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1章 18話 幼児期14

面白いかどうかは別として、今回の話は筆が走ったと思います。

すらすら書けました、本当に。


ダークエルフの名前は、ノエリア・サラサール。

ダークエルフの里であるサラサールに住んでいた双子の姉妹の妹の方らしい。

ギフト持ちとして里では最強の名を欲しいままにしていたらしいが、ある日里は襲撃を受け重装甲の鎧の敵に二人はしてやられてしまった。

姉は目に毒矢で傷を受け、失明してしまいギフトも失った。

その後、ひたすら森の奥に逃げ続け、追手が来ないと感じてからは森の中でずっと暮らしていたらしい。

数年経ち、頃合いを見計らって里に戻ったが里は廃墟と化していて、里に戻ってくるかもしれない同族を今日まで待ち続けていたようだ。

とても悲惨な話だった。慰める言葉が見当たらない。


先ほどノエリアが助けを求めていたのは、きっと姉の傷のことだろう。

闇の教会を頼ろうにも助祭,司祭がいなかったからどうしようもなかったのだと思う。それが、途中の怒りを露わにした瞬間なのだと言える。

だが彼女は怒りの矛先は、本当は闇の女神教でも、光の女神教でもなく、里を守れなかった自分自身に向けられていたのかもしれない。俺にはそう思えた。


「助祭様。お願いします。

 姉を……姉さんの傷を……

 治してください」


話し終えるとノエリアは、俺に向けて両手を強く組み涙を流して懇願していた。

もちろん俺は受ける気でいた。ギフト持ちのダークエルフの双子の姉妹。はっきり言って最強の護衛だ。まだ強くなる要素があれば、なおのこといい。


「ウィリアムでいい。

 助祭だとこれから認めさせるから」


俺がそう言うと、ノエリアは目を閉じていっそう涙を流した。


ノエリアが落ち着くと、まず冒険者に向かって謝罪していた。一人、冒険者を害してしまったからだ。

だが俺がヒールで癒したことで傷の痕が全くなくなっていたこともあり、冒険者達はノエリアを快く許してくれた。


ノエリアの姉を刺激しないため、最低限の人数で移動することになった。

冒険者達とシスター一人にはこの場にいてもらい、俺,リネット,ノエリアの三人でノエリアの姉の元に向かう。

向かった先は、里から少しだけ過ぎたところにある川のほとりだった。ノエリアの姉であるニルダはそこで剣の素振りをしていた。


「姉さんは、片目とギフトを失ってから、

 ああやって毎日素振りを続けているんだ。

 でも、昔の強かった頃には及ばない……。

 きっとあの頃が忘れられないんだ」


ニルダの元に向かうまでにノエリアが話をしてくれた。

最初に会った時、泣いてたいた時、そして今で口調が違うのだが、きっと今のが素なのだと思う。

少しずつ近づいて行くと、ニルダは俺たちの気配に気付いたようでこちらを振り向いた。そして、先頭を歩いているノエリアに気付く。


「ノエリア……その人たちは?」


ニルダは右目を頭ごと包帯を巻いていた。双子だから、包帯がなければノエリアに似てとても美しい髪の毛と目がそこにあるに違いない。


「闇の女神教の助祭であるウィリアム殿よ」


ノエリアに紹介されて俺は前に出る。


「すぐその傷を治す。こっちに」


近づいて行く俺に対し、ニルダは警戒を解ききれていない様子で、訝し気な目をしていた。


「そんな……子供が……

 でもノエリアが私に嘘つくはずないし……」


大丈夫だから、私を信じて。と言うノエリアを見ても未だ半信半疑の様子だったが、俺が近寄ることを了解してくれたようだった。

ニルダの真横について、座り、頭に巻いた包帯を解くように指示すると、ニルダはノエリアの顔を見た後、しぶしぶと言った表情で包帯を解き始めた。

ニルダに近寄った時は、薬草の匂いがした。しかも、結構強めだ。薬草を香水代わりに使うような文化がダークエルフにあるのか……?と言う自問をするが、ノエリアからは薬草の香りがしないため、それは間違っていることがすぐわかる。

