共同申請人
翌日の午後、誓約書庫の小さな照合室には、四人と一鉢の鎮静草が揃っていた。
クララは薬草園の納品相談で王都に来ていたため、そのまま証人を引き受けてくれた。ミーナは朝から落ち着きがなく、インク壺を三度並べ直している。エドガーは昨日より緊張して見え、私はそれを見るたび少し安心した。
人生を変える文書の前で平然としている人を、私はもう好ましいとは思えない。
「では、原本を読み上げます」
書庫長としてではなく、共同申請人として、私は清書した婚約申請書を手に取った。
「共同申請人、エドガー・アーレンス。共同申請人、リディア・エルンスト。両名は、相互の自由な意思により婚約を申し込む」
昨日、最初は申請人と被申請人と記されていた部分だ。エドガーが、自分から直したいと申し出た。
「婚姻後も、リディア・エルンストは誓約書庫における職務を継続する権利を有する。エドガー・アーレンスは監察職務を継続し、双方は相手の職務上の独立を侵さない」
クララが満足そうに頷く。
「婚姻前財産は各自が管理し、共同運用には双方の署名を要する。居所および同行については、双方の希望を協議し、一方の身分を理由に強制しない」
ミーナがもう泣き始めた。
「いずれか一方の意思により婚約または婚姻を解消する場合、相手の尊厳を損なう理由を要せず、財産上・職務上の不当な罰を伴わない」
最後の条項を読み終えると、部屋が静かになった。
クララが小さく言った。
「とてもよい条項です」
その声には、自分がかつて持てなかった自由を、誰かの紙に見つけた温かさがあった。
私はペンを取った。
リディア・エルンスト。
署名を書き、家の印を押す。エドガーも隣に署名し、王弟としての印を押した。今度の印は白百合ではなく、彼自身が監察官として用いる梟の印だった。広げた翼の線に欠けはない。
「照合します」
ミーナが涙を拭いて、二つの印と署名を確認した。クララも証人欄に署名する。
「これほど安心して見られる婚約原本は初めてですわ」
「通常、証人が以前の婚約事件の被害者ということはありませんからね」
私が言うと、彼女は肩をすくめた。
「通常ではないから、よろしいのです」
原本を保全箱へ収め、銀蝋を落とす。この箱は誰かから文書を守るための封印ではない。二人が同じ内容を選んだことを、未来へそのまま届けるための封だ。
「掲示用の公示は、どうなるのだろう」
エドガーが尋ねる。
「私が清書します」
「共同申請人が自分の公示を書いてもよいのか」
「成立公示は争いの文書ではありませんし、照合書記が確認します。もっとも、誤記をしましたら、ミーナに叱られます」
「全力で確認いたします!」
私は新しい掲示用紙を引き寄せ、羽根ペンを銀墨へ浸した。
婚約成立公示、第一号。
共同申請人、エドガー・アーレンス。
共同申請人、リディア・エルンスト。
両名は、相互の意思と署名により婚約を締結する。
必要な文は、それだけだった。
不義も、恩赦も、誰かが誰かを所有するような言葉もいらない。
公示を貼り出すため一階へ下りると、掲示板の前には思いがけず人が集まっていた。父と母、法務院から抜け出してきたエルマ、杖をついたアイナと母親、それに書庫の書記たち。
「皆様、なぜ」
クララが涼しい顔で言った。
「書庫には記録が残りますが、祝い事は目で見なくては」
ミーナが公示を掲示板へ留める。私が以前、罪を書き写したのと同じ場所へ、新しい銀文字が光った。
アイナが母親に支えられながら近づき、微笑んだ。
「美しい文字です。今度は、読むと息ができます」
ベアトリスからは、王都を離れる前に小さな包みが届いていた。中には二人分の白い布手袋と「助けてくれた方を探しながら、仕立屋を続けます」と記した便りがあった。訂正された名前は、それぞれの生活へ帰り、それぞれの続きを始めている。
その一言に、涙がこぼれそうになった。
エドガーが隣で、そっと手を差し出す。私は自分からその手に触れた。
「書庫長。今後も私の文書を厳しく確認してくれるか」
「もちろんです。監察官殿下も、私が見落とす記録を見つけてください」
「一生、努めよう」
「私も」
拍手が起きた。大げさな楽団も白薔薇の飾りもない、北塔の掲示板の前での拍手だった。それが、私には何より華やかに聞こえた。
百通目に自分の名を見つけた朝、人生は破かれたのだと思った。
けれど原本は、終わりを命じるためにあるのではない。
嘘に線を引き、奪われた名を返し、自分で選んだ続きへ、確かな署名を残すためにある。
私は掲示板の銀文字を見上げ、隣に立つ人の手を、もう一度握り直した。




