33.動揺
「どうしたのメイリーちゃん、浮かない顔して」
「…ラザフォード様」
いつものおちょくるような視線じゃなく、本当に心配そうな顔つきのラザフォード様。
「ここ最近はずっと浮かない顔だったけど。今日は一段と、ね」
「申し訳ございません…」
疲れた顔をしているのは、自分でも分かっていた。
しかし寝ても覚めても悩みは解決しないし、どうするのが最善の選択なのかが見えない。
今はただリリー・メレスから声が掛かるのを待たなければならないし、霜髪の男の子のことも何一つ分からないままなのだ。
「…悩み事が、多くて。どうすれば良いのか分からないのです」
「ふーん…それは恋の悩み?」
「いいえ、違います」
「即答だね。じゃあ、コールドローズ嬢のことかな」
「…!」
「正解?」
「……はい」
リリー・メレスの件に関しては、そうだ。
リベラに飲み物をかけたのがリリー・メレスだからこそ、こんなに悩むことになっているのだ。
「メイリーちゃんが心を動かすのは、コールドローズ嬢くらいだもんね」
「そ、んなことないです」
「えー?」
(そう、なのかしら…?)
確かに行動の中心にはリベラが居るし、実際に私はリベラのお付きの侍女だ。
「本にも心は動きます。お嬢様だけではない、はずです」
「ふーん?」
私を見つめ口角を上げるラザフォード様に、なんだか恥ずかしくなって顔を背ける。
ここに居たら余計に頭が掻き回されそうだ。
「今日はもう、戻ります」
「えっ、もう?からかってごめんね、そこまで動揺するとは思わなくって」
「どうよっ…し、してません!では、失礼致します!」
素早くお辞儀をして少し早足で図書館を出た。背後からラザフォード様の笑い声が聞こえ、むっとしてしまったが振り返らなかった。
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「本にもって…それもう、コールドローズ嬢にしか動かないって言ってるようなものだよ。メイリーちゃん」