包帯が徐々に取れていくにつれて、包帯が汚れているのがわかった。ノエリアの話だと、


「姉さんの顔ね、毒のせいで肉が腐って……

 進行を防ぐためと、匂いを消すために、

 常に薬草を塗っていたの……」


横にいるノエリアが悲しそうに言う。

実際、包帯が取れて来るとすごい腐臭がした。そして腐った肉は包帯についているようで、包帯がすこしベトついている。

包帯を全て取り終えると、そこにはゾンビも真っ青と言うような顔があった。左目、鼻、口を残す左半分は素顔のままなのだが、残り右半分は完全に肉は爛れ、骨も少し見えている。

ノエリアの反対側で見ていたリネットは衝撃のあまり口からが言葉を出せずにいた。

俺はニルダの手を握ると川辺に連れて行った。


「水に映る自分の顔だけを見てて」


そう言ってニルダに川に乗り出すような体勢をさせ、頭に両手を掲げて魔法を唱える準備をする。

準備をしている風に見せているのは、鑑定をするためだ。

鑑定をした結果、ニルダは腐肉病と言う病気にかかっていることがわかった。これでは、ヒールで治すだけではいけない。

まずクリーンを唱え、ニルダから病気を取り除いた。改めて鑑定したところ、状態は普通になっていたから間違いなく成功していた。ただ、水面に映って見えるニルダの顔はまだ肉が腐ってえぐれたままだ。

俺はヒールを唱える前に、深く深呼吸した。俺のヒールで本当にこんなひどい怪我が治せるのか、そういう不安があった。だから、いつもより強く強く、少しでもMPを多く、そういう気持ちを込めてヒールを唱えた。俺が唱えたヒールはニルダの頭右半分を覆うと、腐った肉とえぐれた部分に吸い込まれていく。そして、吸い込まれていくと同時に肉が再生していくのが水面に映った。

ヒールを唱え終えると、ニルダは顔を上げることなく川の水で何度も何度も、自身の顔を洗った。

洗っては水面に映る顔を見て、洗っては見て、終わりがないように繰り返した。

そして急に立ち上がると、ノエリアの元に向かった。


「ノエリア、ただいま。

 実はね、ギフト……今戻ったの。

 片目を失ってからずっとなくしてたのに、

 とても不思議ね」


はにかむように笑う姉を見て、ノエリアはまたも涙が抑えられないようだった。


「姉さん……お帰りなさい……

 長かった……長かったよ……」


ノエリアは自身と瓜二つの顔をした、本当の姉と感動の再会をしていた。

ノエリアがニルダに抱き着いて、嗚咽のように泣く声が聞こえたので、俺はその様子を見てほっといてやろうと思い、ただ流れる川を見ていた。




ひたすら泣いて、泣き終わって、そして涙で腫れた目をしたままノエリアがリネットに話しかけていた。


「なあ、お前。

 さっきは冒険者達がいたから言えなかったが、

 ウィリアム助祭のヒールとクリーン、あれは

 助祭の魔法としてはありえないほど強力だぞ

 司祭か、司教並みだ」


ヒールで癒された冒険者の傷痕を見て、ニルダの傷を癒したところを見て、思ってた衝撃の事実をリネットに叩きつけたつもりのノエリアだったが、リネットはそれを聞いても不思議とさえ思っていないようだった。


「私にはリネットって名前があるわ。

 ウィルく……助祭様は、特別なの。

 闇の女神と同じ目と髪を持って生まれた子なのよ。

 それくらいできて当たり前じゃない」


我がごとのように腕を組んでふんぞり返っていた。

教会の修道士たちにもリネットはこのことを確信をもってよく言うのだが、言ってることは自体は根拠がない。鑑定も使えないから、使徒であることを知ることもできないからだ。

だが、ダークエルフの双子はリネットの言葉を信じた。闇の女神の奇跡を目にしたからだろう。


「そうだな。

 私もそう思うよ」


「私もよ」


三人はとても笑顔だった。


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