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神槍使い  作者: 怠惰な男の子
1章~異世界へ~
14/58

13話 スラムだ!!ここにいる理由は……

13話目!!今回は4832文字です。

先日はすいません。風邪で一日中寝込んでおりました。

咳のせいで辛いわ、疲れるわ、喉は痛くなるわと大変でした。

明日は中学の陸上部の一環でももりんダッシュというものに参加するため投稿できるかは微妙ですね。


 レオンがヴェルとした賭け試合。

結果はレオンが一歩も動かずにヴェルを挑発するだけの残念で、恥ずかしく、子供が大人に圧勝という結果に終わった。そのためヴェルは暫く街を、庶民から冒険者仲間など話を聞いた者に指を指されて笑われながら歩く事になるだろう。「あいつは子供に負けたクズだ」と。

だがそんな事はレオンにとってヴェルのお金――金貨七枚に白金貨一枚が布袋に入っていた。なお、まだお金の枚数は、数えていないが戦闘中は暇だったため空間魔法で調べたのだ――以外はどうでもよかった。なぜなら今レオンの目の前には……


『早く行こうか。王都に』

『偉大なる十属性の魔術師の空間・異間を治める者』、アブルがいるからだ。

レオンのテンションはもう冷めている。そして冷たい視線を送っている。


『分かってる。ちょっと待ってくれ』


 そう言うとレティに預かって貰っている賭けの商品を取りに行くレオン。だがそこには本来在るべき物が無く、ない筈の物があった。


「おいレティ、賭けた物は何処にやったんだ。というかその手に持っているのは何だ」

「………」


 驚愕の表情を見せたままこちらを見ているレティ。

 反応が無いためレオンがチョップすると……


「あれ!?」


 レオンの手のひらはレティの脳天をすり抜け、そこにレティがいたのが幻だったように姿が消えていく。


「どういう事だ?」


 レティの手の平があった場所から落ちていくのは賭けの商品では無く得体の知れない紙。

 その紙にはミミズが暴れまわったような、ギリギリ読めるような文字が書いてあった。


「『女と金は貰って行くぜ』ってどこかの三下の悪役かよ」

「君、どうしたの?」


 そう声を掛けてきたのはローブのフードを下したアブル。

フードを下したアブルの容姿は茶色の目に茶色の髪、悪戯好きの子供ような顔、童顔だった。尚、レティの異変にその他の者はついさっきの賭け試合の興奮から目覚めておらず気づいていない。


(とりあえず大騒ぎになるからこれは隠しておいた方が良いな。野次馬も気づいていないみたいだし。あれ?賭け試合?何か忘れているような?)


 レオンはある言葉を切っ掛けに忘れていた事を思い出そうとした。だが……


「レオン。取り合えず僕が彼女の魔力反応を感知したから早く行こ!」

「……分かった」


 アブルに話し掛けられ我に返るレオン。そんなレオンにアブルが提案してくる。


「君に彼女の魔力と攫った人の魔力どういう物か渡すからちょっと先に行ってて」


 そう言いレオンに感知した魔力の質を教えるアブル。


「分かった。というかこの魔力の人、空間の魔力でマーキングしている。そいつのすぐ傍にすぐ跳べるな。アブル」

「えっ!?なんて用意周到なの。マーキングをしてるなんて。じゃあ、その用事の後で良いから僕も連れてって。もちろん転移系の魔法使えるよね?」

「ああ。じゃ、やるぞ」


 レオンはそういうとブリューガングを構え、詠唱を始める。


『我は理・法則を捻じ曲げ、時を超え、空間を跳び、古の超越者の一部の力を使う。魔力という多大なる代償を払う者。その力を使い、我と旅人の(ねがい)を叶え、彼の場所へ届けたまえ』


 淡い光が二人を包み込んでいく。そしてレオンは……


(まずはレティを助ける方が先決だが、なにか忘れているような気がする……気のせいか)


 こんな事を考えていた。

 そして魔法が出来上がる。この世界でも極少数しか使えない転移系魔法『空間転移』を使って。

 なお、この魔法を使えると知られて今度はアブルより上の者から勧誘されるのはご愛嬌だろう。


『空間転移』


 二人の姿はその場から消えた。レティを助けるために。

 また、レオンが考えていた、忘れ去られている存在。それは血まみれのヴェルなのだがレオンはずっと目の前にあるので既に景色と同化してしまっていて、野次馬達は最初のこの光景を見て、興奮が来ているので視界にすら入っていない。そのため、ギルドの雇っている治療師に治療させられて、しかもお金もヴェルにしてみれば結構な大金を取られて、ギルドに借金をしてしまう。それはまた別のお話。

