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序章

新しい作品を投稿しました。

つい最近思いついたストーリーで、個人的にはかなり気に入ってるものです。

皆さんに喜んでもらえたらと思っています。


すいません、投稿した後すぐに修正しました。

理由は、間違って序章と1章の1話を投稿したからです。

直しましたので今後読む方には問題ありません。


「まあ、こんなところに赤ちゃんが」


夜前の見回りに訪れた見習いのシスターが、教会の裏口の扉の前で赤ん坊を見つけた。

赤ん坊が包まれている布はお世辞にも綺麗とは言えない。生まれて間もないのだろう、泣くこともせずにすやすやと眠っている。

見習いのシスターは布ごと抱き込むようにして赤ん坊を持ち上げる。頭には髪の毛が生えており漆黒の色をしていた。更に顔を覗き込むと、赤ん坊がまだ見えていないだろう目を開けたときに黒い瞳が見えた。


「黒い髪の毛に黒い瞳。

 まるでうちの教会のために捨てられたような子ね」


見習いシスターが住んでいるのは闇の女神を崇める宗教の教会兼修道院だ。教会にある闇の女神像は黒髪黒目をしておりその姿が思い出された。この赤ん坊は闇の女神の生き写しか申し子かとさえ思えた。

この赤ん坊を置いた者がまだいるかと思い辺りを見回してみたが、暗くなってきたこともあって誰の姿も見かけられない。この赤ん坊は捨てられてしまったと解釈するのにさほど時間は必要なかった。

赤ん坊をこのまま置いていくわけにはいかず、教会で育てることを修道士長に申し入れるため見習いシスターは扉を開けて赤ん坊を教会に招き入れるのだった。

見習いシスターが住む闇の女神の教会はとても寂れていた。扉は乾燥しきって角がささくれている。風化した壁はそのままにされている。

昔はこの世界で二番目に信徒の多い宗教で、美しかった教会も今は見る目もない。

今はある男爵家とその男爵家が治める領の民だけが信徒になってしまうほど落ちぶれていたのだった。

この赤ん坊がわざわざそんな闇の女神の教会に捨てられていたことには実は理由があった。




時は現代。


「お願いしますぅ。助けてくださぃ~」


朝、ある男が出勤のため玄関のドアを開けると、薄汚れたドレスを着た美女が土下座していた。

純白のドレス・漆黒の髪は少し埃をかぶって両方とも灰色に見えるほどだった。

ドレスから出ている腕や足は少し栄養が足りていないようで、肌には艶がなく骨ばって見えた。

男はそんな状況を理解できず右手がドアノブを掴んだまま固まっていた。ドアの奥には1Kの部屋が見える。


「お願いしますぅ。本当に本当に苦しいんですぅ。

 なんとか・・なんとかお願いしますぅ」


この女性は貧乏過ぎて生活苦なのだろうか。しかしそれにしては薄汚いがドレス姿なのが理解できない。思わず男は顔をしかめた。


「だ・・だれ?」


かろうじてそれだけが男の口から出た。未だ土下座している美女はこちらの声が聞こえていないのか、土下座の姿勢から直る気配もない。その上男の問い対する答えもなかった。

男はこの美女が自分の声を聴きとれていなかったのかと思い、もう一度同じ言葉を発した。

次は少し落ち着いたこともあって言葉が自然と口から出た。


「誰?」


「私このままだと消滅しちゃうんですぅ。

 お願いですぅ」


男が発した言葉から5秒ほどたって美女が土下座のまま返答にならない返事をしたため、この美女が男の言葉を全く耳に入れてないことがわかる。


「ねえ。だから誰?

 誰なの?」


ドアノブを握っていたままになっていた右手を離し、その手で美女の肩を掴んで頭を上げさせた。男がドアノブから手を離したことでドアはキィと音を立てて閉まってしまう。ドアの奥に見えていた部屋も、ドアに隠れて見えなくなってしまった。

顔を上げさせた美女の顔を見て男は驚いた。腕や足を見て栄養が足りてなさそうなことはわかっていたが、それでも美しかったのだ。

顔を上げさせられたことで、美女は男が会話に応じる気でいることがわかったようだった。


「すいませぇん。

 実はぁ、私ぃ、別の世界で闇の女神をしてるんですぅ」


美女は目に涙をいっぱいにめて懇願していた。

美女があまりにも現実的ではないことを言い出したことで、もしかしたら関わり合いになったらいけないやつだ。と思い視線をそらした。そこで辺りがいつもの光景でなかったことに気付いた。


「ってここどこっ?!

