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3章 1話 聖騎士来訪

3章突入しました。

今回から新キャラが登場します。


俺は閉じた手紙をじっと見つめていた。


「光の女神教の、聖騎士……ねえ……」


隠し書庫の宗教の本にも書いてあったが、この世には聖騎士なんて言う職業は存在しない。

しかし、光の女神教の教皇の印付きで聖騎士を名乗って手紙を送って来ているわけだから、光の女神教専用の職位なのだろう。

確か光の女神教は、正義とか秩序ってのが教義だったはず。聖とか光とか正義とか、全く厨二病みたいなやつらだ。

しかもその上、闇の女神教に悪さを働いてた疑惑まであるのだから、本当に秩序が教義なんかと思ってしまう。

そんな光の女神教から派遣されて来るのは一体どんなやつだろうか、そう思うだけで気持ちが滅入った。


「ウィリアム司祭、例の方が尋ねてまいりました」


後方のドアが開く音がして、修道士の一人から声を掛けられる。

さあ……憂鬱な時間の始まりだ。


「通してくれ……」


あまりにもやる気がない俺の返事を聞いて、修道士もため息をつきながらわかりました。と言って聖騎士を連れに出て行った。

1分ほどして、今度は俺の前側に位置しているドアがノックされる。どうぞ、と声をかけると修道士を先頭に鎧を着た女性が入ってきた。

羽の生えた女性が彫刻された鎧を着ていた、光の女神を模した絵なのだろう。ダークブロンドの髪をカチューシャでアップにして、後ろで紐で縛って束ねている。先ほどまで被っていたであろう兜を左手に持っているあたり、右利きなんだろう。


「貴殿がウィリアム司祭か。

 私は光の女神教の聖騎士、シェリー・ダンフォードだ。

 光の女神教の任務により、貴殿と闇の女神教を監視するために参った。

 今日より当分の間、闇の女神教の教会に滞在させてもらうことになった。

 よろしく頼む」


目を瞑って腰を45度近くまで折って礼をしてきた。

言葉遣いは、微妙に俺を侮っているのかのような感じだが、礼儀はしっかりしていてそこには好感を持てた。

しかし……、


「7歳の司祭と聞いていたが、本当に子供なのだな」


目を細めて、軽く鼻を鳴らした。

もう何人目かになる俺を子供と侮るやつだ。聞き慣れた言葉だが、光の女神教の看板を背負ってきた者の態度ではないとイラっと来たので、こちらも同様の態度で接することにした。


「光の女神教の"神殿騎士"シェリー殿、よくぞ参られました。

 何もないところですが、貴殿が心休まるよう努めましょう。

 ゆっくりして行って下さい」


"神殿騎士"の部分でシェリーの顔が引き攣った。武術には自信があるようだが、どうやら言葉の攻撃には耐性がないらしい。


「ウィリアム司祭……私の職位は"聖騎士"と言ってもらえぬか?」


先ほど自然体だった手が丸められて、強く握り込んでいる。引き攣った顔もそうだが、完全に怒りを隠せていなかった。

神殿騎士のワードは有効だったようなので、そのまま続ける。


「"神殿騎士"シェリー殿。

 申し訳ないが闇の女神教には"聖騎士"と言う職位は存在しないのです。

 良ければ聖騎士とはいったい何なのか教えて頂けると幸いですね」


今の人生で一度も出したことのないにっこりとした笑顔で更にシェリーを貶める。シェリーの後ろでドアの前に立っている修道士が俺のそんな笑顔を見てギョっとしていた。

人の笑顔を見て驚くなんて悪いやつだ、後で修道士長に伝えておこう。


「ほ、ほう……。や、闇の女神教以外は知っていることなのだが、

 闇の女神教では光の女神教のことを、ま、全くご存じないと言うわけか?」


更に手を握り込んだことでシェリーが着けている革のグローブが擦れる音が聞こえた。

今一歩と言うところだろうか。俺は全く悪びれもせずに、


「他の女神教でも使われない職位を知っているのが当然と言うのは、

 いささか傲慢ではないでしょうか。

 それに、"神殿騎士"殿もご存じだと思われますが、我が闇の女神教は

 心ない盗賊や犯罪者に領内を荒らされたり、仲間を襲われたりして、

 つい最近まで布教も行えぬほど貧困に苦しんでいました。

 他の村,町,ましては国内で最も遠く離れた光の女神教の情報を

 仕入れるなどとてもとても……」


昔の悲しい出来事を思い出して目頭が熱くなったかのように、片手でまぶたを押さえる演技をする。鼻をすするのも忘れない。

ものすごくわざとらしいのは自分でもわかっているが、このようなことをするなんて芸達者になったもんだ。


「言わせておけば……よかろう!

