変な 先輩(?)
翌日の放課後、私は書き込み済みの入部届用紙を携えて、部長大原詩子が締めで言っていた散策部、西校舎三階北隅の資材室をひとりで訪れた。
人けのない校舎の片隅。
廊下にまで散乱している古い机の山。
その奥の、今は使われていない雰囲気漂う扉。
異様といえば異様である。
扉を開ける。鍵はかかっていなかった。
「お邪魔します……」
「誰だ?」
部屋の奥に座って本を読んでいた人影がいう。
男子生徒だった。
どことなく幼く見える彼は、自分と同じ一年だろうか。
「あのー、ここは散策部ですよね」
「そうだけど」
「よかった。入部希望のものなんですが」
「は? 奇特なやつだな」
「あの、散策部の部員さんですよね?」
「……違うけど」
違うのか。
童顔の生徒は藪睨みする。
「あの、ひょっとして先輩、でしょうか?」
「名乗りもしないヤツが自分より年下なのかどうか判るわけないだろ」
「し、失礼しました! 自分は新入生です。一年の織原誠一郎と申します」
「そうか」
それしか言わないので、結局先輩かどうか判らない。
「あのう……部員のどなたか――あ、大原部長はいらっしゃいませんか?」
「見てわかんだろ。ここには俺だけだ」
「ですよね……」
どんなに見回しても教室には彼しかいない。
部屋には資材が押し込められていて、空いたスペースはごく限られている。人が隠れられるような場所もない。
「お出かけですかね? あ、ひょっとしてお散歩中?」
「生徒会に決まってんだろ」
「そうか、そうですね」
決まっているのか。
「だったら生徒会室に行ってみます。お邪魔しました」
「待てよ」
「何か?」
「お前も詩子が目当てなのか?」
「何です? どういうことです?」
「フン まあいい、行きなよ」
「はい、失礼します」
生徒会室に行ってみるが、鍵が閉まっていて誰もいない。
「仕方ない。今日は諦めて帰ろう」
と、その足で下校したのだった。




