第十四話「小さな疑問」
玄関を開けると……クラッカーの破裂音が、僕達を迎えてくれた。
「え?」
「明良兄ぃ、初彼女ゲット、おめでとーう!」
「おめでとうございます、お兄さんっ!」
叶絵と日向君だった。
「お前ら……何で?」
「兄ぃが彼女さんを家に連れてくるだろうと思って歓迎会の準備をしてたんだよ。ささ、おねーさん。上がって下さい♪」
そう言われるがままに、僕とおねーさんは家に上がった。
「え、ええ? こんなに料理あるのか?」
ダイニングのテーブルには所せましと料理が並べられていた。
「ほとんど惣菜屋で買ったものに火を通しただけのものだけど……あたしと日向ちゃんが丹精込めて用意しました! さあ、席について。料理が冷めないうちにみんなで食べようよ!」
叶絵はまずユイナはどこへ行ったのかと訊いてきたので僕は『家に帰った』とだけ言っておいた。
本当のことを言っても信じてはもらえないだろう。
それから僕達は色んなことを話した。
叶絵が携帯を置いてきたのは故意ではなく、ただのど忘れだったこと。
日向君が実は武道をやっていて、その技で不良達を撃退できたのだということ。
そして……結名おねーさんと僕の出会いの話になった。
「へえー、じゃあ10年前の夏休みにおねーさんが一人旅でこの町に来たときに兄ぃと出会ったんだね?」
「活動力溢れる子供だったんですね、おねーさんって」
中学生二人は大人の女性の話に興味津々のようだ。
「うん。わたしの……一目ぼれだった。一目見て『この子しかいない』って思ったんだ」
おねーさんは少し顔を赤らめたように見える。やはり恥ずかしいのか。
「でも初キスが怖くて逃げちゃうなんて、兄ぃも純情少年だったんだね~、このこの~♪」
と、叶絵は僕を肘で小突きにくる。
「ふん、言ってろ。初キスなら今日遊園地で済ませたからいいんだよ」
僕は少し強がってみせた。
しかし僕はそこで違和感を覚えた。
10年前……計算上はおねーさんは『10歳』ということになる。
だが僕の記憶の中では10年前のおねーさんは今の姿のままなのだ。
これは何故だろう?
おねーさんのさっきの話だと彼女の体の成長は10年間10歳で止まっていたはずなのだ。
それが……何故か、僕と初めて会ったときのおねーさんは……推定20歳の、今の姿のままなのだ。
いくら僕がそそっかしくても、自分の大事な人の外見年齢を誤認するとは思えない。
何にせよ、今訊くことじゃないな。今度二人きりのときにおねーさんに直接訊いてみよう。
それから、時間は楽しい時間はあっという間に過ぎ……。
「ん……」
僕は気付いたらテーブルに突っ伏して寝ていた。
叶絵と日向君もすやすやと同じようにして寝ている。
時計を見ると、既に23時を回っていた。
「さあて、小便でも行くかな……ん?」
そこで僕は重大なことに気付いた。
結名おねーさんが……いない???
僕は嫌な予感がした。おねーさんを捜さなくては!
それから僕は10年前の記憶を頼りに、おねーさんと思い出のある場所を中心に捜して回った。
時計を見る。23時40分を過ぎたところだ。
何故だろう。早く、おねーさんを捜さないと。そんな思いに駆られる。
あと、おねーさんと一緒に行った場所といえば……もう『あそこ』しかない。
僕はその場所を目指してひた走った。




