57-それ言う人だいたいおばさん
「じゃあ、俺帰るから。ファイト!」
「うん、ありがとう」
修練場を出ると周りには白の道。白の建物。いろんな草花が生えた庭。
……やべ、帰り道がわからない。
「ちょまって」
「あれ? 何か忘れ物?」
急いで戻るとアイラ達が反対側の扉からでようとしていたので急いで声をかける。
「あのー、帰り道がわかりません」
馬車でアイラに送ってもらいました。
外務館に着くと侍女の人の方へ走ってくる人がいる。
「アナベル様」
……侍女の人はアナベルっていう名前なのか。てか様付け? 勇者の侍従はやっぱ偉い人なんだ。敬語使ってたっけ?
自分の今までの言動を思い出そうとするが、話す内容に興味が移り思い出すことを諦めた。
「どうかされましたか?」
「ドロシア様がアルカイドの者たちをもう帰してしまったそうで。勇者様に使者の方を送ってやれと」
「聖女様の許可は?」
「取れています」
……何で帰るの? 一応アルカイドの代表俺だよね? 扱い、扱いがひどいよ。
「わかりました。馬車は?」
「用意できております」
「キリュウ様そういうことですのでよろしいでしょうか」
「はい。ありがとうございます」
「では向かいましょう」
たった今降りた馬車にまた乗りなおした。
「あなた嫌われているの?」
馬車に乗るとアイラがまっさきに聞いてきた。
「アビゲイルもあなたが怖いとか言ってわね。一緒に来た仲間にも嫌われるなんてあなたも大変ね」
「ち、ちがう」
……確かに、女性陣たちは俺のこと嫌ってるかもしれないが、アーロとライアンとフィンは違うだろ。違うよね?
「アイラ様、さっきのはキリュウ様が嫌われているじゃなくアイラ様のためです」
「?」
「さっきのはアイラ様が送り届けることを口実に街へ遊びに行く許可が出たということです」
「偉い人は遊びに行くにも理由が必要なんだ。大変だね」
「別に出なくてもいいんだけど。昨日のあれで街はたくさんだわ」
「あ、あのね。今町中に『私は○○』てのが」
「Uhhhhhhhh. I can't hear. I can't hear」
「まっ、昨日の旗とかは片付けられてるし。アイラのことも誰もわからないから大丈夫だと思うけど」
「どうゆうこと?」
「全身鎧状態で目のあたりしか見れなかったから多分誰も気づかない。俺も自己紹介されるまでわからなかった」
ついた場所は門ではなく、白の建物だった。
「アイラ様は着替えなければなりませんので少しの間お待ちください」
「あっはい」
「1人だからって変なことを言わないように」
「もちろんです」
2人はいってしまった。
……はあ。親指痛い。
2人にはばれないようにしていたが親指がいまだに痛かった。指を見ると少し火傷したのか皮がはがれている。
……全然突き指じゃねえ。誰だよ突き指とか言ったの。
氷を作り出し指に当てて冷やす。特に気にしなくていいようすぐに冷やさず、何もなかったふりをしていたが、それがよくなかっただろう。
「聖水ってどんな傷でも治すって言うし、この火傷の跡を癒すついでに治るだろ」
それ以降傷のことを考えるのをやめた。
……ついでに、氷を作る練習でもするか。
御者をしているときもやっていた氷だけを作る練習をする。
……がんばって、氷壁とか氷系もさっと出せるようにしないと。
「ただいま。It's cold!」
「あ、ごめん」
すぐに馬車の中の温度を元に戻す。氷も一瞬で水蒸気に変える。もちろん馬車は一切濡れていない。アイラは黒い仕事着みたいな恰好から緑のワンピースに着替えていた。
……でかっ!?
ワンピースは胸の下を紐で結ぶタイプだった。しかも、紐の色が紫でワンピースと違う色のおかげで胸が強調されていた。だから、そこへ自然と目が行ってしまった。
「なんでこんな寒かったわけ? あなたの魔法火じゃ」
「あっ、俺の魔法は熱でね、温度を上げて火も使えれば、下げて氷も出せるの」
アイラに質問されて我に返る。運よく視線には気づかなかったようだ。もしバレてたらまた『hentai』とか言われるところだったろう。
「なんで一人で2種類も持ってるの?」
「アイラだって2種類みたいなものじゃん」
「磁気なんて何に使うかわからないわよ。武器が手から離れても戻ってくるとか? 私にそこまで届く魔法ができるかしら」
「うーん。どうだろう。自分をN極として武器をS極にしておくだけなんじゃない? しらんけど」
「まあ、いいわ。今は魔法より剣のことだし」
「一応、さっきやったレールガン、あれも磁気も使ってるんだけど」
「あんな危なそうなの使えるわけないでしょ。自爆技よ」
「まあ、そうだね。あれ専用の補助になるのを作らないと。弾だって用意しないとだめだし」
2人で魔法談義をしていると馬車が止まった。
「あれ? もう着いたの?」
「いえ、乗り換えです。この馬車は宮内用ですので」
門で馬車を乗り換える。
……金持ちは外と中で馬車を変えるのか。靴とスリッパみたいな感じなのかな? 金持ちの思考わからねえ。
朝と違って昼は馬車の数が多い。渋滞するほどでもないからスピードが変わるほどでもないが。
グウウウ
馬車の中でお腹が鳴る音が鳴った。もう昼ご飯の時間なのだろう。目の前でアイラが赤面でうつむいている。
「お昼の時間ですね。どこかのレストランで食べましょうか。キリュウ様もご一緒にどうですか?」
「いいんですか?」
