「お嬢様…」

なんで泣くのセシル。


「そいつは、ヴァルシス辺境伯令嬢だ。プレディアウス王国で恐れられていた存在だ」

木にもたれ掛かって、そう言ったのは最初に話していた相手だった。


「隊長どうしますか?」


「取り敢えず、動ける奴で直ぐにそいつとジジイを縛り上げろ。実が出るくらいきつく縛るんだ」


(実って…)


震えて立っていた男どもが、恐る恐る私たちを縛りはじめる。


「申し訳ありません…お嬢様。私なんか見捨てて戴いても良かったのに」セシルがぐずぐずに泣いている。


「貴方は姉妹みたいなものよ。そんなこと言わないで」



「こいつ、誰も殺してなかったのか…」

私を縛り上げたところで、仲間を確認した野盗が驚愕する。


「戦場なら命を絶っていました。ですが、余罪の分からない犯罪者だったので…」

そんな呟きのような問いかけに私は答える。


「生殺自由自在だと?」


「隊長。危険すぎます…この女…」


(ああ、余計なことを言ってしまったみたい…)


「確かプレディアウス王国でこいつは生死問わずの賞金が掛かってたはずだ!」


(そうなの?)


「ならばここで…」

野盗は私に視線を固定した。


「いや、ミネルヴァ・ド・ヴァルシス嬢の賞金は戦終了後撤回されているよ」


(そうなの?)

…いえ、誰?


朗々たる声が聞こえてきた。


隠れているようだが多数の気配もする。


「誰だ!出て来やがれ!!」

野盗が叫ぶ。


「よくも私の愛する大切な人を…」怒りに震える声がする。


「まさか…」私は天を仰いだ。


「生まれてきたことを後悔させてやろう」

その声が響くと、周囲から気配を消していた白い甲冑を身に着けた騎士が数十人湧き出てきた。


「なんだ!なんだ!」

野盗が動揺する。


「白い鎧だと…まさかプレディアウス!」


隊長と呼ばれていた、野盗が慌てて私に近づき剣を突きつける。

「ち、近づくとこいつを殺すぞ。だいたいこいつはお前らの最大の敵じゃないの…うがっ!」

野盗が言い終える前に矢が飛んできて、野盗の肩を射貫き、私の目の前を吹き飛ばされた野盗の剣が飛んでいった。


「敵などととんでもない…私が愛する唯一の女性。未来のプレディアウス王国王妃となられる方です」

騎士の陰から現れたのは、プレディアウス王国。王太子クロード・ド・プレディアウス殿下であった。


「…クロード殿下…何故ここに…」

私は思ったことを口にする。


「貴方を追ってまいりました」


(えぇぇ?)


「……ここは、ラムリア聖王国ですよ。その騎士たちは貴方の護衛かもしれませんが、軍事行動ととられても仕方ない事態になりますよ…」


「貴方を助けるためです。そのためなら如何なることも些事に過ぎません」


なんか違う気がするんだけど…


「野盗よ、大人しく掴まるか、この場で命を失うか選べ」


野盗たちは項垂れた。



私はクロード殿下の手で縄を切られ解放された。


「殿下。ありがとうございました。助かりました」

私はスカートを摘まみ上げて、カーテシーでお礼を告げた。


「当然のことをしただけです」

そう言って穏やかな笑顔を私に向けてきた。


***


「それでは、クロード殿下の行動は軍事行動では無かったということで間違いなのですね」

ここは王城の謁見の間だ。陛下の横に立つ侍従が前もって私が記載した報告書の確認をしている。


「はい、野盗を捕縛し、私を助けて下さいました」


「クロード殿下。我が配下を良くぞ助けて下さった。感謝いたします」


「陛下。彼女を助けることが私の役目だと思っています。感謝の謂れはございません。」

私より幾つも歳が下なのに、堂々たる風情は流石王族だ。


私は、野盗に襲われた後。クロード殿下が近衛騎士を伴い私を追ったことで軍事行動と取られかねない問題を解決するために王都に戻ることになっていた…


「ミネルヴァ嬢。何で何も言わずにいきなり帰ってしまおうとしたんだい?」

これはジャスティン殿下から私に投げられた質問。


「戦後で、領地の復興が優先いたしました。領民の生活が懸かった問題でしたので」

私は頭を下げる。嘘ではない戦略的撤退でもあったけど…


「確かにそうだが…何故護衛も付けずに」


「今まで護衛をつけたことが御座いませんでした」

領地までは旅程は遠いが整備された街道で今までこんなことはなかった…


「戦後の今はいくらなんでもそれは危険だよ」


「はい、申し訳ございません。今回の件で身に沁みました」


「では、ミネルヴァ嬢、私が領地までお送りしましょう」

クロード殿下がそう言い出した。


「え?」

(待って、それでは戦略的撤退にならない!)


「く、クロード殿下それには及びません、他国の王太子や騎士に我が国の貴族を送り届けて貰うなど…」


「私は構いません」


「いえ、私が私の騎士でミネルヴァ嬢をヴァルシス辺境伯領まで送ります」


(えええ?)

ジャスティン殿下がとんでもないことを言い出した。


「ちょちょちょ、ちょっとお待ちください殿下」


「これは決定事項だ!」


(いや勝手に決めないで)


「いえ、私が送りますので。陛下、私と近衛騎士の移動をお許しください」

言われた陛下も困惑顔だ。


どうなってしまうの?


お読みいただき有難う御座います。

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