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3章 9話 新たな出会い

新キャラ登場です。


翌日、異端審問事件は告発者のでっち上げとして、証拠不明確となり急遽幕を閉じることとなった。当然のように俺は無罪を勝ち取り、無事闇の女神教の村に帰れることになった。

村では村人たちが戻ってきた俺を迎えてくれてちょっと感動したんだが、早く慰問を……と言われた瞬間、眩暈がした。マアソウダヨネー。

立場を偽ってまで告発をした光の女神教の偽貴族と偽司祭は罰せられることになった。当初王国を上げて罪を罰することとなったのだが、光の女神教が断罪を代行することとなった。正義,秩序を教義とする光の女神教だ、信徒が今回のようなことを起こして許せるはずなどないのだろう。死刑はすぐに実行された。

また、偽貴族と偽司祭を遣わしたとされる旧シールズ男爵領へ赴任予定だった貴族も、軽くない罪で罰せられたとのことだ。しかし、結局殺されたのは偽貴族と偽司祭の二名だけで、黒幕が表に出てくることはなかった。

光の女神教は今回の件で信徒が少し減り、代わりに闇の女神教の信徒が少し増えた。フェルメールが闇の女神教を助けたと言う噂もあってか、土の女神教の信徒もすこしだけ増えていた。


そして半年が経ち、なんと我が闇の女神教の教会には新しく修道士が入ることになった。

名はアリス、年は10歳。王都付近の衰退した貴族の家から行儀見習いとして預けられたと言う話だ。アリスをうちに預けた男性は自称伯爵家の従者で、伯爵家の親戚筋に当たるアリスをうちに送り届けるとその日のうちにすぐさま出て行ってしまった。若干薄情な気もする。

アリスは見た目はプラチナブロンドのしなやかな髪を持ち、碧眼でショートカットだ。とても際立つ外見をしているため、貴族の娘ではなく物語のお姫様と言われても不思議とは思わないほどだ。しかし本人は無口でとても大人しいため、実際のところは薄幸の美少女と言った感じである。

俺はアリスに何か怪しいものを感じ、視界に入ると真っ先に鑑定した。結果、ただの貴族の娘ではなかった。彼女はもっと……言い知れないほどの重さを秘めていた。

なのだが……。


「アリスちゃん、今日も髪の毛とかしてあげますねっ」


「(コクン)」


「アリスちゃんの髪の毛ってほんとキレイ。

 伸ばしたらもっと素敵なんだろうけど、

 短くても可愛いっ!」


アリスが教会に来てから何日目かの日。

寝ぐせが残っているアリスの髪の毛を嬉々としてといているのはリネット。年下の兄弟姉妹がいなかったこともあり、アリスが教会にやってきて真っ先に可愛がり始めた。アリスの寝ぐせを直すの日課になっている。

アリスはまだ貴族として生きてきたことが抜けず、若いこともあって(俺には言われたくないだろうが)自身のことを一人では出来なかった。だからリネットが構ってくれるのはありがたいと思っているのだろう。表情には表れないがリネットに甘えているがよくわかった。

この仲の良い二人の関係は、教会内の見る者すべての気持ちを朗らかとさせたが、リネットが真実に気づいたらどんな反応することか……そう思うとなんとも言えない気持ちになるのだった。




時は遡る。アリスが闇の女神教の教会に来る前の話だ。


「ねえルーク兄様、闇の女神教の教会ってどんなところ?」


幼いアリスは、長男であるルークに自分がこれから行く場所がどんな所かを尋ねた。

アリスを闇の女神教に預けることを決めたのはルークで、かつ段取りも全てルークが行ったことである。アリスはルークをとても信用しているため、ルークのやることに口をはさむことはなかった。


「毎日夕食で、アイスクリームなる食べ物を食べているだろう?