 ドアは?さっきまであったよね?!」


先ほどまで握っていたドアノブを探すように男の右手は空をつかんでいた。よくわからない場所にきてしまったと男は狼狽する。


「ここはぁ、私の神界ですぅ。

 あなたの家の玄関のドアをぉ、直接私のいる世界の扉にぃ

 繋げたんですけどぉ、これ以上は力を使えなくてぇ・・・。

 あなたが戻る扉を作れなくなってしまいましたぁ。

 こんなはずじゃなかったんですよぉ」


「えっ。どういうことっ?!」


美女の言ってることが非現実的すぎて理解できていない男は、改めて聞き返すしかなかった。


「ですからぁ、私の神の力でぇ、あなたを私の神界にぃ、

 呼び出したんですけどぉ、私の神力が尽きてしまってぇ、

 元の世界に帰すことがぁ、できなくなってしまったんですぅ」


美女はなんとか男に理解してもらおうと少しずつ言葉を区切って喋る。

男は動揺していたが、少しずつ頭を整理して理解していく。

 1つ、目の前の美女が言う神界と言うよくわからない場所にいること。

 2つ、美女が力を使い果たし元の世界には戻れないこと。

 3つ、目の前の美女が人間ではなく、自身を女神だと言っていること。

頭の中で1つ1つ箇条書きのようにしてまとめていくことで、男はだんだん落ち着いて理解できるようになってきた。


「で、女神って何・・?」


「私はぁ、こことは違う世界でぇ、

 女神をしてるんですぅ」


美女は自身が異世界の女神だと言うが、男にとって女神とは神々しくとても美しいものだと言う認識だ。今目の前にいる灰被りのような美女は女神だとは思えなかった。


「その身なりで?」


「これにはぁ、深いわけがあってぇ……」


美女がわかりやすく男から目を逸らす。


「で?」


「話せばぁ、長くなるんですがぁ……」


美女の言い分はこうだった。

この美女は異世界にいる6柱の女神の内の1柱であり闇の女神と言う。

異世界では、自身の信仰が少しずつ薄れていっており、信仰が少なくなると神としての力が少なくなるそうだ。身なりがひどいのはその力が少なくなっている証拠だそうだ。このままだと10年以内には信仰がなくなってしまい、力を失った女神は消滅してしまう。

なので自身の世界で信仰を取り戻して欲しい。


突っ込みどころは満載だった。その世界に6柱しかいないのであれば、単純に考えて信仰は6分割されるはずだ。多少バランスが悪くても、全人口の10分の1はいてもおかしくはない。

絶対に何かあったに違いない。男はそう思わざるを得なかった。


「なんでそうなったの」


「私の教義がぁ、よくないみたいでぇ、

 みんな信徒をやめちゃったと言うかぁ」


「教義?教会の教えみたいなやつ?

 どうよくないの?」


「教義がぁ、混沌と言うかぁ、自由と言うかぁ、

 そんな感じなんですけどぉ、混沌と言う言葉ばかりをぉ、

 信徒が教えと信じ込んでぇ、罪人とか犯罪者ばかりのぉ、

 宗教になってしまったんですぅ」


女神は自身で言ったことに改めてショックを受けて、俯いてため息を大きく吐いた。


「罪人ばかりって……

 でもさ、教義は昔から同じだったわけでしょ?

 じゃあ今までで一番多い時でどれくらいいたの」


「ええっとぉ、全人口の5分の1くらいが信徒でしたぁ」


神が6柱いる割に、全人口の5分の1も信徒がいたと言うことは相当大きな派閥であったことは間違いない。


「5分の1も信徒がいた頃は同じ教義でも

 平気だったんだろ?

