【1-13】教育係
数時間だけだったけど、こっちで寝ると現実で寝るのとほぼ変わらない感じで、しっかり疲労が回復した。
現実より無理のきく体だけど、どこまで無理が利くか実験してみたい……とは思うものの、自分の体ではやりたくない。
「おはよう、ナメタ。とりあえずタクヤがいる宿に行こう。それから、3人での狩り方を一通り教えて、実践に移ってみよう」
タクヤが俺らのパーティーに入るかどうかは、後で決めればいい。最悪、俺が転職すれば済む話だし、正直そこまで問題じゃない。
「すみません。この宿に泊まっている、タクヤというプレイヤーさんはいらっしゃいますか?」
「タクヤ様でしたら、先ほどあちらの通路を真っすぐ進んだ先にある食堂へ向かわれましたよ」
「ありがとうございます」
どうやら食堂にいるらしい。ついでに朝飯でも食べながら交渉を持ちかけよう。
「あの、ここ、お隣いいですか?」
「あ、はいどうぞっ……って、おい!お前、ナメタとレンじゃねぇか!昨日の話、聞かせてもらおうじゃねぇか!」
最初は普通に敬語で話していたが……やっぱりキャラ作ってるだけだな、こいつ。
金髪の強面アバターで、身長も高め。現実で出会ったら目を合わせたくないタイプだ。
でも、実はけっこう真面目な奴かもしれない。とはいえ、朝からこっちで朝食ってことは……筋金入りのニートの可能性もあるな。まあ、俺が言えることじゃないけど。
「まあまあ、そんな喧嘩腰にならないでくださいよ。ナメタが粗相してすみませんでした。お詫びとして、こちらをどうぞ」
「おお、これは丁寧にありがとよ……って、ただの食堂のゼリーじゃねーか!」
「今回は喧嘩しに来たわけじゃないんで、とりあえず朝飯でも食べながら、ゆっくり話しませんか?」
「まあ、そうだな。昨日の続きの話とか、チートやらなんやらも聞きたいしな」
そんな感じで、俺たちはタクヤと朝飯を食べながら話すことになった。
主に現実でのタクヤの話を聞きつつ、パーティーに入れるかどうかの面談だ。
話によると、タクヤは最初から高圧的な態度で、俺たちみたいな初心者に情報を売っていたらしい。
リアルでも一応、ヤンキーっぽい立ち位置らしいが……普通に買えばよかったのでは?
根はいい奴っぽいけど、ネジが30本くらい抜けてるだけだな。たいしたことはない。
「タクヤ、一人でこのゲーム始めたの? 友達招待コードとかあったけど、誰も呼ばなかったの?」
「レンと違って、俺はネットゲームとかアニメが趣味って話すと、ダチに馬鹿にされるんじゃないかって思って言い出せなかったんだ」
「だから一人で始めて、最初は初心者連れて狩ってたけど、俺の問題行動に嫌気がさして、数日前に解散しちまった」
「この世界、3人パーティーでも結構難しいのに、一人でやるのは無理だった……。焦ってて、口も悪くなった。本当に悪気はなかったんだ、許してくれ」
なるほど。一人でこの世界にいるのは確かに不安だろう。
……と思ったけど、馬鹿か? ログアウトすればいいじゃねぇかよ。
まあ、ネトゲは好きだけど、リアルスケールになって怖さや興味が入り混じって、抜けられなくなったんだろうな。
リアルでは高校生らしい。今は冬休み前の自主登校期間だとか。
あったな、そんなの。俺は指定校推薦だったからずっと休んでたわ。
そのあと冬休みが来るから、実質大学生並みの長期休暇になる。
「ってことは、いろんなネトゲ触ってたの? 盾職選んでるってことは、得意だったの?」
「いや、ナイトで大剣持って、相手のターゲット稼ぎながら無双できたらカッコいいかなって思って……。攻撃スキル振りまくったら、結構死んだ」
