第12話 異世界にチート勇者はいらない
STT隊員「大変です長官! 北の辺境に魔王軍が現れました!」
マサオ「何だと! 直ぐに軍を編成しろ!」
いよいよマサオが勇者になるチャンスが来た。
マサオ「この戦いで俺が勇者だと証明した後にクーデッタ国を売っておさらばだ」
マサオが北の辺境の地で魔王軍と対峙した時、マサオは魔王軍を率いている者を見て驚愕した。
マサオ「お前は…テト!」
魔王テト「お久し振りですねマサオさん」
魔王テトは黒衣を身に纏いモンスター達を従えていた。
マサオ「まさかお前が魔王とは驚いた。これ程のモンスターを連れているということはお前は魔族だったんだな」
魔王テト「復讐を誓った僕は力に目覚めました。そして自分がモンスターを仲間に出来る魔族だと分かった時に自覚したんです。この世界は僕が支配するべきだと。だからあなたの国も滅んでもらいます」
マサオ「傷を治してやった恩を忘れたのか?! それにこの国は俺が苦労して手に入れたんだぞ!」
マサオの言葉に魔王テトはニヤリと笑みを浮かべて答えた。
魔王テト「あなたが僕の傷を直したからここにいるんですよ。それに僕はあなたがどういう人なのか知っているんです」
マサオ「何だと!」
魔王テト「さあ…死んでください………本物の魔王め!」
クーデッタ軍と魔王軍の戦いが始まった。クーデッタ兵は先の内乱と戦争で弱体化したので若干押されている様だった。
魔王テト「ふふふ…やはりこのタイミングで戦争を仕掛けて正解でしたね」
マサオ「くそっ! 俺がクーデッタ国を盗るのを待ってやがったのか!」
狼狽えるマサオに魔王テトが言い放つ。
魔王テト「一気に決めさせてもらいましょう」
マサオ「な、何をする気だ?!」
魔王テトが魔法の詠唱を開始したのを見てマサオが察する。以前にマサオが女神に頼んでテトに与えてしまったがために町を焼き尽くすという結果になったあの魔法。
マサオ「このままだと殺られる!」
マサオは躊躇わず自分も切り札を使った。
魔王テト「ヴィーナスチートフレイム!!!」
マサオ「ジャスティスチートスペシャル!!!」
両者のチート魔法はほぼ同時に発動して衝撃がぶつかり合い、その威力は凄まじく発動者の二人以外は全員吹き飛ばされた。しかし二人が驚いたのは相手の魔法の威力ではなくてその魔法が酷似していた点だった。
マサオ「!」
魔王テト「そんなバカな! 何故その魔法を…」
状況を直ぐに理解したマサオは動揺している魔王テトに追撃をかける。
マサオ「ジャスティスチートスペシャル!!!」
対応に遅れた魔王テトは至近距離から直撃を受けて跡形も無く消し飛んだ。
マサオ「ハァ…ハァ………やったか?」
魔王テトは死んだ。最早この世界にはマサオに並び立つ者などいない。
マサオ「アハッ…アーッハッハッハ! やったぞ! これで俺は勇者マサオだ!」
マサオが高笑いを始めた瞬間、それは起きた。
少女「ゴッデスチートエクスプロージョン!!!」
不意を突かれたマサオを衝撃が襲う。
マサオ「グワァーーーッ!」
吹き飛ばされたマサオが瓦礫の山に突っ込む。少し離れた位置から発動した魔法だったので即死は免れた様だった。
マサオ「ど、どういう事だ…何故その魔法を使える奴がまだいるんだ?!」
マサオがチート魔法を使った少女を見る。見覚えのある様な気がしたがマサオは思い出せなかった。
少女「パパとママの仇!」
今度はマサオが隙を見せる番だった。
少女「ゴッデスチートエクスプロージョン!!!」
とどめの一撃を受けたマサオは光の中に消えていく。爆音が轟いた後、戦場に最後まで立っていたのは戦いの途中で突然現れた謎の少女だけだった。すると戦いを見守っていた女神が薄気味悪い笑い声を上げた。
女神「ウフフッ。女神が善人とは限らないのに人は愚かですね」
滅びゆく世界を見ながら女神は言った。
女神「私達はこれからも異世界転生を望む者を利用させてもらいましょう。滅ぼさなければならない世界がまだ沢山あるのですから」
今も多くのチート勇者が異世界に呼び出されている。しかし彼らは必ず己の力に溺れて異世界を私物化しだすだろう。力の証明と正義の証明は別なのだから。




