【1-12】方針
少し遅れた...
「タクヤってやつ、俺けっこう好きだわ。なんかオンゲ初心者っぽくて、いじり甲斐がありそうでさ」
俺は実際、オンラインゲーム初心者には好感を持っている。対人ゲームでも教えるのが好きだし、聞かれたら喜んで教えるタイプだ。
ランデスやナメタは教えるのが下手というか、極端すぎて話にならない。
「俺は無理。最初からあんな喧嘩腰の猿みたいなやつ、友達にはしたくないね」
「ぶっちゃけ~興味ない~」
うん、いつも通りで少し安心した。
「ていうかナメタ、お前逃げるためだけにヘイスト3まで振ったろ。中位ジョブのスキルポイントでならまだ分かるけどさ、
クラスレベルの方は上位ジョブにも影響するんだから、大切にしろって」
「すまん、もう少しで蕁麻疹が出そうだった。命に関わるレベルのやつな。だから振らせてもらった」
「実際、《俊足〈ヘイスト〉》って便利だよね。気持ち速くなる程度かと思ってたけど、パーティ全体に撒けるし、実用性高い」
普通の状態でスタミナを使って全力で走ると、100mを16秒程度。現実より少し速いが、ゲーム内なら悪影響もない。
そして《俊足》を使えば13秒くらいになる。スキルポイント3でこれなら、最大まで振れば10秒台も夢じゃない。
たかが1秒、されど1秒。体感では明らかに速さが違う。初期ステータスが16秒なんだから、並んで走れば差は歴然だ。
「これはMAX振り安定だな。あと2ポイント、ジョブレベル上がったら即振るわ」
「ていうか~中位ジョブのタンク限定ヘイトスキル《挑発》でもヘイト取り切れないって、ナメタのダメージ3~5倍あるってことだよね~
《雄叫び〈シャウト〉》が範囲で少し、挑発が単体に大きめのヘイト稼げるはずなのに、おかしすぎるよ~」
まあ、《急所探査〈クリティカル・サーチ〉》で常時クリティカル率70%って、そもそもぶっ壊れスキルだよな。
ログが残ってたら、確実に異常値叩き出してる。盗賊ジョブにした俺も、今のところクリティカル系のバフスキルなんて見つかってない。
多分、相当レアな性能なんだろう。
「で、だ。今後の方針だけどさ、経験値テーブル的にポークの町周辺で狩りすれば、俺の全ジョブレベル30まで上げるのに1~2日ってとこだと思うんだ」
「悪いけど、俺はその方針にしてくれると助かる」
「え~、俺は早く進めたいし、ソロで狩れる程度のスキルはあるから先進むね~
どうせ俺の《効率上昇〈エフィシエンシー・アップ〉》パーティボーナスつかないし、大丈夫っしょ~」
まあ、こうなるのは想定済み。だからこそ2個目の下位ジョブを盗賊にしたんだ。
「最悪、俺ともう一人で俺の下位ジョブ全部30にしてから合流すればいいし」
「提案なんだけどさ、タクヤ君、多分一人だろ? あいつ盾職にしてたし、2~3日俺のレベリングの間だけでもパーティに入れて、奴隷役にしない?」
多少は肉壁くらいにはなるだろ。大剣持ってたのが少し気になるけど。
「却下」
「まあまあ、最初の高圧的な態度はキャラ作りってことにすればいいじゃん。NPCの憲兵みたいなもんだよ」
「それなら俺はこの町の憲兵に金払って雇ってレベル上げるわ。AI搭載だし、叩き込めばなんとかなるだろ」
やっぱりそう来たか。だから一応、言い返せる材料は用意してある。
「あいつを、将来的にランデスが抜けたとき用のサブタンク枠として確保しておきたいんだよね。
今のところ、一人で動けて、ある程度使えそうなやつって、あいつくらいしかいないし。
将来の投資ってことで育てとけば、損はないと思う」
「もしアイツが下手くそだったとしても、俺はランデスと同じように扱う。墓落としても、俺は俺のやり方で戦うからな」
……いや、それはちょっと無理あると思うわ。ランデスは俺らのスパルタ教育を何年も受けてきた優秀な盾専だし、タクヤじゃ比較にならん。
「ま、まぁ、逆に効率落ちそうなら教え方は俺が考えるよ。とりあえず一回使ってみて、ダメなら俺が戦士に転職して盾兼ヒーラーやる」
正直、俺の《多数脳〈マルチプル・ブレイン〉》がなけりゃ無理な話だけど、なんとかなるだろ。
「……それならいい。教育は全部お前に任せる。俺はノータッチで行くわ」
妥協点ってとこだな。ナメタが気まぐれで話を引っ掻き回す前に、ここで終わらせておくのがベスト。
「ねぇ~なんでそこまでタクヤを買ってるの~? 初心者好きなのは知ってるけど、必要な人材ってほどじゃなくない~? センスなさそうだし~」
「お前も最初はセンスなかったけどな、ランデス」
「ひえ~ひどいよ~! 俺あんだけ頑張ったじゃん~! 今じゃ立派なドM職の盾専だよ~!」
別にタクヤを買ってるわけじゃない。
単純に、俺はいまイエスタやマイとフレンド登録してなかったから、フレチャが使えない。
そして――何より、他のプレイヤーのユニークスキルを把握したい。それが大きな目的だ。
それに加えて、ランデスが抜けることを想定して、リアルが暇そうなやつを一人か二人、控えに確保しておきたい。
タクヤが学生ニートか、長期休み中の大学生ニートだったら万々歳だ。
「買ってるんじゃなくて、利用価値がありそうなだけ。時間ってデメリットがあるけど、メリットのほうが大きい」
「利用できるアホほど便利な人材はいないし、無理なら切ればいい。他に使えるやつ探せばいいだけの話」
「うっわ~……ナメタはただの毒舌だけど、本当の腹黒はレンだよね~……。マジで性格いいよ~、悪い意味で~」
褒めてるつもりじゃないのは分かってる。でも、なんかそのニタニタ顔がムカついたので、
食べかけのホットドッグからソーセージだけ奪って、むしゃむしゃ食ってやった。
「それはそうと、俺とレンは仮眠とってから狩りに行くけど、お前は今から行くんだろ?」
「あっ! 俺の大事な部分! 食べないでよ~! ……ま、いいや。そうだね~。
このまま先に進むよ。次の町が気になるし、なによりレベル上げたい~」
「タクヤみたいなやつでも、たった1日遅れただけでここまで追いついてくるんだから、もっと効率厨なやつがいたら、絶対もっと上がいるよなぁ~ってさ」
「……分かった」
「あいあいさ~おやすみ~」
ランデスが他パーティに行くことは無いだろうけど差がつけられないように明日はいつも以上に頑張ろう。
ランデスにこれで種使いまくってたらキーファーになってたよ...、けどアイテム(種のようなもの)はないので怒りはとくにないですね。
キーファーとはFF7の登場キャラで糞王子です(笑)