 あれを考案した人がいる場所さ。

 うちには伝わってきてないが、その人が考案した料理はまだまだ

 たくさんあるらしいぞ。

 食いしん坊のアリスにはぴったりの場所だろう?」


「もう、兄様ったら!」


食いしん坊と言われてアリスは恥ずかしくなり、ちょっと拗ねた。

毎日夕食の最後に出てくるアイスクリーム。アリスのお気に入りの食べ物だ。たまに1個じゃ物足りず、ルークに半分頂戴とせがむこともあった。

アイスクリームが食べれるようになったのはここ一年ほど。公爵家のパーティで突如姿を現したアイスクリームは、今ではライズ宗教国家の多くの貴族が食べている。

今までずっと好きだったパンケーキが嘘みたいに美味しく感じなくなったのもアイスクリームのせい。そんなアイスクリームを考案した人がいる場所。アリスは途端に嬉しくなってしまった。しかしアリスの顔に嬉しいと言う表情は表れない。


「私の執事がアリスを無事に闇の女神教の教会に送り届ける。

 だから、お願いだ。大人しくしておいておくれよ。

 全てが済んだら、直接迎えに行くからな」


「はい、待ってます。兄様、ご武運を……」


アリスは執事が中で待っている馬車に乗り込んだ。

馬車はいつも乗っている馬車とは違った。地面の揺れを吸収してくれず、度々お尻が痛くなった。いつもならわがままの一つも言うところだが、今回ばかりは我慢した。

この馬車はルークがアリスのために準備してくれたのだ。いつもと同じ馬車で行けば途中で襲撃されることは間違いない。だから、我慢しなくてはいけないのだ。

馬車の旅は長かった。1日,2日経ち、アリスはとても不安になった。アリスが不安げな雰囲気を出すと、ルークの執事は決まってアリスにルークの話をした。アリスが知らないルークの話だ。ルークのかっこ良いところ、面白いところ、なんでも聞かせてくれた。

そのおかげで不安になった気持ちも吹き飛び、なんとか闇の女神教の教会に到着することができた。馬車の小窓から見る闇の女神教の村は活気に溢れていた。訪れたときはちょうど夕食の時間帯で、村全体からいいようも知れない香りが漂っていた。

このにおい、なんだろう……アリスは頭の中の記憶を探した。食べ物なのは間違いない、しかしアリスが今までに食べたことがあるどんな食べ物にも似つかなった。

そして馬車が止まった。

まず執事が先に出て、闇の女神教の教会に入っていった。手に袋を持って行ったから、兄様からの頼まれ物でも渡すのかな。そんな風に思っていた。

そう時間をかけずに執事が戻ってきてアリスに馬車から降りるように言ってきた。馬車から降りて真っすぐ前を見ると、そこには自分より背の小さい男の子がいた、こっちをじっと見ている。この子は誰だろう、そう思ってじっと見ていると男の子の私を見る目が嫌そうなものに変わった。この目、私をいじめる兄様や姉様とはまた違った目だ……良い気はしない。


「では、ウィリアム司祭。アリス様のことをよろしく頼みます」


執事が男の子に向かって頭を下げた。え、じゃあ……この子が噂の闇の女神教の司祭? びっくりした。若い若いってみんな言っていたことしか覚えてなかったけど、まさか自分より若いとは思ってもみなかった。

だって司祭って言えばみんな年老いたおじさんばかりだったから。そして、同時にショックだった。この子がルーク兄様の言っていた、アイスクリームを考案した人なのか、私を見て嫌そうな顔をした人がそんな人じゃ、美味しい食べ物を作ってくれないかもしれない。そう思った。無意識に俯いていた。


「ねえ。名前、なんて言うの?

 私はリネット。

 私も一応貴族の娘なんだ。よろしくね」


頭の上の方から声がした。私にかけられてる声だと気づいた。

頭を上げてみると、さっきの男の子とは正反対にとてもキレイな笑顔の女の人がいた。男の子はまだ私を嫌そうな目で見てる。見てすぐにわかった、私に好感を抱いている顔だ。

先ほどまで暗かった気持ちが少し明るくなった。でも表情には表れない。


「教会の中、案内してあげるね。行こ」


リネットは私の手をとって、教会の中に連れて行った。

不安だけど不安じゃない。

アリスにとっての闇の女神教の第一印象はそんな感じだった。


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