2章 11話 模擬戦2
合図と同時に支部長が駆ける。ニルダは受けに回るようで、動かずに正眼に構えている。
支部長が勢いそのままに横に剣を振るうと、ニルダは前に出していた左足を一歩分後ろに下げると同時に構えを上段に変更し、振るわれた剣を最低限の動きで躱してから返す太刀で手を叩き剣を落させた。
その間数秒。とても短い時間だが多くの情報がそこに含まれている。
支部長はどうして自身が負けたかまでしっかり気づいているようだったが、審判役をしていた者は結果だけしかわからない状況のようで、支部長が一瞬で負けたことに驚いて勝負の判断を下せないでいた。
あまりにも判定が遅かったので、少し前に出てニルダを指さして勝者宣言を促すと、
「え……あっ……勝者、ダークエルフ!」
今気づきました! みたいな顔してようやく宣言をしたので、こいつ本当に冒険者ギルドの職員なのかと睨んでいると、申し訳なく思ったのか下を向いていた。
「お見事……」
ニルダに叩かれた右手を抑えながら立ち上がる。ギフトは使わなかったが、木剣で力強く叩かれ骨が折れていると思えた。
近づいて手に向けてヒールをかけてやると、右手の甲の腫れが収まった。骨折も治っていることだろう。
もう何度目かの光景かわからないが、俺のヒールを見て支部長や他のギルド職員も驚いていた。俺はこういう反応をする人が多いことをわかっているから気にもならなかった。そう言えば、冒険者やその関連の職員にヒールをしたことはなかったな。
「いや、参りました。
まさかこれほど腕の差があるとは。
約束通り、冒険者ギルドは今後新人の教育について、
教会の武術の授業に任せようと思います。
また、初心者,初級者の教育についても依頼を
出させて頂きます」
足を揃えてこちらに深く礼をしてくれる。
潔い、改めてこの支部長は素晴らしい人材だと思っているところに、
「支部長! 何してるんですか。
今回負けたのは偶然ですって。相手が運よく引いた
ところに剣を振ってしまっただけじゃないですか!
次やったら、先に支部長の剣が当たってますよ。
もう2回やれば支部長の2連勝です。
そんな約束する必要ありません!」
こういうやつ、いるよな……とある意味ホっとした気もする。すんなりは行かないものだ。
「やめんか!
お前はこの方の技量を理解できなかったのか!
わしなんか遠く及ばんわ!」
礼儀を失し、あまつさえニルダの技量さえ疑った職員に対し、支部長の顔がクワッと般若のように変わり、治ったばかりの右手のげんこつでギルド職員らしき人物の頭を殴った。
ギルド職員は頭を殴られた衝撃で顔から地面に倒れ、頭にはでかいたんこぶができていた。
(あれ……本当にニルダのほうが強いの、これ……)
そう思えてならない力強さだった。
もしかすると、ニルダがまだ力を出し切っていないこともこの支部長はわかっていたのかもしれない。ギフトとは気づかないだろうが。
ともかく、ニルダの圧倒的強さで模擬戦を勝利し、教会としても利益を手に入れられることになったので、ここぞとばかりニルダを褒め散らかすと顔を真っ赤にして硬直していた。




