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名残りの雪  作者: yukko
31/59

桜の道

立っていたその人が近づいてくる。


⦅えっ?………先輩? どうして?⦆

「早いな。」

「今日はありがと。忠頼。」

⦅えっ? お兄ちゃん? えっ?⦆

「奥さん、今日はありがとうございます。」

「いいえ、こちらこそ、いつも主人がお世話になっております。」

⦅えっ? ええ―――っ、お兄ちゃんと……えっ?⦆

「美咲ちゃん、こんにちは。」

「……は……。」

「は?だと? 美咲ぃ~お前なぁ。」

「お兄ちゃん! なんで先輩がここに?」

「それは、あいつに聞けよ。」

「へ? なんで?」

「美咲ちゃん、ゆっくり話しながら歩こうか?」

「あ…………はい!」

「美咲、挨拶は?」

「挨拶?」


「そうだよ。こんにちは、は?」

「あ………済みません。………こんにちは。」

「こんにちは。」

「じゃあ、上まで歩こう。」

「上にお店があるから、そこでお昼にしましょう。」

「はい。」

「予約してるから。」

「おう、ありがと。翼。」

「つばさ?」

「俺の名前、知らなかった?」

「いえ……そうじゃなくて……お兄ちゃんが先輩のこと呼び捨てして……。」

「そうだよ。俺は翼と呼んでて、翼は俺のことを忠頼って呼んでるんだ。」

「………?………あの……?」

「美咲、俺達、大学からの付き合いだ。」

「えっ!」

「そうだよ、俺と忠頼は友達。

 だから、忠頼の結婚式で会ってるんだよ。 美咲ちゃんと俺……。」

「えっ? そうなんですか?」

「覚えてないんだよなぁ……俺は覚えてるのに……。

 受付してたんだ俺。

 その時、美咲ちゃんが差し入れしてくれたんだ。

 覚えてる?

 飲み物を……差し入れしてくれたこと。」

「あ……私、お姉ちゃんの結婚式でも差し入れしたんで……。

 お兄ちゃんの時も……しました。」

「俺は覚えてたのに……美咲ちゃん、会社で初めて会った時、覚えてなかったんだ

 よな。 ショックだったよ。」

「済みません。ほんとに済みません。」

「いいよ。今日、会えたから……。」


気が付くと兄夫婦は随分前を歩いている。

その後を美咲は想いを寄せている先輩と歩いている。


「美咲ちゃん、付き合ってる人居る?」

「付き合ってる?」

「恋人、居る?」

「こい………そんな人居ません。私なんかに居る訳ないじゃないですか。」

「居ないんだ。」

「はい、残念ながら……。」

「美咲ちゃん、さっき私なんか、って言ったよね。」

「はい。」

「私なんか、じゃないよ。

 美咲ちゃんは優しいし可愛いよ。」

「………あ……ありがとうございます。」

「美咲ちゃん。」

「はい。」

「俺は美咲ちゃんが好きだよ。」

「す!……………え?」

「美咲ちゃんは俺のこと、どう思ってる?」

「………………あ…………え……っと…………。」

「俺は美咲ちゃんと付き合いたいと思ってる。

 彼氏が居ないなら立候補していいかな?」

「り!………りっこうほ?」

「そ、立候補するよ。美咲ちゃんの恋人になる為の立候補。」

「え?………こい………え?」

「結婚も視野に入れてる。」

「け!……………え?」

「ごめん。付き合っても居ないのに結婚とか早過ぎてビックリだよな。

 でも、そのくらい美咲ちゃんのこと大事なんだ。

 それは、分かって!」

「………………は………い。」

「無理強いしたかな……はい、っていう返事。」

「そ……んなこと、ありません。」

「そっかぁ……良かった。

 ……美咲ちゃんは気になるかな?

 俺が美咲ちゃんより3センチも背が低いこと。」

「そんな……そんなこと……何とも思いません。」

「本当に?」

「はい。」

「そっか……良かった。」

「私の背が高いこと……先輩は気にならないんですか?」

「ならないよ。気になってたら好きになってないからね。」

「………すっ!……って………。」

「ははは………好きへの反応が……。」

「済みません。」

「可愛いなぁ……。」

「か…………って………。」

「可愛いへの反応も可愛い。」

「……………………。」

「真っ赤だよ。」

「先輩、揶揄わないで下さい。」

「揶揄ってないよ! 本気で申し込んでる。

 だから、返事を欲しい。

 今直ぐでなくていい。

 ゆっくり考えてからでいいけど、良い返事を待ってる。」

「……………………。」

「半年ほど待ったんだ。」

「待った?」

「実はね。俺、忠頼に聞いたんだ。

 『美咲ちゃんに恋人が居るかどうか?』って……。

 それと……『付き合いたい。』って思ってること話した。

 忠頼は言ったんだ。」

「お兄ちゃん……が、なんて?」

「あいつ『美咲へのアプローチは19歳になってから。』って。

 『それを守らないなら絶対に交際反対! 許さない!』って、ね。

 凄いシスコンだと思ったけど、守りたいって気持ちは理解出来た。

 美咲ちゃんのお姉さんからも電話を貰って……。」

「えっ? お姉ちゃんが?」

「『来年になっても気持ちが変わらなかった時に告って下さい。』って……

 ……お姉さんと忠頼と同じ台詞だったなぁ。」

「お兄ちゃん……お姉ちゃん……。」

「俺は……俺の気持ちは変わらなかった。

 だから、忠頼に頼んで会わせて貰ったんだ。

 美咲ちゃん、3月で19歳になっただろう?」

「は……はい。」

「だから、今日、会えた。」


美咲は何が起こっているのか分からないまま翼の隣を歩いている。

桜が綺麗な道を二人並んで歩いている。

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