第35話 胸にスイカの女の子
金髪碧眼は人気です。
レオポルト奴隷商会に現れた高貴な女性、流れる様な金髪が眩しいわよ、こちらの世界では緑や紫の髪が普通にいるけどやっぱり金髪よね。
日本を思い出すと服や下着の通販モデルさんや、カットモデル、結婚式場の宣伝にまで採用されていた金髪、黒髪な日本人の憧れよね。
実際の金髪は毛量が少なく一本一本も細いので“なんとかしてボリュームが有る様に見せよう”と苦労するらしいけど、こちらの金髪のお姉さんは髪のボリュームも充分ね。
わたしを含め主だった使用人が集められてブロンド美人さんと顔合わせ。
「商会の皆さま、初めまして、わたくしヒルベルタ・ブシュケッターと申します、商会でお仕事を学ぶ事になりましたの、至らぬ点があるかと思いますがどうぞよしなに」
品よくお辞儀をするのだが、それがとっても自然ね、顔つきはちょっと釣り目だけど、それが高貴な感じを醸し出している。
田舎娘の娼婦候補生達はレオポルト様の術でそれなりの顔にはなっているが、絶対に超えられない壁があると実感させてくれる品の有る佇まいよ。
そして女同士ならば最初にするのが身体のチェック、意外に腰は絞れていない様だ、と言っても庶民に比べれば全然細い。
その代わり出る所はしっかり出ている、いや出過ぎだろう、貴族だからキッチリした下着をつけているはずだが、正面から見ると胸が身体の幅に収まりきらない。
巨乳好きな男性は多いけど、実物を目の前にすると醒める事が多いそうよ。
触った感触が想像よりもフニャフニャしているし、脂肪だから体温も低いわよね。
そして、下着をしているから補整されて谷間が出来るけど、支える物が無くなるとだらしなく垂れるだけ。
別にわたしが巨乳に対してコンプレックスとかを持っている訳じゃないからね。
◇
ヒルベルタ様は商会のあらゆる仕事に身を持って覚えようとしたの。
最初に現れたのが下働き達の働く洗濯場、袖をまくり一緒に仕事をしようとしたので、周りに止められたわ。
その後もトイレ掃除や高窓のガラス磨き、水周りの掃除等を率先して行った。
未来の旦那の仕事を少しでも覚えておこうと言う健気な姿勢。
メイド達からわたしの元に報告が集まるがネガティブな事は一つも無い。
平民出の下働きの者達にも優しく接してくれている。
何と言うか育ちが良い様に見受けられるかな。
どうでも良いけどソープ嬢は行為が終わりお客様を送り出した後、風呂場の掃除をしなければならないのよ。
嬢はお店から入浴施設を借りているだけだから、綺麗にして返さないといけないの。
嫌な仕事と言うか、排水溝に溜まった陰毛を集めるのは、みじめな気分になる仕事だったわね。
◇◇
奴隷商会の中の仕事を一通り覚え、使用人達と人脈を作ったヒルベルタ様、今は性奴隷達の教育の場に立ち会っている。
「ミヤビ様、素晴らしいですわ、性奴隷に関して誤解していた自分が恥ずかしいです」
「教育を施せば彼女達も売られた先で楽が出来ますからね」
「わたくし両親から教育を受けておりますし、琴棋書画も嗜んでおります、何か出来る事は無いでしょうか?」
琴棋書画、文化人の嗜みと言われているわ、音楽、書道、絵は分かるけど棋は囲碁の事よ。
「ヒルベルタ様、お手すきの時で構いませんので、彼女達に琴棋書画の手ほどきをして頂けないでしょうか?」
「まぁ、わたくしに出来る事なら喜んで!」
今までは行く先々で商会の未来の奥方様に失礼があっては大変と、腫れ物の様に扱われていたヒルベルタ様は心の底から喜んでいたわ。
誰でも仕事を任されると言うのは嬉しいものなのね。
娼婦候補生達の教育は二人の家庭教師とローテーションを組んで進めていたのだけど。
その中にヒルベルタ様の教養の授業が組み込まれる事になった。
教育と言うのは最低限の力よ、いわば家の基礎工事みたいなもの。
教養はその基礎工事の上に、柱や壁を造って行く行為。
一番手軽で効果を出し易いのが“書”綺麗な文字を書けるだけで評価がまったく変わってくるわよ。
わたしの提案で始まったカード、ソープランドでは帰る時にお客様に名刺大のカードをお渡しするの。
殿方にしてみれば記念になるし、嬢の立場からすると、次に来た時に指名してもらえるかもしれないわよね。
裏面がカレンダーになっていて、お休みの日に印を入れておいたりもしたわ、誰でも指名が欲しいからよ。
ソープでは当たり前の事なんだけど、こちらではかなり新鮮だったらしくエステファニアさんなんて。
“すばらしい考えだ!ミヤビ金貨を払うぞ”
なんて興奮していたわ。
お店の名前と娼婦の名前はカリグラフィーみたいな芸術的な文字で描かれている、これは専門の人にお任せよ。
裏側にちょっとした感想を書いてお渡しするのだけど、お客様からの反応は上々よ。
冒険者の中には読み書きが出来ない人もいるけど、カードを貰う事が嬉しいらしくリピート率向上に貢献しているわ。
単なる性欲解消のではなく、人と人の結びつきを感じさせるのかしら。
高級店ではお得意様と文のやり取りをする事もあるので是非とも覚えておきたいスキルよね。
“画”も面白いわよ、カードの裏にちょっとした感想を書くのだけど。
詩や散文の様な教養の有る文章が書ける子ばかりではない、そんな子達はカードの裏に絵を描くの、デフォルメした自画像なんだけど、これはこれで新鮮らしいの。
“琴”は音楽、こちらの世界にお琴は無いけど、ブラッチェと言う四本の弦を張った楽器があったわ。
分かり易く言うとヴァイオリン、直接役に立つ素養ではないけど、高級店では音楽について話をするとそれだけで評価が上がるから無視できない教養ね。
最後は“棋”囲碁よ、盤の広さと駒の形は全然違うけどこちらの世界にも囲碁が有ったのには驚いたわ。
将棋の代わりにチェスの様なボードゲームもあったのだけど、相手の王様の首を取るのが目的のチェスよりも、
“損して得取る”が信条の囲碁の方が文化人から支持されているのも前の世界と同じよね。
わたしは中学時代、地味女で囲碁将棋クラブに入っていたから多少のルールの違いを教えてくれたらあっという間に覚えたわよ。
ソープでは帰りにカードをもらいます、裏側がカレンダーになっていて、出勤日に印がしてあったりしました。
お店によりますけど。




