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〜スカーレットside 2〜


私の計画通りにうまくいっていると思ったのに、次第にロゼリアの悪い噂が聞こえなくなってきた。アンジェリーナとルドルフ様は仲良くしているように見えるから、葉の効果が薄れているとは考えにくいけど、アンジェリーナの周囲の人間が離れているようにも見える。


確認しなくては。ハインツ家がバルト家と関わりがあることは、周知されているが、学園では様々な目があるから、アンジェリーナには近づかないようにしていたけど仕方ない。アンジェリーナを呼び止め、どうでもいい話をして、いざ切り出す。香袋はどうしたか、と。


持っていると言って、ポケットから取り出した香袋は、まさしく私がプレゼントしたものだ。アンジェリーナの周りの態度が変わったから持っていないと思ったが、違ったようだ。ああ、目にしたら欲しくなってきた。アンジェリーナと長く一緒にいるのは得策ではない。


はあ、はあ。危なかった。あの葉を奪いたくなってしまった。長年、あの葉に触れているせいか、私にとってなくてはならないものになった。でも学園で使用するなんてもっての外だし、アンジェリーナの物は、私が使用している量よりずっと多いため、私の身が危険だ。アンジェリーナはどうなるって? 例え、彼女があの葉に依存して廃人になろうが私には関係ないことだ。


私は慎重な人間なのに、何故あの時、アンジェリーナの香袋を念入りに確認しなかったのだろう。あの時、きちんと現状を見極めて対策していれば、こんなことにはならなかったのに。でも、あの時の私に現状を把握することはできたのだろうか。私の身体は、あの葉に、すっかり蝕まれていた。


ある日、ルドルフ様が、いつもお見かけする学園の制服姿ではなく、騎士服姿で我が家にやって来た。美しすぎて、一瞬私を迎えに来たのかと思った。迎えに来たことに間違いはなかったが、婚約者としてではなく、断罪するためだった。


そう、葉に蝕まれた私は、少し前から学園に通えなくなった。意味もなくイライラし、クラスメートと揉め事を起こしてしまった。品行方正の代表みたいな、この私がだ。取り繕うこともできず、次第にあの葉を手放すことができなくなり、学園にも携帯するようになった。授業中ですら喉から手が出るほど欲しい。


そんな私の異変にお父様は気付いた頃には、手遅れだった。依存症となった私をどうにかしようと部屋に閉じ込めたけど、幻聴幻覚に苛まれ、暴れていた。自分を傷つけることもあるため、ベッドに縛り付けられた。せっかくルドルフ様が迎えに来てくれたのに、私は身支度を整えることができなかった。


私を見たルドルフ様は、私には何も言わなかった。お父様に罪状を言い上げ、今後の私の処遇について話された。私の姿を見るまでは、絞首刑レベルの罰が下ったであろう。動機は不純だったとは言え、たくさんの人間に薬を使用し、王族のみならず、隣国の王族にも影響があった。しかも依存性が高く、私以外にも依存症となった者もいるだろう。


今、私は北の果ての修道院に幽閉されている。ハインツ家自体は関わっておらず、私の単独行動であることが証明されたが、領地の一部を王家へ返還し、降爵を避けるためにお父様は引退、お兄様に爵位を譲られた。私が犯した罪に比べると、随分と恩情をかけたものだ。


あの人形、ロゼリア様からは茶葉と手紙が届く。この茶葉には、あの葉に対する解毒作用があるようだ。こんなものがあったなんて、道理で上手く事が運ばなかったわけだ。この茶葉を使ったお茶はすっきりとした味わいで、頭まですっきりしてくる。美味しい。


この茶葉があって本当に良かった。これがなければ私は命を落としていただろう。ううん、私が死ぬのは仕方ないし、それだけの事をした。でも、巻き込まれて依存症となってしまった方がいたし、その方達にも解毒作用が働いて、後遺症なく依存から抜け出したと聞いた。


北の地は寒い。侯爵家にいた時は、寒さで凍えることも、手指が赤切れることもなかった。でも、心はずっと安定していると言える。こんなに穏やかなのは、いつ以来だろう? ルドルフ様と出会ってから、いつも何か頑張っていたし、いつも自分を偽っていた気がする。




もうすぐ冬が明けて春が来る。




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