入部
大原部長となかなか接触できず業を煮やした私は次の日の昼休み、三年の教室へおしかけて、やっと彼女をつかまえた。
自席に着席していた彼女の目の前に記入済の入部届を差し出すと、彼女は用紙と私を交互に見て、怪訝な顔をした。
「散策部に入部希望? 新入生かい?」
「はい。一年の織原誠一郎です」
「よくこんなところ……三年の教室までおしかけて来る度胸があったわね」
小柄な生徒会長は苦笑して辺りを気にする。
言われてみると、なんかところどころでこちらを気にしてヒソヒソ話をしている。
「あはは……」
しかしここはオヤジの図太さを発揮。
「なかなかお会いできなかったので、失礼を承知で思い切って教室までお訪ねしました」
そう言うと大原詩子はフッと笑顔になって、「それはすまなかった」と目を合わせた。「けどどうしてウチの部なんかに?」
「それは……入部テストか何かですか?」
「いや、単に聞きたいだけだよ」
「先日の説明会で先輩のお話しを聞いて活動内容にひじょうに興味をそそられまして」
「そう……」
感じたままをストレートに言ったつもりだが、もう少し押しのあるコメントが良かったろうか。
「ダメですかね?」
「いや……意外だっただけ。説明会をしても入部希望者なんて来ないと思っていたから」
「しかし、部活紹介では新入部員募集中と……」
「いちおう規則だからね。立場上やらないわけにはいかなかったからやけくそでやったんだが……まさか本当に来るとはね」
「部活紹介でのお話しによれば、とても面白そうでしたよ? ぜひ入部させてください」
「いいけど……うちはそんなに頻繁に活動しないぞ?」
「承知しています」
彼女は生徒会長職も兼ねていて忙しそうだから、いたしかたあるまい。
私としてもユルく活動してくれるなら、まあ助かるのである。
「じゃあ……すまないが今日は生徒会の仕事でちょっとバタバタだから……来週の月……いや火曜日の放課後、部室まで来てくれ」
「わかりました。ご快諾いただきありがとうございました。お時間を取らせてしまい、すみませんでした」
丁寧に挨拶すると、私は周囲の視線をくぐり避けながらなんとか三年の教室を脱出したのだった。




