28.日常
侍女メイリアの朝は早い。
リベラの起床の前にはあらかた全てを整え、備えなければならない。
「おはようございます、お嬢様」
毎朝万全の状態で、リベラの前に立つ。
侍女メイリアの知識は広い。
「メイリー、昨日のティリスア国の歴史の授業なのだけど、どうしても初代国王が行った政策の仕組みと意図が分からないの」
「ティリスア国が元々自然の多い国なのはご存知ですか?」
「ええ」
「その自然を活用しようと考えたティリスア国王は──」
かつての記憶と膨大な量の読書から得た知識を活かし、多方面からお嬢様を扶助する。
侍女科の授業数は少ない。
学ぶことは山程あるが、侍女としての本業との兼ね合いも考慮され、なるべく短時間で簡潔に終えるよう計算されている。
その上6年制の貴族科や執事科と比べて2年も少ない4年制である侍女科では、高い処理能力と効率が第一に求められると言っても過言では無い。
貴族科よりもずっと早い昼食時間。
メイリアは教室の片隅で1人、朝のうちに拵えた軽食を食べる。
お嬢様の今日一日の日取りを確認しながら、どの時宜でお嬢様に声を掛け、行動を共にするかを考える。
努力を怠らないメイリアだが、集中するあまり
「メイリアさん、次移動ですよ…メイリアさん?」
「あ、あぁ、申し訳ありません。ありがとうございます」
なんてこともしばしば。
「…ふぅ」
授業を終え、図書館へ向かう。
「失礼します」
図書館へ入る前に一応声を掛けるが、ここの本は全て全生徒に解放されているので、誰かが常時居るということも無く、返事があることは無い…ラザフォード様が居る時以外は。
ここから貴族科初等部の授業が終わるまで、メイリアは暫しの休憩を取る。
紅茶を飲みながら、好きな本を読む。これ以上の贅沢は無いだろう。
「本日のティリスア国史の授業は如何でしたか?」
「メイリーのお陰で全て理解出来たわ!本当にありがとう!」
「いいえ、お嬢様の努力の賜物でございますよ」
「もう、直ぐそういうこと言うわよね」
リベラとの夕食を終え自室に戻り、明日の予定を立ててリベラの部屋に行き報告する。
その時にリベラの予定も聞き、お互いの予定を知っておくのだ。
「じゃあメイリー、おやすみなさい」
「おやすみなさい、お嬢様」
侍女メイリアの朝は、明日も早い。




