術式ノート 『種族の原盤』
-133- 『種族の原盤』備忘録
魔物の交配を極める上で、優秀な魔物を選別する過程は何よりも重要だと感じた。しかし、この「優秀」という言葉はどうもあやふやだ。
そこで、術式によって、魔物本来の潜在能力を明るみにすることができれば、効率よく、有意義な交配が実現できると感じた。
以下に、筆者が編纂した術式『種族の原盤』の解読法を記す。これは一種の備忘録であり、筆者以外の何者も、この魔術に触れることは今後一切ないだろうが。
名前:マルマレ
種族:スライム
両親:父プモン×母プラト
性別:♂
体力:F(4)【F-D】
持久:F(4)【F-D】
筋力:F(1)【F-E】
防御:F(4)【F-D】
魔力:E(10)【F-E】
知能:F(3)【F-E】
俊敏:E(9)【F-C】
天賦:Null
上記は、『種族の原盤』によって明るみとなったマルマレ氏の潜在能力である。
さて、魔物の能力を適切に評価する上で、2種類の評価指標が必要とされてくることがわかった。
1つ目は、種族評価
2つ目は、絶対評価である。
それでは、2つの評価指標を順に説明していこう。
①種族評価
これは、ある特定の種族における、該当個体の評価である。
上記の例で言えば、種族とは、スライム種を指す。
『種族の原盤』では、()内の数値で表される。
種族評価で重要となる事項は、その値が必ず0から50の範囲で評価されることだ。
このルールは、どの魔物であれ、一切の例外が生じないよう編纂した。
おわかりの通り、この種族評価に基づいて、絶対評価が算出される。
②絶対評価
これは、この世に存在するありとあらゆる魔物の中での、該当個体の評価である。
絶対評価がとり得る値は、F、E、D、C、B、B+、A、A+、S、SS、SSSとした。
絶対評価は、種族評価に基づいて算出されることは上記で述べた。
しかし、あらゆる魔物が、種族評価50を得れば、果たして絶対評価SSSを得ることがふさわしいと言えるだろうか。
以下の場合を想定して欲しい。
種族:スライム
筋力:SSS(50)
種族:地龍
筋力:SSS(50)
何かがおかしい。
何がおかしいのか。それは明白である。
それは、種族評価0〜50は、絶対評価の範囲F〜SSSとは連動していないと言うことだ。
ここで、世界にあまねく通用する、無慈悲な自然のルールを付け加えなければならない。
『下等種族は、いかに才を持って生まれて来ようが、高みに登ることは不可能』ということだ。
それを示すのが、『種族の原盤』における【】内の範囲表記である。
もうお分かりいただけただろうか。
スライム種の筋力は、いかに才を持って生まれようが、努力を積み重ねようが、潜在的に、F〜Eの絶対評価しか獲得できないのである。
すなわち、スライム種の「筋力」における種族評価0〜50は、【F-E】の範囲と連動していることになる。
終
追記)そうであるなら、なぜ僕はスライムの交配にここまで執着しているのだろうか……。彼らに、僕の武器としての務めが果たせるとは、到底思えない……。
追記)とんでもないものを作り出してしまった。どうやら『種族の原盤』は欠陥魔術だったらしい。どうにか辻褄が合うよう、術式に修正を加えた。
……これで奴らを討ち果たすことが……