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3章 7話 異端審問事件3


「まず最初に言っておくが、土の女神教の司祭より

 告発自体を問う言伝があった。

 闇の女神教司祭のウィリアム殿の素行の良さや

 宗教を超えた民への深い慈しみなども聞いている。

 だが、それと今回の審問は別に取り扱うものとする」


二回目の審問の一番最初に審問官がそう告げた。

事前に内輪で話し合い、フェルメールを用いてとりなしてもらう件だが、完全に意味をなさなくなってしまった。

やはりこの審問官は俺たちとは敵対者なのだろうか……。


「では、本日の審問についてだが、今回の当事者でもある

 光の女神教の貴族殿と司祭殿の二人に証言をしていただく」


この世界の審問は、初日は告発内容の確認。翌日から細かい内容についての審議になるようだ。

であれば、初日に俺の意見を審問官が受け入れてくれなかったのも当然かもしれない。もし受け入れてもらえるなら、今日のはずだからだ。

審問官に呼ばれ、光の女神教の貴族と司祭の当事者達がやってきた。顔を確認するが、間違いなくあの時いた二人だ。

俺は二人に確実にトラウマを植え付けてやったと思ったのだけど、どうやらあれでは足りなかったらしい。

やってきた二人を睨みつけてやると、ヒッと一歩後ろにたじろいだ。先ほどの俺の思いは間違いだ。トラウマはちゃんと植え付けられていた。

もしかしたらこの世界にトラウマと言う言葉がなく、トラウマが呪いとみられているのかもしれない。それだとまずい。俺はにらみつけるのをやめて、二人が来る前の態度をとった。逆にそこまでトラウマを持った状態でよくここに来れたなと思いたい。

睨みつけられなくなると、二人はホッとして証言台の前に着いた。


「わ、我々は光の女神教の者だ。

 先日、挨拶がてら闇の女神教の教会を訪れた。

 その際そこにいるウィリアム司祭が、わしらに

 フォークを突きつけ、呪いをかけたと申したのだ。

 その瞬間から、わしらは体の震えが止まらず、

 今もこうして腕が震えている……。

 本来であれば、光の女神教の司教様に面会し、

 すぐに呪いの解呪をしてもらうのだが、邪教の存在を

 許すことなどできず、正義のために告発した次第です」


(嘘つけ……本当は司教に頼んだが解呪などできなかったんだろ)


だって、実際には呪いになんてかかっていないのだから。俺はそう思ったが、これを口に出すことはできず、黙って成り行きを見守る。

貴族と司祭は証言しながらも腕だけでなく体を震わせていた。そして彼らの言い分には表向きには全くウソがない。あらかじめ、真理の目に引っかからないように作成された文章を読み上げたようにしか思えないのだ。

この文章を彼らが書いたとは思えない。今回の黒幕は別にいて――おそらく彼らの上役の司教か大貴族が、彼らの話を聞いた上でこの告発文章を作成し、彼らに言わせている。

審問官は二人の証言の後に数秒真理の目を見ていたが、全く反応していないことを確認すると二人に着席を告げた。

二人は少し離れて用意された席に着席すると、両腕で体を抱きしめるようにして座った。


「証言内容にも嘘偽りはないようだ」


審問官が手元に準備された書類に目を通しながら言う。告発された時の書類なのだろう。

とりあえず、今とても分が悪い。と言うかこの制度のよくないところは、告発側が有利すぎる。


「闇の女神教、ウィリアム司祭。彼らの言い分に対し、

 反対意見などあるかね?」


本当はもっと色々な証拠を集めてから出したかったのだけど、ここまできてしまってはこれ以上不利な状況に持っていかれては困る。

俺が持っていた唯一のカードを切ることにする。


「では。光の女神教のお二人に聞きますが、

 あなたたちは本当に光の女神教の信徒の貴族殿と、

 光の女神教の司祭殿で間違いないのですよね?」


俺の発言に対し光の女神教の二人はビクっと震えた。審問官は俺の発言を不思議にも思わなかったのか、態度が全く変わらない。

なぜ俺がこのようなことを言ったのか、これにはしっかりとした理由があった。

実はこいつらが闇の女神教の教会に訪れた時も、自分たちが貴族であることと光の女神教の司祭であることを一度も言っていないのだ。

であるのに、審問官は明確に光の女神教の貴族と司祭と発言している。告発の書類にはそう書かれているのだろう。しかし、自分たちが喋るときはそのことを伏せている。これは、真理の目をかいくぐるためとしか思えなかったのだ。

真理の目は、証言者である光の女神教の自称貴族と自称司祭の二人、そして俺の発言の時にしか使われていない。なので、審問官が喋る言葉の間違いを見つけられなかったのだ。


「何を言っているのだ、ウィリアム司祭。

 当然のことであろう?

 光の女神教の貴族殿と司祭殿で間違いないのであるよな?」


しかし、審問官は気づいてない振りなのかそれとも本当に気づいていないのかわからないが、俺がさも間違っていると言う言い方をし、確認のために二人に話を振る。


「な、なにをおっしゃる……。

 我々が嘘をつくなどありえないでしょう……」


当然この発言には嘘はない。と言うか、何が嘘に当たるかわからないような言い方をしている。

よって、


「"はい"か"いいえ"で答えてもらえるかね?

 貴殿らは、光の女神教の貴族殿と司祭殿で間違いないな?」


審問官が、問いに対して嘘かどうかはっきりわかるような答え方をしろと言いなおす。

これには光の女神教の偽貴族と偽司祭は揃って口を閉ざした。言うことはできないと言うことは"いいえ"であるのと同然だと思うのだが、今回のやり取りを書に記している者もいるから、どうしても口に出させたいのだろうと思う。

そのまま沈黙が続いたが、かなり小さな声でいいえと言う声が聞こえた。


「と言うことです。

 私は告発され、ここにやってきました。

 しかし、告発の当事者である者が実際に貴族殿と司祭殿では

 ないと言うことは、そもそも告発自体が不正に行われているのと

 同義ではないでしょうか?

 また、実際に私は誓って呪いなどかけておりません。」


ちょうどいい機会なので、"呪いをかけた"と言う事実はないと言うことを心理の目に判断してもらう。当然真理の目は反応せず、俺の言うことが正しいと証明してくれた。


「ふむ。

 では、これから告発内容自体についての会議を実施する。

 よって、今回はこれで閉会する。

 また呼び出すこともあるであろうから、自領には戻らず

 もう1日はこの街にいてもらいたい」


無事、この日の審議を終えることができた。


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