 なんで急に犯罪者や罪人ばっかりになるんだ?」


「すいませぇん。

 何もしなくても勝手に信徒は増えるしぃ、

 怠惰な生活を過ごしてたらぁ、

 いつの間にかそんなことになっててぇ、

 気づいた時には手遅れだったのぉ……」


女神が言うことを聞いて男は呆れてしまった。


(こいつ駄女神じゃないのか・・。

 でも、女神が怠惰でも真っ当な信徒だっていたはずだ。

 これは何かあるぞ・・・)


「敵対と言うか、あんたの教義と正反対になるような

 教義の教会とかあるの?」


「光の女神の教義がぁ、秩序とか正義なんですぅ。

 私とは反対の教義でぇ、しかも真面目な人ばっかりでぇ、

 昔からずっと最も信徒が多いんですぅ」


男が相槌を打つと、そのまま女神は話をつづけた。


「最近は私の信徒だった者たちも加わってぇ、

 全人口の4分の1以上が光の女神の信徒なんですぅ。

 そのせいかぁ、光の女神は教義である秩序をぉ、

 厳しくしたせいでぇ、今の世界は秩序に縛られててぇ、

 堅苦しい世界になってしまってるんですぅ」


話を聞いていて、男は完全に納得がいった。

闇の女神の信徒が犯罪者ばかりになったのは、絶対に光の女神かその信徒が関わっている。

秩序とは社会が整った状態にあることを示す言葉だが、過ぎれば住む人々を圧迫することになる。

光の女神が異世界を自身の思うようにするために仕向けたことか、もしくはその信徒たちが教義を利用して世界を思うままにしようとしているのか。


(なんとかなりそうな気もするが、他人も同然である女神に

 手を貸す理由も……あったわ)


男は思い出した。

女神の力が足りず、自分が元の世界に戻れないことに。


「お前が力を取り戻せば、俺は元の世界に帰れるんだな?」


「はいぃ。約束しますぅ。

 元・・・とまでは言いませぇん。

 全人口の10分の1まで信徒が戻ればぁ、

 間違いなく元の世界に戻せますぅ。

 何十年経っていたとしてもぉ、

 今の姿のまま帰すことを約束しますぅ」


「・・・わかった。

 もしお前が約束破ったら、またお前の信徒の数を

 今と同じくらいにしてやるからな・・・」


仮に力を戻した女神が、約束を守らない可能性もある。

今は信じるしかない。


「大丈夫ですぅ。

 あなたと私は今や一蓮托生ですしぃ、

 この約束は契約として残りますのでぇ、

 破るようであれば私の存在が消滅しますぅ。

 神の契約はそれほど強いものですからぁ」


そう言った後、女神が右手をかざした場所に楕円形の扉のようなものが出た。


「ここに入れば異世界に行けますぅ。

 よろしくお願いしますぅ」


女神は両手をお腹の前で合わせ、低く礼をした。

男はそれを見てから、その扉をくぐる。

入るのに最後の足を踏み込んだ時だった。


「あ……」


(え……)


「すいませぇん。

 その姿のまま異世界に移動させようとしたのですがぁ、

 力が足りなくて転生させることになってしまいましたぁ」


男は自身の体がどんどん小さくなっていくのを感じた。

手や足は縮み、視界がどんどん低くなる。


「ごめんなさいぃ。

 せめてぇ、助祭としての力とぉ、

 鑑定の力をぉ、授けますからぁ……」


男の体はもう小さくなりすぎていて、まともに喋ることもできなくなっていた。


「今のでぇ、全ての力を使い果たしてしまいましたぁ。

 あなたに話しかけることもぉ、当分はできませぇん。

 信仰が回復したらぁ、こちらから話しかけますからぁ」


この後女神の声は全く聞こえなくなった。

男が来ていた服は少し汚れた布になり、男の体を包み込んだ。

そして、男は闇の女神を信仰する最後の教会の前に転移した。




まだ1話目ですが、どうでしたでしょうか。

1話目は、正直納得がいかないことも多くあったので何度も書き直しました。

今の状態で、一番納得がいってる状態です。

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