「味方から“地雷”とか言われて、めっちゃメンタルやられたけど……たくさん練習して、今は盾持たずに回避でスキル全部避けて倒すロマン職みたいな感じだな」
「あー……つまり“地雷”ってことだよね」
「なぁ、レン。もう帰ろうぜ」
ずっと黙ってたナメタが、ついに解散を提案してきた。俺もそこまでして仲間にしたいわけじゃないので、立ち上がろうとしたその時。
「わ、わかったよ! とりあえずロマンは後にするから、レン先生の教えを受けたい! お願いします!」
「……どうする? ナメタ。盾職として肉壁になってくれるなら、使えないこともないと思うんだけど」
「まあ、肉壁になってくれるならいいか。俺らが死んで経験値ロストとかは効率落ちるし、3人の方が楽なのは間違いない」
「肉壁に“さえ”なってくれればいいんだよ、うん。肉壁になってくれればね」
はっきりと“使い捨ての駒にする”宣言をしているようなものだが、ここで引くようなら盾職なんて向いてない。
「に……肉壁……。死ぬほど痛いわけじゃないけど、ダメージ食らうのって結構キツいんだぞ? お前ら鬼か?」
「文句あるなら、俺が盾やるし。いらないよ。じゃあね」
「わ、わかった! 肉壁です! 僕は肉壁です! なんでもします!」
「「ん? 今“なんでも”って言ったよね?」」
“なんでもします”って言われたら、こう返すしかないだろう。
――というわけで、タクヤのパーティー加入が決定した。
∬
とりあえずパーティーチャットで、俺らのユニークスキルの詳細は隠しつつ、タクヤにユニークスキルの話を聞いた。
一番効率の良い蛇の狩場に向かう。
「タクヤはユニークスキルはないんだな。俺らのはさすがに話せないけど、昨日の会話の断片から察してくれ」
「それ以外の、盾職がやるべきこと・意識すべきことはひと通り教えたし、もう実践していいよな?」
ユニークスキルは全員が持っているわけじゃないらしい。
これからはしっかり隠していかないといけない。特にランデスのスキルは便利すぎるから、他に取られたくない。
タクヤには、俺がこの前“変形した蛇”から拾ったアイアンバックラーを貸した。
一応、下位の戦士職に必要なスキルは取っているようで、シールドガードと雄叫びが使えれば問題ない。
俺がヒールとバフを担当することも伝えた。
「それじゃあ、俺が1グループ釣ってくるから、そこで待機。合図したら雄叫び発動、そこからジャスガを狙ってシールドガードな」
シールドガードには通常ガードとジャストガードがある。
敵の攻撃に合わせてジャストガードを決めれば、スタミナを消費せずにガードでき、相手に隙も作れる。
俺は弓を装備し、他のグループを巻き込まない位置に入ると、遠くの大きな蛇を狙撃した。
「来たぞ! 今だ! 雄叫び発動して!」
「お、おう! こんなにいっぱい……マジで大丈夫なのか!?」
「ちっ、思ったよりコイツ下手だな。大きい方の蛇は俺が一人で対処するから、回復とバフは任せたぞ、レン」
さすがのナメタも舌打ち。俺もしたいけど、グッと我慢する――そのくらい下手だった。
一応下位スキルに戦士盗賊魔法使い、共通ツリーで分かれてますが戦士ツリーだから戦士しかスキルを振れないといった制限はありません!
中位もそうする予定ですが上位ではまだ考え途中という段階です。シールドガードは盾を持ってるときしかスキルを使用できないといった制約はありますが、振る事自体は出来る設定です。
タンク魔法使いとかそういうのも出来るという事ですね、片手に盾を持って片手に杖、魔法を発動しながらタンクをする姿、ジョブやクラスのステータスバフが今は無いから出来る所業ですね。
普通は無理なのでオンラインゲームをこれから始める人は地雷にならないように気を付けてください。




