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ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回もsideストーリーですが2話アップしてます。
今回でsideストーリーは終了し本編に戻ります!
〜スカーレットside 1〜
なんて美しい方……ルドルフ様と初めてお会いした時の、私の感想だ。一目惚れだった。この方と結婚できたらどんなにいいだろうと神に願った。
物心ついた頃から、ルドルフ様が参加するお茶会やパーティーには必ず参加してきた。これが婚約者選定を兼ねているとお父様お母様から言い聞かされていたため、粗相がないように立ち回り、さりげなくルドルフ様に接触し、子供ながらに上品に美しく見えるよう努めた。
絶対に彼と結婚したくて、数人いた婚約者候補を様々な方法で蹴落としてきた。時には侯爵家の力も使った。その努力のおかげで、最終的にはフリューゲル公爵令嬢のロゼリア様と私の二人が残った。
さすがに公爵家にはハインツの力など及ばない。目の上のたんこぶとはこのことを言うのね。しかも、私はルドルフ様に愛されるよう努めているのに、あの女、ただの人形じゃない。綺麗だけど愛されるのは私。人形はお呼びじゃないわ。
それなのに努力ではどうにもできないことがあると、現実を突き付けられた。レオンハルト殿下は何故か婚約者を作らず、それどころか独身宣言をしたせいで、ルドルフ様が王太子になる可能性が出てきた。王太子になることは喜ばしいし、いずれ私が王太子妃ないし王妃になると言うことね。と喜んだのも束の間。
王家はより強固な後ろ盾を希望し、人形が婚約者に内定した。それを聞いた時、私は怒り、落胆した。さらに追い打ちをかけるように、お兄様のせいでルドルフ様と結ばれることは絶望的になった。私を無碍にするなんて、許されない。信じられないし信じたくない。私は怒り暴れ狂った。
暴れ狂う私に手を焼いたお父様は私にある物を与えた。その葉の匂いは癖が強いが、嗅いでいると不思議と心が落ち着く。何も考えなくてよくなった。与えられた葉はごく少量だったが、効果はテキメンだった。お父様にもっと欲しいと強請っても、決してそれ以上私に与えることはなかった。ドレスや宝石はいくらでも与えてくれるのに。
私はこの葉について調べた。この葉を香袋に入れて持っていると、周りの人間が優しくなる。お父様が教えてくれなくても、後継者である一番上のお兄様はどうかしら。私の狙い通り、お兄様は色々と教えてくれたし、こっそりと葉を手配してくれた。
私はお父様にバレないように葉の量を調節して、周りの人間にどういった影響が出るか試した。ある一定の量を超えると過度に好意を抱かれることがわかった。しかも依存性がある。これをルドルフ様に試したらどうだろう。でも相手は王族だ、バレたら一貫の終わり。そこまで私は愚かではないし、こんなものでルドルフ様の気持ちを得ても虚しいだけよ。いい加減諦めなさいと自分に言い聞かせる。
そう思っていたのに……。
ある日、お父様と王宮を訪ねた時、少し時間が空いたので、庭園を散策していた。すると、ルドルフ様のお姿を見かけて、お話しできるかも! と、嬉しくなって追いかけた。
庭園の奥にあるガセボに到着したと思えば、ルドルフ様以外の声が聞こえた。そう、あの人形だ。隣に座って笑い合っている。楽しそうに談笑する姿から目を離せないでいたら、二人は顔を近づけ、あろうことかキスをした。婚姻前なのにふしだらなこと! いえ、婚約者同士だから許されるの? もしかして、私がそこにいる未来があったのではないか。押し込めた筈の思いが再燃した。
怒りで身体が震える。それと同時にルドルフ様が欲しくてたまらなくなった。そんな時、バルト子爵に平民として育った庶子がいることがわかった。お父様が教会で医療の施しをした際にわかったらしい。これは……利用できるかもしれない。
名はアンジェリーナ、この女をルドルフ様に近づけ、葉の効果を試してみることとした。平民だった娘に貴族のルールを叩き込む。賢い娘みたいで、教えたことはどんどん吸収する。見目も悪くないし、これは期待できるかもしれない。もし、ルドルフ様がこの娘に好意を抱いたとしても、葉によるものだろう。つまり、この娘で試す量より多い葉を私が使えば、ルドルフ様の心は私に移るはずだ。
万が一失敗しても罰されるのは、アンジェリーナだ。アンジェリーナは私がプレゼントした香袋にそんな効果があるとは思わないだろうし、私が知らないと言えばそれまでだ。香袋を作る際に使った布は、高価なものではなく一般的なもので、巾着を結ぶリボンはロゼリアを彷彿させる色合いにした。
例え、香袋に原因があるとわかっても、葉に関しては、ハインツよりフリューゲル家の領域だし、私に繋がったとしても決定打になることはない。実際、この葉はフリューゲル家でも手に入れることができる。
試してみたところ、予想した通り効果が出た。アンジェリーナは瞬く間に人気者となり、ルドルフ様とも懇意にしているようだ。その点は腹立たしいが、私のあるべき未来のためだから、我慢ね。そこに私は噂を振り撒くだけ。ロゼリア・フリューゲルがアンジェリーナ・バルトに嫉妬して嫌がらせをしている……と。決して私が言い出したとはわからないよう、周りを利用しながら、どんどん噂を広げる。
違うクラスでも見てわかるほど、ロゼリアは孤立していく。ルドルフ様と一緒にいるところなど、ほぼ見ない。ざまあみろ。本当は、噂通り嫉妬に駆られてアンジェリーナに嫌がらせをして欲しかったのだけど、さすがにそこまではうまくいかないか。まあいいわ。