 と く べ つ に! 聖騎士とは何たるかを教えてしんぜよう!」


シェリーは椅子から立ち上がり、聖騎士とは何たるかをそれはもう熱く語った。

途中、シェリー自身の話も多かったけど、俺はひたすら相槌を打って終始笑顔で聞いた。

あまりにわざとらしかったのか修道士が笑いをこらえてピクピクしているのが目に入ったが、気にしない。

話し終えるとシェリーは息切れしたようで、ハァハァと息を強く吐いていた。


「わかったか!」


ダンと拳をテーブルに叩きつけられる。叩きつけられた拳を一度見て、その後シェリーの顔を見直す。


「わかりました、"神殿騎士"シェリー殿」


一瞬だけ時が止まった。


「ふざけるな! なぜまだ"神殿騎士"と呼ぶ!

 今しがた、わかったと言っただろう!」


シェリーの怒りは頂点に達したようで、とうとう口調を整えることもできなくなっていた。


「では、シェリー殿。

 私のことは今後天子ウィリアムとお呼び頂けますか?

 天子とは、つまり神の子。私は神の子としてこの世に

 遣わされた者と言う意味です」


両手を左右に広げて、芝居掛かった言い方をしてみた。


「なぜそのような呼び方をせねばならぬ。

 貴様はただの司祭であろうが!」


「いえいえ、シェリー殿。

 貴殿が光の女神教内でしか呼ばれてない職位で呼べと仰ったのです。

 我が闇の女神教でしか呼ばれていない、私の職位で呼んでもらうのも

 当然のことでしょう?」


理性が働かないため、あまりに俺の誘導に引っかかってくれるのでとてもやりやすい。


「今貴様が作った職位であろう!

 おい、そこの修道士! あいつはずっと天子と呼ばれているのか!」


すごい剣幕でシェリーが修道士に声をかける。

修道士はシェリーの気迫に押され、いいえそのようなことは一度も……と言ってしまうが、俺はそれも見込んでいた。


「それ見たことか! 今決めたことを押し付けるな!」


「異なことをおっしゃる。

 聖騎士と言う職位はいったいどなたが作ったものでしょう。

 光の女神教の信徒全員で決めて作ったものですか?

 違うでしょう、おそらく、教皇と枢機卿の方々で決められたものだ。

 そして当時、聖騎士と言う職位は作ってすぐ職位をどなたかに与えられた。

 我が闇の女神教でも同じです。

 天子の職位は、今私が作りました。我が女神教には助祭以上の役が

 現在私しかおりません。

 私が作った職位を私が今使ってなんの問題が?

 後、勘違いしてもらっては困りますが私はただの司祭ではありませんよ?」


俺に完全に言い返され、返す言葉をなくしてしまったシェリーは言葉に詰まってしまっている。

しかし怒りは収まらず拳を強くテーブルに押し付けていて、このままだと新調したばかりのテーブルが壊れてしまいそうだった。


「長話で疲れたことでしょう。すぐに部屋への案内をさせますので、

 ここでしばらくお待ち下さい。

 私はまだ仕事がありますのでここで失礼します」


茶番も終わったので椅子から立ち上がり、軽く会釈し後方のドアを開く。


「そうそう、言い忘れました。

 もし訓練をなさるようでしたら、庭をお使いください。

 闇の女神教の信徒達の中にも、庭で訓練する者がおりますから」


今日、俺にやり込められた彼女のストレス発散の方向を示してやる。ただし、本当にストレス発散になるかはわからないが。

バタンと音を立ててドアを閉めると、


「天子ウィリアム、光の女神教の"神殿騎士"と随分遣りあったそうじゃないか」


声を掛けてきたのはノエリアだった。こいつはこう言った言葉をかけてくることがある。

今日の護衛はノエリアの当番のようだ。部屋には入らずにドアの前で待機していたようで、中の話は筒抜けだったのだろう。敢えて"神殿騎士"と言う言葉を使ってきた。

しかし、冗談で言った天子と言う職位を早速言われるとは思ってもいなかった。思い返せば、聖騎士と言う職位にこだわったシェリーが俺のことを天子と呼ぶようになることも大いにあり得る。失敗したな、と少し悔しくなった。

遣りあってなどいない、と伝えるとクスクスと笑い出した。


「そうだな、遣りあってはいなかったな。

 年若い乙女が言葉の槌でひたすら殴られていただけだった」


ノエリアは俺のことを7歳の子供だとは思っていない。だから、こういう言い方もよくしてくる。

また、ダークエルフの里が光の女神教に襲われたと考えている俺たちからしたら、彼女はある意味憎き敵である。

その憎き敵が、たった7歳の子供にボロボロに言い負かされ、あまりの悔しさに大声をあげたり地団駄踏んでいる様がとても気分が良かったのだろう。口調は明るかった。

しかし、俺は今7歳でも経過年数だけなら30を超える立派な大人である。年若い乙女を言葉の暴力でいたぶったような言い方をされるのは嬉しくはないのでスルーした。

自身の部屋に向かって移動すると、ああ、そうそうと言を付け足してきた。


「ニルダ姉さんにも伝えておきますね。訓練相手になってやってくれと」


俺が最後にシェリーに伝えた意味を正確に理解していたようで、ノエリアは悪そうな顔でそう言った。


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