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底辺職の風俗嬢は異世界に行って本気を出す  作者: miguel92
第四部

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108/108

第108話. 神竜の時代

 最終話です、風俗嬢の話だけに煩悩の数で終わります。



 王宮の周りは官庁街、その中でも一番威厳のある庁舎の会議室、見ているだけで息苦しくなりそうな、重厚なマホガニーに囲まれた部屋。

元男爵令嬢のジョルナが居並ぶ頭取たちを相手に、新法の説明をしているわ。


「 …… この様に、銀行は中央銀行の保護下におかれるわけでして、いわゆる倒産と言う事は無くなります。

 ここまで、よろしいでしょうか?」


 いかにも頭取と言った切れ者の男性が発言を求める。

「確かに、我々は中央銀行の監督下に置かれるわけだが、金融庁とやらの監査を受けなければならないのだね。

 今までも大蔵省からの監査を受けていたのに、どうして新しい省庁を作ったのか、理解に苦しむのだよ」


「ごもっともな質問です、あえて検査局を独立させたのは、監査の中立性を保つためであります。

 監査は公正中立な立場の者が行わなければなりません」


「しかし、放漫な経営をする様な銀行はさっさと淘汰するべきではないのかな、市場原理を適用させた方が、税金を使って監査をするよりも有効だと思いますが」


 ぱっと見は小娘なジョルナだが、芯の通った娘。


「皆さま、我々は大切な事をお伝えしておりませんでした、我々が銀行を倒産から守るのは、行員や経営者を守るためではありません。

 預金者を守るためです。

 監査で問題が改善されない銀行、もしくは監査に誠実でない銀行があれば、経営者には責任を取ってもらいます」


 あなた達を刑務所に入れる事も出来るのですよ、と遠まわしな恫喝。

 もはや会議室で彼女をバカにする頭取はいない。


「我々が守るのは銀行のカンバンであって、その経営者ではありません。

 確かに地方銀行は私企業ではありますが、大勢の顧客の資産を預かる身、公器と言う側面もあります。

 この事を忘れないで頂きたい」



 ジョルナの言葉を前に反論する人はいないわ、後はわたしが締めないとね。



「さて、先ほど説明があった通り、銀行を倒産させないと言うのは、預金者の保護が一番の目的ですが、もう一つの目的もあります。

 銀行間での取引の方法ですが、現在は取引が発生する毎に、手形を持った行員が行き来し、無駄な時間と手間をかけております。

 わたくしは、この様な無駄を省きたい」


 ここで、楕円形のテーブルに並んだ、参加者を見まわす。


「銀行間で取引があっても、すぐに取引を精算するのではなく、月末まで待って、全てを精算した金額のみを …… 」


 あんまり知られていないけど、銀行同士でもお金のやり取りがあるのよ。

 例えばエーベリン第一銀行がヘンドリクセン銀行に金貨50枚をわたす。

 数日後、今度はヘンドリクセン銀行がシュタイフ銀行に金貨80枚を、更に数日後シュタイフ銀行からエーベリン第一に金貨30枚を ……


 その度に取引決済をしていたわけよ、さすがに現金は動かないで、手形決済だけど。

これって無駄よね。

 そんな事をするよりも、王都周辺の銀行を全部まとめて、月末に精算して差額分だけをやり取りすれば良い、無駄がないわよね。


「 …… まずは王都とその近郊で銀行間取引を実施していきたいと思います」



 一人の頭取が口を開いた。

「なるほど、確かに便利なシステムだが、決済前に銀行が破産しては大混乱になりますね。

 そのための銀行の保護と言う認識でよろしいでしょうか?」


「その認識で、構いません」

 ヤッパリ銀行員は頭が切れるわよ、話が早くて助かるけどね。


「経済顧問殿、最初は王都近郊の銀行で決済グループを作ると言っておられましたが、ほとんどの地銀は王都に支店をもっておりますよね。

 支店決済の形を取れば、国中にこのシステムを広げられる、将来的には、その様にお考えでしょうか?」


「大変先読みをされたご意見、参考になります、ですが現在のところ、そこまで銀行間取引ネットワークを広げる事は考えておりません。

 理由といたしまして、王都の支店と地方の本店の距離が問題でして、何よりも王都と地方の取引自体が少ないです。

 それよりも、地域経済圏ごとに銀行同士で銀行間取引ネットワークを作り、地方経済の中で完結させる方向で動いております …… 」



 ○○



 異世界に来てから色々な事が起きて、リリアーナ平原で飛行船に乗って機関銃を撃っていたのなんて、遥か昔の話しの感覚よ。

 国王が国政を退き、ロレナーダ王女に生前譲位をしたわ、ヘルムフリートと言う名のバカ王子は伯爵にまで落され、カンペストレ領と言う聞いた事の無い土地の領主よ。


 もっともカンペストレ伯爵は一代限りでしょうけどね。

