第79話.リアル亀頭
第四部ですけど、時系列はそのままです、シームレスに読んでください。
エアーマットとローションでお客をもてなす究極の風俗、ソープ嬢、お店のメニューの一列目に写真が載るくらい売れっ子だったわたし、ことミヤビ。
泡にまみれてお金を稼ぎ、稼いだお金で使いもしないブランドバッグや袖を通す事も無いブランドの服を買いまくる。
こんな生活がいつまでも続く訳ない、頭の中で分かっていたけど、ズルズルと引きずっていたわたしはあっさりと命を落とし、そのまま異世界に飛ばされたの。
電気は無いけど魔法が有って、選挙権の代わりに貴族なんて言葉が幅を利かせている中世っぽいゲームな世界。
中世だけあって奴隷制度があって、身寄りの無いわたしはあっさり奴隷落ち。
“二度目の人生も詰んだ”なんて思っていたけど、スレイブ生活は意外にホワイト。
雇用主は衣食住の面倒を見なければならないし、働きによっては給料まで貰えたりする。
鎖につながれ鞭に打たれる世界じゃなくて本当に良かったわ。
その後、異世界でも日本の風俗を流行らせようとエアーマットを売って荒稼ぎしていたわたしだったけど、色々有って奴隷身分を解かれ独立する事に。
スリーローズ商会と言ういかにもな名前の商会を設立、最初はエアーマットの販売だけだったけど、素質の有りそうな娘を集めて異世界ソープ嬢を教育していたの。
こちらの世界にも娼館は有るけど現代日本とは大違い、男は暴力みたいなセックスしかしないのよ、腰の動きが激しいほど女が喜ぶと思っているみたいね。
そんな世界におもてなしの風俗を広めたいのよ。
やっと自分の天職を見つけたと思っていたのに、冒険者と言う荒事を定期的にする事になってしまったの。
10歳くらいの戦闘センスの有る女の子達を集めて迷宮探索、ゲームの世界そのものね。
そうそうわたしは魔法を使えるのよ、それも結構上級クラスの、異世界チートって呼んでもいいわね。
スリーローズ冒険者パーティーは女の子限定よ、たとえ強くて素質が有っても男はダメ。
こちらの世界の男はバカだからすぐに力づくで女を物にしようとするの。
そんな男性優位の社会を象徴する様な事件が起きたの、後の歴史書に“指輪事件”と記される事になる第一王子の暴走。
見目の良い下級貴族の娘を花嫁候補として王宮に参内させ、嬲りものにして、飽いたら親元に返す。
事件の被害者の娘達、今更嫁に行けず、妾になる位しか選択肢が無かったのよ。
被害者の一人と縁が出来、わたしの冒険者パーティーに入れたの。
バラの様な華は無いけど、山奥で健気に咲く白百合の様な令嬢、ニコレシア・ガイストはニンファと名を変え、ついでに術で外見も庶民的に。
貴族の身分を捨てて冒険者として新しい人生を歩んでいる、言っては何だが貴族の娘なんて、所詮は籠の中の鳥。
荒事が日常の冒険者なんて務まるの?なんて思っていたけど、しっかり適応して、スリーローズ商会の冒険者。
▽
迷宮の35階層はどこまでもまっ平らな平原、何の変化も無い場所を歩き続けるのは心が折れそうになるわよ、やっと階層を出る通路に達したけど、通路前にでっかいカメが鎮座している。
タルタルーナと言うカメみたいな魔物、大きさは3ナンバー車くらい。
甲羅から全方位にトゲが生えているパンクなカメよ、こいつが通路を塞いでいて先に進めないの。
「邪魔よ!燃えなさい、ファイア」
一瞬で炎に包まれた巨大カメ、熱気が頬を熱くするわ。
紅蓮の壁が消え去ると、さっきと同じ角カメが居座っているだけ。
「炎魔法もダメね」
「ミヤビ様、魔法が効かない相手ですね」
戦闘奴隷のリーダー、カタリーナ言う。
「最後は物理か~、カタリーナ、お願い出来る」
自分達の出番が来て嬉しさの隠せないカタリーナ達は元気よく返事をすると一斉に巨大カメに向けて走り出す。
「ミヤビ様、こう言う時には剣と槍の出番ですね、わたしももう少し剣の稽古をしましょうか?」
「ニンファ、人には向き不向きがあるの、あなたは魔法でみんなをサポートして頂戴」
「それは分かっているのですけどね…… ミヤビ様、みんなの様子が変です!」
巨大カメが特に何かをした訳ではないのに、少女達は次から次に戦う事を止めて、所在なさげに立っているだけ、座り込んでしまった子もいるわ。
「精神攻撃っす、早くみんなを引き剥がさないと」
ナーディアが叫ぶ。
「全員撤退よ、みんな下がりなさい!」
元気よく駆けだして行った少女達は月曜の朝みたいな顔をしてトボトボと重い足を引きずって帰って来る。
「……ミヤビ様、わたし働きたくないです」
「ちょと、カタリーナ、何言っているの?」
「そうですよ、どうして人って働くのですか、変ですよね」
「休んでいるのが一番に決まっています」
これが巨大カメの精神攻撃なの、無気力と言うよりも働く事を嫌がらせる地味な攻撃ね。
「ニンファ、あいつの上に水魔法で水球を作って」
「魔法攻撃は効かないはずです」
「いいから!」
ニンファが出した水球をわたしが魔法でホールドする。
「もっと出して」
新しく出した水球は前の水球と融合して一つになる、直径30Mとして何トンかしら? ニンファもわたしの意図を理解したのか次から次に水球を出す。
もう魔法も限界。
「今!」
数千トンの水塊がパンクなカメを押しつぶす究極の物理攻撃よ。
「やったー」
そこかしこで喚声が上がり喜びに溢れる、溢れ出た水塊は大波となってわたし達を襲う。
喜びの声は悲鳴となった。
「ミヤビ様のバカー!」