 そんなヴェルの悲惨な未来が決定していた頃頃レティを攫った賊は……


「お頭、俺にあの女抱かせて下さいよ。俺最近ちょっと溜まり気味になっていて、だかブヒュっ!!」

「最初にヤるのは俺だよ。クズ!最近収穫が無かったんだから。その辺考えやがれ馬鹿!!」


 お頭と呼んでいる男性を殴る男性。その男は如何にも盗賊といった風貌、具体的には、背が高く、声が荒く、ここだけは褒めよう。筋肉が体中にびっしりと付いている。

 レティは……


「ん、んんぅ!んーー!!」


 地下の牢屋のような場所につかまっていた。

 そしてそのレティが誘拐され、監禁されている建物の扉の前であり、スラム街、それもスラム街の中央付近にレオンとアブルは転移していた。そしてレオンの人生初の転移の感想は……


「ちょっと待てよ。ハァ、ハァ、これ魔力使い過ぎだろ」


 大量の汗を顔中に浮かべていた。

 その理由、それはレオン本人も言った通り使用する魔力が今まで使ってきた魔法の中で、最も多かったのだ。だが、レオンはアドルフに魔力量の多さだけはお墨付きをもらっている。そして使った魔力はレオンの魔力量の足もとにも満たないのだ。ならなぜ?それを疑問に思っていると。


「今回も僕が転移魔法を使う時よりも圧倒的に滲み出ていた魔力量が少なかったね。さすが!!後、君が疑問に思っている事はレオンが今までに一回の魔法で大量の魔力を使った事が無かったからだと思う」

「で、でもハァ、ハァ、他にも魔力をハァ、ハァ、これ以上使った時はあるぞ?」

「だから一回に使った量だって。急になにかが無くなると体も負担が掛かるんだよ。これを考えると君の課題は如何に消費魔力の多い魔法に慣れるかだよね?と言いたい所だけど、レオンは魔力を無駄に使い過ぎ!魔力の操作も頑張ってね~。あと、転移の場所結構ずれてるね。移動が面倒くさい」

「ハァ、善処します」


 それから十分程レオンの体調が治り始めたのを見計らってアブルが言う。


「そろそろ行くよ。盗賊のアジトに。レオンは後方支援で僕を援護してね?」

「分かった。というかそれが本当の俺の戦闘スタイルなんだけど?後方からの武器での物理攻撃と魔法での遠距離攻撃しかやらないから」


 アブルの言葉に頷きながら自分の戦闘スタイルを言うレオン。


「えっ!てっきり敵の攻撃を避けながら戦う前衛だと思ってたんだけど!?ほらヴェルとの戦闘だって……ま、良いか。僕前衛だし。この大太刀でね。銘は<空異(じげん)(ちょう)(けん)>」


 そう言い、空間魔法『亜空間』から大太刀をだすアブル。


「似合わないな。まあ、行くか」

「何気にひどい」


 そう言い飛ぶ。だが途中で立ち止まって……


「あ、そうだ!戦闘始まったら七秒後に目を閉じろよ」


 そう言ってアジトに飛んでいくレオン。だがアブルは人の思考を『異間』を使って読めるので作戦が分かっていた。


(にしてもこのレオンって言う男の子、魔法を何属性使えるんだろう?僕が知っているだけで風に空間、そして今から使う予定でいる光。気になるな。でも光の属性が使えるのならば勇者のお世話を任せられるな。魔王にもダメージを与えられるし)


 アブルのこの疑問。本来なら他人は絶対知る事は出来ない事だ。だがアブルにとってもびっくりする形で知ることになる。

それは何時になるのか……



 レオン達は今、イナグの街に在るスラム街。その中央付近にあるボロ臭く、それでいてなお丈夫そうにそびえ立つ建物の前に来ていた。


「ん~。彼女はこの建物の地下にいるみたい。まだ汚されてはいないようだね」

「スラムの住人にしては以外と真面目だな。既にヤられる寸前かと」


 ちなみにその属は頭が部下を殴っているので二七名いた筈の部下が二六名になり、戦力が減少していた。


「レオン、彼女にお世話になったんだよね?酷くない?」


 以外、といった顔をしてレオンを見たアブルだったがここで返ってきた答えは予想外だった。


「別にレティが心的外傷(トラウマ)とか負った所で俺に被害はないし。あ、でもギルドに恩を売れるって点では俺の得か……」


 借りは作っておいて損は無いからな。と言おうとした所でレオンは口を閉じた。

 何故かアブルが思案しているような顔になったからだ。


「どうした?」

「えっ、い、いやなんでも無いよ」

「そうかなら良いや」


 焦るアブル。なぜなら今アブルは……


(考えてる事がばれなくてよかった。さすがにレオンの性格の事を考えてた。なんて言ったら絶対手伝ってくれなくなるからな)