「ええ。なんならこの後の街巡りもどうでしょう。キリュウ様もスピカは初めてでしょう? あなたといるとアイラ様も年相応に楽しそうにされるのでぜひ一緒にきてほしいです」
「No! No.No!」
「ですが私以外の前でそのような言動をしないじゃないですか」
「これは、こいつに敬語使うのが馬鹿らしくなっただけよ」
……ふむ、俺が帰ったところでアビゲイルは俺を怖がってるんだからいないほうがいいだろう。特に急いで帰ることもないしいっか。一緒にご飯、街巡り。これはデートというものではないだろうか。デート。しかも相手は性格はあれだが見てくれだけはかわいい美少女である。あれ? アイラって18超えてる? 超えてなかったらさすがに法的に。ここには日本の法律が適用されないが俺の心の平穏的に大丈夫かな。
「そいえば、アイラって何歳?」
「女性に年齢を聞くのは失礼と習わなかったの?」
「おーけー。それ言う人だいたいおばさんだから問題ないね」
「ちょっと、誰がおばさんよ。19よ。19歳」
「あ、同い年なんだ」
「Really?」
「うん。そんなおっさんに見える?」
「15歳くらいだと思っていたわ」
「はあ? どうやったら15歳に見えるわけ。」
「変なこと言ったり。人の悪口を場を考えないで言うところ」
「……」
……何も言い返せねえ。全部事実じゃん。
「街が綺麗だね」
「何話変えてるのよ」
「お互い謝ったんだからこの話は止めません?」
着いたレストランはとても高級そうなレストランであった。理由はまず、店自体が豪邸のようであった。アルカイドでもアルデラミンでもこのような店を見たことがない。白い建物で貴族街にあったような建物だ。それだけじゃなく、広い。駐車場なのか、馬車が何台も止まっている。
店に入ると黒い執事服の男性が挨拶をしてきた。
「いらっしゃいませ。ご予約のお名前をお聞かせください」
「これを」
「!? 席へ案内します」
……ウェイターさんびっくりしてたけど、権力でも使ったの?
ウェイターが2階の個室へと案内してくれる。案内された部屋は奥が開けていて下を一望できた。ここはコンサートホールなのか下では舞台の上で音楽が奏でられている。それだけじゃなく、壁には高そうな絵が貼られている。
この建物2階建てのようで1階は舞台と大広間にたくさんの席。2階は舞台が一望できる個室みたいだ。
……俺、めっちゃ場違い。
一応、国の中枢へと行くのだからお金もあるのでちゃんとした服をアルデミランで買ってきてもらった。それでも急ごしらえの服。下の階には俺よりも高そうな服の人たちがたくさんいる。
「では、ごゆっくり」
席に着くとウェイターが出ていった。
「高そうね。調度品はいつものみたいだけど、こんなパーティー会場みたいなのだと緊張するわ」
……宮で暮らしている勇者様でもこの感想である。俺は本当にいてもいいのだろうか。
「本当に俺、着てよかったんですか? こんな格好で大丈夫でしょうか?」
「私も一番楽そうな服で来たけどよかったの?」
「大丈夫です。聖女様も適当な恰好で来ますし、そもそもここへ高そうな衣装で来るのは何かの祝い事で来てるのでしょう」
「そういえば、こんなところいつ予約したの?」
「いえ、しておりません。聖女の紋章を見せれば簡単に通されます」
「それ大丈夫? 職権乱用じゃ」
「許可は取ってあります」
侍女さんが笑顔でそう返答する。
……ほんとにいいのかあ? 他人の紋章で高級レストランフリーパスとか大丈夫?
「失礼します。こちら前菜の月光トマトのマリネ、ヴィザール特製トマトソース添えです」
出てきたのは黄色いトマトと葉野菜のサラダだった。サラダには赤い液体がかけてある。これがトマトソースなのだろう。
「「いただきます」」
「味はいつもより甘めね」
「なんでも庶民は甘いければ甘いほど高級なそうでこの店は甘味に力を入れているようです」
2人がこのサラダの味の感想を言っているとアイラが俺の方を見た。
「食べないの?」
「いや、食べるよ。食べる食べる」
緊張で手が震えてうまくトマトを掬えない。なんとか1つとれて口へ運ぶ。
……味がわからん。
緊張で味覚が死んでしまったのだろうか。俺には甘いだの、酸っぱいだのと感じる舌が何も感じず、ただ、トマトを嚙んでいるだけだった。
「どうなの? 他の国と比べてスピカの料理は?」
「はい、大変おいしいです」
……味わかんねえー。多分、おいしい。絶対おいしいはず。
味がわからないながらなんとか取り繕うとがんばった。
「失礼します。スープのコーンポタージュになります」
次に運ばれてきたのはコーンポタージュ。
……温かい。温かさは感じるのに味は感じてくれない。不思議。
「甘い」
そう言い、アイラはスープから手を離した。アイラはスープに文句を言っているがその胆力はどこから出るのだろうか。こっちは味がわからないというのに、文句まで出てくるとは。さっき一緒になって緊張していた人はどこに行ったのか不思議になる。
ただ、文句を言いたいのはわかる。アイラとは別の意味でだが。高級感で料理も音楽も外観も何も楽しめない。
……庶民にはここは敷居が高すぎ! お昼ご飯がつらい時間だと思わなかったよ。
前回の次回予告ウソだった。
予想ついてると思うけど2章はBL要素より普通の恋愛のほうが多い。BL待っている方すいません。作者『だかいち』しかBL見てないんです。だからレパートリーが。(言い訳
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