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異世界転生してもハーレムは作れません  作者: ミカン
第二章 偽モノ
59/84

53-どうして翻訳されなかったんだろ?

「*********」


 赤髪の青年が訳の分からない言葉を話す。


「あっ、はい。ありがとうございます」


 騎士団長が赤髪の青年に対してそう言う。


 ……騎士団長には聞こえているの?


 そのまま青年と騎士団長が話し始めた。その最中アーマークロウが起きだしたが青年の連れた魔物が踏みつぶしてしまった。


「ん」


 服を引っ張られそちらを向くとさっき飛ばされてきた少女が私の服をつかんでいた。


「**************」


 青年がまたわからない言葉を話すが気にせず小声で私も話しかける。


「どうしたんですか?」


 少女は何も言わなかったがまるで青年を怖がるように私の後ろに隠れた。他の騎士も怖がっていると感じたのだろう。剣を抜き構えた。


「怖がっているようですが。……魔物を連れていますし、もしや魔族ですか」

「***。********************************」


 青年がしゃべり続け服の内側をまさぐると一人の騎士が青年に斬りかかった。だが、青年はかわし魔物に乗り、空へ登っていった。


『わ*****し***て』


 青年が服の内側から何かを出すが小さくてよく見えない。


「アルカイドの使者が魔物を連れているなんて聞いたことないですな」

「偽物だ」

「女を攫う魔族なんだろ」

「エアカッター」


 騎士たちが魔法で攻撃を開始すると青年はそそくさと飛んで行ってしまった。


「はぁ、逃げてくれて助かったな」

「騎士団長追いましょう。あいつはびびってましたし俺の剣にも反応できてなかった」

「ばか、あれはバケモノだ。あの魔物も強かったが、それ以上に魔族が厄介だ。それに相手は空に逃げた。追いつくわけがない」


 騎士の何人かは追う気満々のようだが、騎士団長は反対した。


「それに、こちらもジャイアントクロウで消耗が激しい。勇者様もいるし、そこの少女もいる。引き上げるぞ」


 騎士団長は帰ることを決め、魔物の死骸を回収していく。馬車へと戻るため帰路についた。


「もう大丈夫ですからね」


 私は少女を安心させるため笑顔でそう言ったが少女は下を向いただけだった。



 馬車へと向かうときは森の中で魔物や害獣と遭遇することはなかった。


「アイラ様ご無事でよかったです」


 馬車へ着くとアナベルが一目散に駆け付け私の身を案じてくれた。


「あら、そちらの子は」


 私の陰に隠れている少女に気づいたのかそう聞いてくる。


「森でジャイアントクロウに襲われていたの」

「そうですか」

「騎士団長吊るすのこれでいいですかね」


 騎士の声が聞こえてそちらを見ると騎士がアーマークロウを持ち上げていた。


「あぁ、構わないだろう」

「あれは何をしているの?」

「アイラ様の功績を国民に見せつけるため狩った魔物を吊るすのです。それにしてもさすがですね。アーマークロウまで討伐してしまうとは」

「いや、あれは」


 私はアナベルにアーマークロウを倒したのが誰なのか教え、そのあとについても伝えた。


「赤い馬に乗る魔族ですか」

「そう、それで何を言っているのかわからなかったのだけど魔族と人間では言語が違うの?」

「いえ、一緒な言葉ですが、アイラ様は神の加護で私たちの世界の言葉が元の世界の言葉に翻訳されて届くとエリザベス様が言ってたのですが、魔族は対象外なのでしょうか」

「そう、でも魔族だったから聞こえなかったのね」


 ……パワは魔族には耳を貸すなとか思っているのかしら。


「魔族じゃない」


 私の背中から小さくそんな声が聞こえてきた。


「え?」

「キリュウは将軍の部下。魔族じゃない」

「将軍? キリュウ?」

