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お読みいただき、ありがとうございます。
私=わたくし と読んでいただければと思います。
全17話で8月中にはアップ予定です。
緩々の設定なので、緩く読んでいただければと思います。
ごきげんよう。皆様。
私はロゼリア・フリューゲル。公爵家に生まれつき、第二王子であるルドルフ様の婚約者。どこの誰が見ても順風満帆な人生でしょう。
釣り目がちの血の様に赤い瞳に深い青の髪、他のご令嬢に比べたら身長は高く、スレンダーだけど、そこそこ女性らしい身体つきで、クールビューティーと言ってもいいでしょう! このロゼリア・フリューゲル! 別名、悪役令嬢と申します!
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コホン。私が自分で言っているわけではないのよ? でもどうやら私、日本? と言うところの、ゲーム? と言う世界の、悪役令嬢? と言う役割だそうなの。
誰から聞いたかって? 侍女のアンナよ。アンナは私の侍女で、忙しい両親に代わり、ワガママ放題だった私に物事の善悪を教えてくれたわ。そして、物心ついた時から、耳にタコができるほど聞かされたわ。私は悪役令嬢だから、ヒロインに、第二王子に気をつけろと。
でもね、私はこの国の公爵令嬢なの。ヒロインとやらはまだしも、同世代で生まれた第二王子であるルドルフ様は、絶対に避けられないお相手なの。
凄いのよね! 王妃様のご懐妊に合わせて、臣下達は地位を盤石とするため、……頑張るわけよ。男児なら側近、女児なら正妃! 側妃に! ってね。
第一王子であるレオンハルト王太子殿下がお生まれになったときは、お兄様がお生まれになったわ。凄いタイミングだし、本当に奇跡ね。当然のように殿下のお側にいるわ。
話は逸れたけど、当家は鉱物、穀物、薬草、茶葉など手広く事業を行っており、潤沢な財産があるし、お父様はこの国の宰相を務めていて、公爵と家格も高い。ここ何世代は、しばらく婚姻関係になかったこともあり、ルドルフ様と私は、必然的に婚約者、もしくは婚約者候補となるわけなの。皆様おわかりになって?
そうして、私が婚約者に決定した時のアンナの嘆きようは、忘れもしないわ。ゲームの強制力なのかー!! と取り乱していたけど、私は順当のことだと思うわ。
アンナは厳しいけど、愛に溢れていたわ。アンナの教育方針は、清く正しく美しく。謙虚であれ、親切であれ、気高くあれ、可愛くあれ、素直であれ……etc。とにかく、王子妃教育と並行して、徹底的に教え込まれたわ。
そして、私に出来るだけのことを教え込んだら、時が来たと言っていなくなってしまったの。アンナはプレイヤー? で、今はバグ? 憑依? だから、ずっと一緒にいることはできないと言っていたわね。寂しいわ。
そうして、時が経ち、学園に入学して半年が経った頃、アンナが言っていた通り、ヒロインと思しき子が中途入学してきたわ。空色の髪に金の大きな瞳、私と違って小柄で、いつも笑顔の可憐で溌剌としたお可愛らしいご令嬢ですこと。
お名前は、アンジェリーナ・バルトさん。バルト子爵様の庶子だそうで、つい最近まで平民として暮らしていたのだけれど、子爵様に引き取られたみたい。この国の貴族子女は、学園に通うことが義務なので、今回、私たちより少し遅れて入学されたみたいなの。
そういうストーリーだ! とアンナは言っていたけれど、この学園は、入試の成績でクラスが決まりますの。Aから順に成績優秀者が集まっていて、ヒロインさんもAクラスに入ったということは、彼女自身、とても有能、いえ、天才ではないかしら?
だって、残念なことだけど、平民時代には学べる場所が少なかったと思うわ。つまり、子爵家に引き取られてから、お勉強をされたと言うことでしょ? 短い期間でこの成績はご立派なものよ。
ちなみにルドルフ様、私を含めて、取り巻き集団たちも皆揃ってAクラスですわ。王族はもちろんのこと、付き従う私たちも優秀でなくてはいけませんの。幼い頃から、皆、切磋琢磨してきましたわ。取り巻きの方達については、機会があればご説明しますわね。
ヒロインさんは、最初こそ、出自が原因で遠巻きにされていたけれど、アンナが言い続けた謙虚であれ、親切であれ、気高くあれ、可愛くあれ、素直であれ……etcを地でいく方でしたわ。あっという間にクラスに溶け込みましたわ。
私の婚約者のルドルフ様も、慈愛を含んだ眼差しで、ヒロインさんを見ていることに気がついたのはいつ頃だったかしら? ルドルフ様は輝く金の髪に空色の瞳をお持ちなので、空色に金の瞳を持つヒロインさんと並ぶと、お互いの色を身にまとっているようで、とても絵になる……。お二人を見ていると胸が苦しい。
それに、ルドルフ様と取り巻き集団の中に、ヒロインさんの姿を、よくお見かけするようになりましたの。ええ、そうよ、私がいたポジションよ。
当然、そんな彼女は良くも悪くも目立ってしまって、私の周りまで少し賑やかになってしまったわ。婚約者として、ルドルフ様に近づく不届きな女を野放しにしていいのか? てところかしらね。
もちろん嫌よ! でも、良いとか悪いとかの問題ではないわ。ルドルフ様に近づく不届きな女って彼女に限らないのよ。私という婚約者がいるのに、ルドルフ様に近づく不届き者は、一人や二人じゃ済まないわね。現に彼女を隠れ蓑にして、近づいている、そこのあなたも不届きな女ですことよ。
それにね、アンナから聞いていたほど、彼女って悪い方、酷い方ではないの。天真爛漫な方で、少しハラハラするのだけど、異性との距離は保っているし、下品には見えないし、ご忠告して差し上げるほどでもないわ。どちらかと言うと、ヒロインさんより、婚約者を蔑ろにするルドルフ様たちの行動に問題ありよ。
ただね、アンナに言い聞かされ、刷り込まれ続けられた私は、ヒロインさんと関わりたくないの。悪役? と呼ばれたくないし。だから王子妃教育の忙しさにかまけて、ヒロインさんだけならず、必然的にルドルフ様たちまでも避けたわ。
変わりゆくルドルフ様を、見ていられなかったと言うのもあるわ。今までのルドルフ様は、不届き女に愛想笑いはしても、穏やかに見つめることなどしなかったわ!
そういったトラブルにならないよう教育を受けているし、もちろん迂闊に手も出さない。だから今回は、いつもと少し違う。ルドルフ様の心が彼女に向いているのかしら? ……とても嫌ね。