1章 2話 乳児期
本日の投稿はこれで終わりです。
なんだか随分長く寝ていたような気がする。
頭は覚醒したが目を開けずに体を動かそうとする。長く寝ていたせいで体がだるいのかうまく動かせない。
こんなにだるいと言うことは、寝すぎたのか。昨日は何時に寝たんだったか。その前に今日は休みだっけ。こんなに長く寝ていて良いのか?
今日が何曜日か、今何時かを確認するために起きなければならない。そう思い、目を開けると見えた天井はいつも見てる1Kのものではなかった。
ここはどこだ?それにしても、この天井は随分と古い仕立てだな。見たことがないくらい古いしそれにみすぼらしい。一体どんな部屋なんだろう。
部屋を見渡すために起き上がろうとするが、体を起き上がらせることができない。一体俺の体はどうしてしまったんだ。
仕方がないので、首だけでも横に向けようともがいた。
「あら、ウィル。
起きたのね。今ご飯の支度をするから、
もうちょっと待っててね」
近くで若い女性と思わしき声がした。ウィルと言うのは誰だろう。同じ部屋に寝ている別の人物の名前だろうか。
と言うことは、ここは病院の大部屋か?今の自分の状態の確認もできないので、女性に話しかけることにした。
「だぁ(誰だ?)」
ちゃんと発音できない。もしかして、喉もおかしくなってしまったのか。
「もしかしてご飯じゃなくておしっこかな?
今行くから待ってね」
女性らしき足音がだんだん俺のほうに近づいてきた。
そして、視界に入ったのは俺なんかよりよっぽど大きい巨人のような女の子だった。
巨人だが、あどけない顔を見る限りまだ10歳を過ぎたくらいに見える。
巨人の女性はなんとベッドに乗り出してきて俺を掴んで持ち上げた。
「あうぁぁ(何をするんだ!)」
俺は抱き上げられた体をひねったりしてなんとか離れようと試みたが、巨人の力がとても強く離れることができない。
「もうっ、今日は元気ねー。こんなに暴れちゃって。
ご飯食べたらもっと構ってあげるから、
もう少し大人しくベッドで待っててね」
巨人は俺をベッドに戻しどこかに行ってしまった。相変わらず体が上手く動かせないため、どこに行ったか確認をすることができない。
「だう!だうだう!(俺は赤ん坊じゃないぞ!)」
上手く喋れない声でなんとか反抗の声をあげるが、相手は俺を取り合わなかった。
その後、10分に亘って体を動かそうとするが体が全く動かない。そうこうしている間に、巨人の女性が再度やってきた。
巨人の女性は俺を優しく抱きかかえ、スプーンで掬ったものを俺の口に持ってきた。
「はい、あーん。
美味しいですかーって……美味しいわけないか。
ごめんね、ほんとはもっと美味しくて栄養のあるものを
食べさせてあげたいんだけどね……」
完全に閉まらず少し開いたままになっている口にスプーンをねじこまれた。
スプーンがざらざらする、木のスプーンか?
それにしても、食べ物があまり美味しくない。と言うか味を感じにくい。
ここまできて、少しわかったことがあった。
この巨人の女性は、ほとんど体を動かせない俺を介護してくれているようだ。
美味しいものを食べさせてあげられない、と言う言葉を発しながら俯いてる姿を見てこの女性がとても優しくもあることがわかる。
巨人の女性は俯くのをやめると、何度も俺にスプーンですくったものを食べさせてきた。
体を動かせないのは、栄養が足りないせいかもしれない。そう思って女性に従い、そのまま食べられるだけ食べた。
食事も終わったようで、女性が俺をベッドに戻して食器を片付けに行った。
少し経ち、またもや女性が俺を抱きかかえた。
「さぁ、お待たせ。
遊びましょうね」
俺の手や足を持って動かす。リハビリの一環だろうか、しかし遊びましょうとはいただけない。
手や足を動かしてくれたおかげで、はずみで自分の手や足が視界に入った。見えた手足は俺のものとは思えなかった。とても小さかった。
あれ?俺の手足がこんなに小さい。試しにぐっぱと手を開いて閉じてとしてみるが、動いている。
この手は間違いなく俺のものだ。とすれば、小さい足もやはり俺のもので間違いない。
あれ……もしかして俺……。
「だうぅぅぅ(俺、赤ん坊じゃないか!)」
ショックだった。
体を動かしたからか、赤ん坊であるこの体は睡眠を欲していた。
動かそうとする体は鈍くなり、目も半開きを我慢するので精一杯だ。
「ご飯食べたから、眠くなったのかな?
しょうがないわね。ゆっくりお眠り」
俺の姿を見て眠いのだと理解した女性によりベッドに戻されると、急激に眠気が襲ってきた。
意識が薄れていくのと同時に全てを思い出した。俺、闇の女神に転生させられたんだ。
赤ん坊になってしまったんだ。




