第14話 お試し品は乱暴に使わないでね
元娼婦と言うのは、周囲はもちろんのこと、本人も劣等感にさいなまされるので、過去を消し去りました。
パオリーナの記憶と外見を変えてからは、他の元娼婦を田舎娘に造り変えたレオポルト様、魔法は凄いわよね。
彼女達を柔らかなベッドでぐっすり眠らせ、美味しくバランスの取れた食事を摂らせ、ピラティスみたいな運動をさせたら随分血色も良くなったわ。
意外にも読み書きは出来る子が多かったので、本読みをさせたり簡単な計算の練習をさせたけど、砂が水を吸い込む様に貪欲に知識を吸い取っていったわよ。
どんな仕事でも頭の良さって大事よ。
学校の勉強が直接役に立つ機会はまずないけど、学校の勉強を熱心にやった人は、仕事でトラブルに直面しても、なんとか切り抜けるものなのよ、パニックに陥ったりしないでね。
これなら売り物になると判断したわたしは、オスヴァルトさんを通して冒険者ギルドに渡りをつけたの。
フリッカに聞いた話では初心者冒険者は基本ソロ。
一人で武器や装備品、そして回収した魔石を担がなければならないので、膂力のある男性が有利。
女性の冒険者もそれなりの数がいるけど、力が弱いから稼ぎが少ない、稼ぎが少ないから奴隷を買えない。
そんな悪循環に陥っているそうよ。
状況を打破する方法をギルド長に提案したら快諾してくれた。
◇
わたしミヤビは冒険者ギルドに向かい、初心者冒険者達にレンタル奴隷の説明会。
ギルド長のヘンドリックさんが直々に出迎えてくれたわ。
彼は商会の戦闘奴隷サン・ホセと同年代、若い頃は色々有ったらしいの。
歳はそれなりだけど、服の上からでも、鍛えられた身体が分かるわよ。
腹の出たオヤジでは、荒くれ者を束ねられないと言うことかしら。
「ようこそミヤビ嬢、楽しみに待っていましたぞ」
「ギルド長自らのお出迎え痛み入ります、さてわたくしの奴隷を借りても良いと言うお嬢様方はおりましたか?」
パオリーナ達元娼婦を迷宮の荷物持ちとして売ろうと思ったけど。
イルダの失敗を目の前で見て来たので、いきなり売るのではなく、最初はお試しのレンタル奴隷。
レンタルで稼いで奴隷を買ってね。
貸し賃は一日で銀貨一枚と収入の2割、食事は冒険者持ち、更にもし奴隷が怪我をしたりしたら治療費を払わなければならない。
そして一番大切なのは、お客は女性に限る、こっちの世界の男はバカだから、女性と一緒に迷宮に行ったら違う迷宮探索をしちゃうわよ。
こんな条件で奴隷を借りてみようなんてもの好きがいるとは思えないのだけど、ヘンドリックさんの話ではかなりの好感触。
わたしはパオリーナ達を並べる、少しでも元娼婦と言うイメージを消したいから。
全員髪を後ろで束ねた、色気の無いスタイル、服も白シャツに黒のジャケット、そして黒のパンツ。
なんとも垢抜けしない感じにしたのよ。
「本日の貸出奴隷の四名です」
野暮ったい服のあか抜けないお姉さん達を見てギルド長は思わず目を丸くした。
ギルド長、あんたも胸しか見ていないの?
後で気がついたのだけど、男って多少野暮ったくて色気の無い女性に惹かれるのよ。
就活の女子大生をイメージしてね。
「これは、奴隷を借りるのは女性に限定しましたが、正解でしたな」
「こちらとしては怪我無く帰って来て欲しいだけですよ」
「まったくの新人は除外しました、預金が金貨一枚以上の条件で絞り込みましたよ」
そう言いながらドアを開けると、そこには四人の女性冒険者達、見知った顔のフリッカが小さく手を振って来る。
ヘンドリックは迷うことなく荷物持ち奴隷を女性達に宛がう。
「フリッカはこちらのお嬢様だ、我儘を言うんじゃないぞ」
「ギルド長、わたしを誰だと思っているのですか」
そばかすのフリッカは負けず嫌いで鼻っ柱が強い女性だったわ、見た目通りね。
◇◇
太陽が西の地平に近づいた時間帯になると冒険者達が次々と帰って来る。
レンタル奴隷を借りた四名は皆意気揚々、小鼻を膨らませたフリッカがわたしに歩み寄ってきた。
「ミヤビ、ありがとう、パオリーナは最高の奴隷よ!」
「満足して頂いて、こちらも嬉しいです」
「利益の2割を渡すと言う契約だけど、色付けしておいたからね」
「ありがとうございます、パオリーナの口座に入れておきますね」
「あんな良い奴隷、今すぐ買い取りたいわ、けどお高いでしょうね」
「荷物持ち奴隷はまだいますよ、今度は違う人を試してください、誰を買うかはそれから決めて欲しいですね」
「次はいつなの?」
“次はいつなの?”四人とも同じことを訊いてきた、いっぱい稼いで商会から奴隷を買ってね。
白いシャツに黒のジャケットと黒のパンツ、リクルートスーツです。
就活中の大学生みたいなイメージを想像してください。