 彼が王位レースから脱落した理由が、子種が無いと証明された事なのよ、下級貴族の娘をとっかえひっかえしていたのに、妊娠していた娘が一人もいない。

 バカ王子がばら撒いた準王族の指輪が彼を田舎に追い出す切り札になったの。


 精力はあり余っていたのに、本来の意味で使えないなんて残念ね。

 そんな彼の被害者の女性は、わたしの商会で名前と姿を変えて活躍中よ、今では準王族の指輪は二桁よ。


 スリーローズ商会はルクレチアに任せ、ドネッセラ奴隷商会はホライナが指揮を取り、遊園地と劇場はニンファ、そしてジョルナは銀行間取引の受け皿会社の役員よ。

 そうそう、新しく商会に入ったオティーリエと言う子爵令嬢、今はエルフの里に駐在しているの。


 正式な国交ではないけど、お互いに連絡を取り合う関係にまでなったのよ。

 貨幣経済を否定する彼らだけど、こちらから送る反物は受け取るわよ、その代わりにエルフの幼女を差し出してくるけどね。


 どうも、わたし達がエルフの幼女に性的な興味があるのでは、と勘違いしているみたいだけど、ここは誤解させておいた方が得策よね。

 わたし達がエルフ幼女を侍らせているのは誰もが知っているし、遠方の情報がタイムリーに届くのと、関係があるらしいのは気が付いているでしょうけど、誰も何も言わないわ。



 そうそう、炎魔石を使った蒸気機関だけど、河川局と言う部署の浚渫船で活躍中よ。

 魔物除けで国中に川や運河を張り巡らせたこの国だけど、こう言った川って、何にも手入れをしないと、どんどんと泥が溜まっていくのよ。


 運河や河川の浚渫は領主の務めだけど、どこの領主も嫌がる仕事なの。

 それを河川局と言う役所が代行するのよ、浚渫船のポンプは蒸気機関を採用したから、作業効率は一気に跳ね上がったわ。


 新しい技術は地味で競合の無い場所から、ヒッソリ広げていくつもりなの。

 浚渫工事は無料よ、太っ腹でしょ、その代わりに河川利用権を差し出さなければならない。

 運河を使う時に払っていた通行税が免除されて、物流が効率的になったわよ。



 ○



 神経をすり減らす会議が終わり、赤いカーペットの引かれた廊下を歩いていると、オイスターホワイトの制服を着こなした近衛の近従がひざまずいて、わたしを待っていた。

「ミヤビ様、火急の件が発生致しました、今すぐ我が君のもとにおいでくださいませ」


 有無を言わせず王宮に連れていかれると、やはり赤いカーペットの引かれた廊下を歩いて、これまた重厚な会議室に。

 既にメンバーは揃っていたみたいね、参謀総長が地図を指さし説明を始めたわ。


「 …… この様に、カルトマン領より発生した魔物の大量発生ですが、ユーゲン領の南部でも認められました。

 現在の天候は好天、数日先まで雨の気配はありません」


「隣領からの応援も向かっておるし、すでに親衛軍は出発させた、そうだな?

 イエレミアーシュ」


「はい、陛下のお言葉通りでございます」

 女王の言葉に敬意をもって肯定の意を示した参謀総長。


「諸官らの迅速な対応は範とすべきものであろう、だが、今回は二か所同時に大量発生が起きた、最悪の事態も想定しなければならないぞ。

 ミヤビ顧問、何か対策は有るか?」


「恐れながら、わたくし剣も槍も持たない経済顧問であります、出来る事と言えば神所にて祈りを捧げるくらいでございます」


「それで良い、今すぐ神殿に行き、祈りの力で国体を護ってくれんかミヤビよ」


「陛下の御心のままに」

 わたしは、深く頭を下げる。


 あくまでも飛行船と言う物は存在しない、護国の神竜と言うスタンスを崩さないわたしよ。

 この世界で風俗や娯楽を広めたいのよ、行き過ぎた技術や戦争の道具は出来得る限り隠しておきたいわ。



 ○○



 国内の某所、等間隔で飛行船が並んでいる。


エルフ経由で連絡が入ると、指揮官のカタリーナが叫ぶ。

「全艇離陸!」


 風見の吹き流しの横には、赤字に黒の×印の旗、落下するように下ろされると、代わりに青地に白の旗が上がる。

 飛行船の前で直立しているのは、黄色と黒のチェックのベストの誘導員、一番艇の前の彼女が両手をダイナミックに動かすと、係留索が解除され、音もなく巨体が浮き上がる。


 キッチリ40ヤード上がると、風魔具の吸気音が響く、甲高いその音はさながら竜の咆哮。

 続いて二番艇の誘導員がダイナミックなダンスと共に艇を送り出す。

 次の三番艇も同じように ……


 飛行船部隊は離陸後に雁行の隊形を取ると、カルトマン領を目指す。






 最後までお読み頂きありがとうございました。



 異世界に新技術をもたらす、転生物の定番ですけど、電気を使わない技術で色々な物を作ってみました。

 炎魔石の蒸気機関と銅線を巻いたコイルを組み合わせれば電気が”発明”出来ますが、さすがに魔法の世界には馴染みません。

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