23.伏線
「リベラ、大丈夫だったかい?」
「クレイグ様…ご心配をおかけして申し訳ありません、何の問題もございませんわ」
「そう…なら良かった」
別のドレスに着替え会場に戻ったリベラに送られた視線は、決して冷たいものではなかった。クレイグ様のように気遣う者が殆どだ。
「アラン、リベラに何か飲み物を持ってきてくれないか。呉々も慎重に」
「はい」
アラン、と言うのは4つ上の高等部生で、クレイグ様の執事だ。
私が学園を追放されるまで、とても良くしてくれた数少ない…心を許せる人だった。
(あれ以来1度も会えなかったから…なんだか懐かしいわ)
「お待たせ致しました、リベラ様」
「ありがとう」
ふと視線に気付き顔を上げると、アランと目が合う。
(気不味い)
軽く会釈をしてまた目線を下げ、リベラのグラスが早く空になれば良いのにと願った。
「…疲れたわ」
「良く耐え忍ばれました。何かお持ちしましょうか?」
「大丈夫よ、今日はもう眠るから」
「承知致しました。ベッドメイクは済んでおりますので…おやすみなさい」
「おやすみ…ありがとう」
リベラの部屋の扉が閉まるのを見送り、自室に入る。
途中事故はあったものの、何とか乗り切ることが出来た。
(それにしても気になる…)
リベラに飲み物を掛けた女の子は、同じ初等部でレッツェ国子爵令嬢だった筈。
(どうしてリベラにあんな真似を?)
あの時の震えと顔色の悪さ、声色。全て偽りには見えなかった。
(あれが全て偽りなのだとしたら、大したものだわ)
兎にも角にも、調べてみないことには何も分からない。
明日からすることを頭に思い描きながら、ゆっくりと眠りに落ちた。




