2章 12話 収穫祭
あれから二か月経った。
教会にはリネットの母親が来て、シールズ家にいるよりみんなの役に立てることを大いに喜んでくれていた。家事をリネットやほかのシスターに教わりながら精力的に活動していた。
行商人の父親も来てくれた。行商人の言い分をそのまま鵜呑みにしていたので、どんなやつが来るのかと心配していたのだけど、本人は至って普通の人間だった。行商人への態度は、ただ暇を持て余していただけと言うことだった。
そして、教会での学校が始まった。初代校長には修道士長が就任した。最初俺がやると提案したのだが、俺には校長などと言う小さい枠組みには収まらないことをやって欲しいと言うことだったので、渋々受け入れた。
今年の生徒は全部で30人。各授業の割合は、マナー,礼節が8人。読み書き,計算が7人。取引が6人。剣術が5人,弓術が4人だ。
初年度としてはまあまあの人数ではないかと思う。生徒の内約半数は村の農家の子供だったので、家からの通いとなっている。もう半分は、見習いや新人の冒険者であったり、取引を教わるために隣の村からきた商人の関係者だったりしているので、教会の大部屋に泊まり込みだ。
授業は、流石に初日は各教師も緊張していて上手くいかなかったこともあったが、2・3日もすれば自信もついてしっかりとした授業が行えていた。
特にノエリア・ニルダの二人は新人,初心者だけでなく、初級者にも教えることになっていて、人に物を教えることが斬新だったのかやる気も十分だった。
二ヵ月目には、混沌の実の大収穫の日が訪れた。
闇の女神の村では皆ほぼ同時に混沌の実を植えていたため、収穫の日も被ったのだ。せっかくなので混沌の実の収穫日に祭りをやろうと言う話になり、収穫祭にまで発展した。
村人の中から何人かが選ばれ、俺とリネット,そしてその村人たちで収穫祭の実行委員会を設立した。
収穫祭ではイベントをやることになったので、教会からは2つのイベントを提案した。
1つは、教会での授業の1日解放。どんな授業をやっているのか、授業はどんな風なのかが全ての人にわかるようにする。これを見てもらうことで、来年度の生徒を増やそうと言う企みも入っている。
もう1つは武術の授業を受けている者による武術大会だ。新人,初心者,初級者を合わせると各10人ずつだ。
剣,弓共に大会はトーナメントによる勝ち上がり式で、剣の大会は木剣による直接対決となる。弓の大会は10本の矢を用いて動く的に射かけ、最も多く当てた方が勝ちと言うルールだ。
冒険者ギルドからの依頼料で銀貨が少し入ってきていたので、それぞれの優勝者に賞金が出ることを告げると皆大喜びして参加すると言っていた。
とは言っても、1ヵ月しか訓練できていない者が集まった大会なので大した腕前ではないと思うが、来年の収穫祭の時には少しは面白い見世物になると思う。
提案したイベントは、収穫祭委員会として集まった村人に了承され無事行われることになった。
当日村全体が仕事休みになり、まず午前中に授業の解放が行われた。
各教師役のメンバーは、誰か見られての授業は初だったのでいつもより緊張していた。授業が終わると、シスター達が見学にきた人々にどうだったか感想を聞いて回ると、何人かは何を話しているかわからないと言った風だったが、授業を見ることが有意義に感じられていた人も多かったらしく、来年子供を学校に入れたいと言ってくれてる人までいた。
授業の解放は成功と言えた。
武術大会は、剣,弓共にまだ子供のお遊戯と言った程度だったが、そこまで上手くない武術を見ても、お祭りと言うことで参加した者は皆笑ってくれていた。
最後に、各農家から少しずつ集めた混沌の実を教会の鍋を使ってゆで上げる。もちろん皮は剥いて芽は取り除いてある。
茹でた混沌の実は、そのまま食べるものと更に煮込んでスープ状にするのと2種類に分け、参加者に振舞った。
豪華な料理ではなかったが、闇の女神の祝福を受けた食材の料理が振舞われたことで、信徒たちは大いに喜んでいた。
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