第87話.教えて欲しければ協力しな
戦闘奴隷の子達はほとんどが農村出身で、アウトドアライフにも長けています。
なんとわたし達は二日と三晩尾根の前に止め置かれた、戦闘奴隷達はあっという間にテント村を造ってアウトドア生活、交代で狩りに行ったり釣りに行ったりしているみたい。
食事は獲れたての肉や、釣ったばかりの魚、それにしても彼女達は屋外での能力が高いわね、何と言うか生活力と言うか、生命力自体が違うレベルよ。
口の周りを脂だらけにして骨付き肉を頬張っていると突然エルフが現れた。
大きいわよねぇ、身長は180くらいありそう。
だけどスラリとして無駄な肉が付いていない、顔はホリの深いイケメンよ。
プラチナブロンドのストレートヘアーからは尖った耳が出ていて、本物かしら
“触ってみたい”
「我が長が会われるそうだ、三名だけついて来い」
「ちょっと待って、今食事中なの」
わたしの手元を見た美形エルフ。
「ハバリーの肉か、朝から元気がいいな」
「エルフは肉を食べないのかしら?」
「そんな事は無いぞ、お前達ヒト族が我らの事をどう思っているのかは知らんがな」
結局迎えに来たエルフさんも一緒に骨付き肉を頬張った、森の中で木の実だけを食べていると言うのは創作だったようね。
骨付き肉をしゃぶる様に食すイケメンエルフを見て、戦闘奴隷の子達は驚きと残念が混ざった複雑な目で見つめている。
そうそう迎えに来たエルフはギュンターと言うそうよ、歳は怖くて訊けなかった。
だってそうじゃない、現代日本で初対面の妙齢女性に歳を訊いたら、その後の付き合い変わっちゃうわよね、異世界では何がタブーか分からないのだし。
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「……わたくしダ・デーロの街で冒険者を束ね迷宮探索をしておる、ミヤビと言う者、此度はエルフの里にお招きいただき恐悦至極に存じます」
「頭を上げよ、ミヤビとやら、我は十八の白エルフ族を束ねる族長、サムコヴァーだ、なにゆえ禁足の地まで参ったのか、申してみよ」
「要件を申す前に我が立場を明らかにしておきます、わたくしは一介の冒険者、荒事を生業とする者です。
人間族の政府や行政とは一切関係の無い立場だと言う事を覚えて頂きたいと存じます」
「政府を代表する者ではなく、あくまでも個人として参った者なのだな、宜しい」
「族長殿、これはわたくしからの気持です、お納め頂けますか?」
そう言って、高級な反物を数巻き差し出すと、問題無く受け取ったわ、これはわたし達を認めたとみなして良いわよね。
「そなた達の気持は理解した、して、いかな用があり、我々の里にまで出向いたのか」
「まずはこれを」
わたしは緑色の瓶をギュンターに渡す、彼は蓋を開けて匂いを確認すると族長サムコヴァーに渡す。
族長も同じ様に匂いを嗅ぐとギュンターと二言三言言葉を交わすとわたしに向き直る。
「ミヤビとやら、この瓶は何であるか?」
「それはしばらく前まで人間族の土地で売られていたアンフェタと呼ばれる薬でございます……」
わたしはアンフェタの効能と副作用を説明する。
「……確かにアンフェタは問題を抱えておりますが、その効能も無視できません、我々としてはこの薬を開発した者と話をしたい」
「ミヤビ、そなたの見立てではアンフェタを作ったのはエルフの者だと言う事だな、ヒトの法で罰する気は無いのか」
「最初に申した通り、我々は個人として参っただけ、法の執行者ではありません。
ただ、アンフェタを作ったものと話をし、彼の者が望むなら研究できる環境を整えたいと思います」
「アンフェタに代わる新たな物を作り出し、それで金を稼ごうと言う訳だな。
まったくヒトと言う生き物は金に執着し過ぎる」
少し前のわたしなら族長の言葉に反論の一つもしただろうけど、レオポルト商会が破産した現実を見た後では、喉の奥に詰まった物が出て来ない。
「この瓶の中身はエルフ族と関係があるかもしれん、だが突然訪れた得体のしれない連中に話は出来ん」
これってアンフェタとエルフは関係があるって、言っている様なものよね。
「族長様、我々いかにすれば信頼を得られるのでしょうか?」
「我がエルフ族は黒の森に住むオーガ族から攻め立てられておる、本来は十八の部族が居を構えているのだが、既に二つの部族が住処を追われておる」
なんと森の奥で没交渉な生活をしていると思いきや戦争中だったのか、だけどこれはチャンスね、バックに銀行がいるのよ。
「族長、戦争には金が必要でしょう、我々は少ないながらも援助する事が出来ます、エルフの里を守る一助となれば幸いです」
「これだからヒト族は、だからお前達は信用できないのだ、共に肩を並べて戦った者こそ、真の友であろう」
金を払うのではなく、共に戦えと言う姿勢です。