「騎士団長ちょっといいですか」


 少女が話し出すが状況がよくわからなかったのか、アナベルが騎士団長を呼びに行った。

 騎士団長が来ると少女が続きを話す。


「私はポラリスの王族でポラリスから逃げてからはアルカイドの将軍のところで監禁されていたの。この前の戦争でお兄様が勲章をいただいてそれで私を救ってくれたの。キリュウ、赤髪の魔物つれた人も勲章をいただいて将軍の部下になったの。それで将軍の命令でスピカに聖具もらいに行くおつかいにお兄様たちも同行したの。お兄様は傭兵だから戦争に行く前に私を難民としてスピカに送るためで、私はお兄様と一緒に戦いたくて。それで喧嘩して、森の中入って。魔物でも狩ってくれば認めてもらえると思ったんだけど迷って。そしたらジャイアントクロウに襲われて。……ぐすっ。キリュウはただ私を迎えに来ただけだと思う。ぐすっ。でもっ、あの人将軍の部下だから、怖くてっ。ぐす」


 少女はことの経緯を話してくれた。


「ごめんなさい。私がちゃんと、ついていけば」

「アルカイドの使者だというのは本当だったのか」

「確かに、第2次アルカイド侵攻の勲章者にポラリスの元王子と魔物を連れた赤髪とかありましたね」

「騎士団長これ誘拐になりませんよね?」


 途中から話を聞きに来ていた騎士たちも話に加わっていく。少女もひたすら謝っていた。


「ごめんなさい。ごめんなさい」

「アルカイドの使者なら宮に来るだろう。そのとき謝れば、大丈夫なはずだ。……おそらく」

「大丈夫ですよ。馬車の中で休みましょう」


 アナベルにハンカチをもらい、少女の涙をぬぐい、馬車へと乗せる。


「とにかく、今は帰るぞ。さっさとアーマークロウを吊り下げろ‼」



 ……どうして翻訳されなかったんだろ?


 私は馬車の中でそのことだけを考える。馬車の中は今、私とアナベルとアビゲイルの3人がいた。アビゲイルは疲れたのか寝ていて、アナベルはアビゲイルの膝枕になり優しく頭をなでている。アナベルがご機嫌そうに見えるがアナベルは子供が好きなのだろうか。

 アナベルのことより青年のことだ。アビゲイル曰くキリュウという青年らしい。


 ……なんか、あの言葉聞いたことある気がするのよね。


 元の世界、地球で聞いたことがあった気がする。


 ……9か国語も覚えてたのよ。思い出せ、私の頭。


 結果から言って思い出せなかった。キリュウが何を言ったのかあれからだいぶ経っていて思い出せない。だが、もう一回聞いたら思い出せそうだ。

 馬車が止まる。


「勇者様凱旋の準備を」

「はい。わかりました」


 私は兜をかぶり、梯子を登り馬車の上に立つ。


 ……もう一回あれをするのか。


 笑顔で手を振ることや周りからいろんな歓声が飛んでくることを思い出し、疲れる。


「勇者様だー‼」


 街の中から叫ぶ声が聞こえその後大きな歓声が起こった。午前中より人が多い気がする。道の脇で人がぎゅうぎゅうになり、手を振ったり、叫んだりしている人もいる。私は笑顔を作り手を振りだす。午前中はなかったはずだが、街の中はライトアップされていて夜にもかかわらず明るくなっている。それに私の恰好をまねたのか白い服に赤いマントを着てそれを私に見せつけてくる人もいる。マントには『私が勇者』と書いてあった。中にはマントに『私がニセモノ』と書いてある人などの『私が~~』とマントに何かを書くことが流行っていた。


 ……何これ? 恥ずかしすぎる。


 私のマントをまねしたものだろう。こんな恥ずかしい自己主張がなぜ流行るのかわけがわからない。私は恥ずかしくなりながらそれを前にださずひたすら笑顔で手を振った。


 ……え?


 手を振りながらあちらこちらを見ていると昼間あった青年キリュウがいた。彼を見たとき驚いて手が止まってしまったが、すぐに反対側を振り向き手を振る。そのまま貴族街への門をくぐった。

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