 レオンの扱い方を考えていたからだ。


「とにかく急ぐぞ」


そう言いアブルに扉を開けるよう促すレオン。


「はいはい。分かりました」


アブルは<空異の跳剣>を片手に持ち、もう片方の手で扉を開ける。

 そして……


「ここに皆盗賊が集まっているよな?アブル?」

「うん。じゃ七秒後に目、閉じるから」


 扉の先は大広間のようになっていた。部屋の数は二つで、一つがこの大きな部屋、もう一つが地下のようだ。レティはこの地下室にいる。


「女や人の金を奪うクズ共め、死ね」


 レオンは声を低くして言う。だがその声とは裏腹に詠唱は小さな声で。


『その光は悪には害を、善には益を運ぶ。その害を我は望む』


 槍の状態のブリューガングの先端に、光が球状に集まる。



『フラッシュボール』


 その球は詠唱が終了すると同時に盗賊の集団の中央に向かって飛んでいく。


「頭!こいつ子供の癖に魔法使うんすけど」


 フラッシュボールは中央に着いた瞬間止まった。



「そんな事は解ってんだよ。お前等この子供と後ろの男性を倒すぞ!後ろの奴は殺しても構わねぇが、子供は殺すな!金になりそうだしな」


 頭と呼ばれる男性は大声で叫び、それに応答する声が聞こえてくる。が、レオンが全員の目を開けさせるために挑発をする。



「お前等みたいな賊に俺達が倒せる訳ないだろ。そんな事も分からないのか?」



 それにイラついたスラムの住人がレオンに罵声を浴びせながら襲いかかる。



 だが、レオンは口元を三日月形に曲げながら魔法を発動させる最後のキーを発動させた。


爆破(エクス)っ!』



 その瞬間、(まばゆ)い光が建物を包む。


「目がっ!!」

「うわっ!」

「目が痛……」


 光が収まった時、既に三人の賊が戦闘不能になっていた。もっとも、戦闘不能と言うが、殺されている訳ではない。それは文字通りの意味で手足が使えなくなっていたり、拘束されているだけだ。

 一人目はフラッシュボールから撃たれた光の斬撃で手足が飛ばされ。

 二人目はアブルが跳剣で出した跳ぶ斬撃で。

 三人目は……


「人を切る感触ってあんまり解んないな。少し重くなるだけか」

「レオンは当たり前でしょ。その槍を手で持っているんじゃ無くて、操っているんだから」


 レオンの操ったブリューガングの一閃で足を2本とも切られて。

 そこからはレオン以外は乱戦だった。レオン達の敵は皆、目を魔法で潰されていて、しかもパニック状態になっていたのだ。

槍を使う者は近くにある気配に向かって薙ぎ払い、突く。剣を使う者は切り掛かり、短剣の者は全ての方角に今持っている短剣を投げていた。

その中にいるアブルかというと。


「ふっ!はっ!」


 空間魔法を使っているのだろうか。的確に槍をいなし、剣を避け、短剣を切り捨て、時々小規模な転移を行っていた。

 これは傍から見れば凄い光景だろう。だがレオンだけは違っていた。


『空飛ぶのズルいって。これ超疲れるんだけど。また短剣だ。避けられないから『小規模転移』っと。魔力がどんどん減っていくんだけど!?』

『それが俺の戦い方だから降りるのは無理。俺だって魔法とブリューガングで倒しているだろ。というか五月蝿い!黙れ!』


 念話で愚痴をレオンに向かって吐いてくるのだ。しかも、『黙れ』といっても、『なにもしゃべっていないけど』と言い返してくる始末。

 レオンは戦闘の疲れでは無く、精神的に疲れていた。だからだろう、油断してしまったのは。


「畜生こうなったら」


 そう言い残し、頭と呼ばれる男性は二人の部下と共に十四名の仲間を残し地下へ行ってしまった。

 レティを人質とすると思惑をたっぷりと滲ませて。


12話目を確認したのですが、一部間違いがあるので直しておきました。

明日か明後日も14話をお楽しみに!!


『空間転移』~空間魔法~

詠唱……我は理・法則を捻じ曲げ、時を超え、空間を跳び、古の超越者の一部の力を使う。魔力という多大なる代償を払う者。その力を使い、我と旅人の(ねがい)を叶え、彼の場所へ届けたまえ

効果……指定した場所に空間ごと転移する。距離や転移する空間の大きさによって消費魔力は変わる。


『亜空間』~空間魔法~

詠唱……?

効果……存在している空間は使用者の魔力量で大きさが変わる。中の空間は極寒と言っても良い温度であり、生物の収容は不可。時間経過はあり。時魔法との組み合わせにより時間経過などの変更可能。


『フラッシュボール』~光魔法~

詠唱……その光は悪には害を、善には益を運ぶ。その害を我は望む

効果……ただ光を発する。だが、使う者によっては斬撃・衝撃を加えたり、光の強さを変えることができる。


1話の前に『属性毎』に『誰が使ったのか』、『何話で使われたのか』を整理した魔法一覧を徐々に作成していく予定ですのでよろしくお願いします。

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