表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/12

出会い

初めまして、ねろりと申します。

本日から新連載を始めさせていただきます!

腹黒いお坊ちゃまと、ちょっと天然(?)な護衛少女の、現代ファンタジーラブコメです。

楽しんでいただけたら幸いです!

序章 出会い


神城家の広大な庭園には、人の気配がなかった。

池の澄んだ水面を、色鮮やかな錦鯉が音もなく滑っていく。


神城財閥――日本の政財界の頂点に君臨し、流通、金融、先端技術から防衛産業にいたるまで、国の基幹を文字通り支配する巨大コンツェルン。


その本家であるこの屋敷は、権力の象徴であると同時に、血で血を洗う苛烈な後継者争いの戦場でもあった。

莫大な資産と利権を巡り、親族同士が足を引っ張り合い、互いの動向を監視し合う。それが神城の日常だった。


「……くだらない」


十歳の神城透亜かみしろ とあは、誰もいないのをいいことに、普段の「完璧な笑顔」を消し去っていた。中性的で、眉目秀麗と誰もが称えるその顔立ちは、無表情になるとゾッとするほど冷ややかだ。

本家の末息子として生まれた彼は、幼少期から有象無象の欲望と悪意に晒されてきた。生き残るために身につけたのが、大人たちの本音を隠すための「仮面」である。


神城家と隠密集団「狐狸こり」は、古くから深い繋がりがある。一族の主要な人間の後ろには、必ず「狐狸」の護衛が影のように付き従っているのだ。末っ子である透亜の元にも、ついに今日、その狐狸から護衛が買われて来ることになっていた。

どうせ他の親族たちと同じように、自分の機嫌を取り、内偵を進めるための有象無象が送られてくるのだろう。そう思っていた、その時だった。


「——そこ、退いた方がいいですよ。落ちますから」


突然、頭上から妙に澄んだ声が降ってきた。

透亜が驚いて見上げると、庭園の大きな大島桜の枝に、一人の少年が腰掛けていた。短い髪に、動きやすそうな中国の民族衣装——すっきりとした細身の真っ黒な長袍ちゃんぱおを纏っている。

だが、その警告の直後、バキリと嫌な音が響く。


「あ、折れた」


少年は真っ逆さまに落下した。

透亜が息を呑んだ瞬間、少年は空中で見事に一回転。チャイナ服の裾を美しく翻し、猫のようにしなやかに、音もなく芝生へと着地してみせたのだ。常人離れした身のこなしだった。


透亜は一瞬で脳を切り替え、顔に「にっこりとした仮面」を貼り付けた。品がよく、誰もが庇護欲をそそられる、完璧な愛想のいい笑顔。


「君が、新しい僕の護衛? よろしくね。男の子にしては、ずいぶん小柄で可愛いんだね」


透亜は、相手を油断させるための甘い声を向けた。

しかし、その少年のような相手は、懐から「狐狸」の証である印を取り出しながら、不思議そうに首を傾げた。


「あ、私、女の子ですよ。動きやすいからこの格好なんです。……あ、申し遅れました! 本日から透亜様の護衛を務めます、『狐狸』の翡翠ひすいと申します。あるじに最初から嘘つくのは寝覚めが悪いので、先に言っておきますね!」


「……え?」


透亜の完璧な笑顔が、ピキリと凍りついた。

古くから神城家を支えてきた老獪な「狐狸」の者たちとは、あまりにも毛色が違いすぎる。男装の麗人だとか、深い策略があって男の振りをしているわけでもない。ただ「動きやすいから」という、お粗末で直球な理由。


翡翠は、硬直した透亜の顔をじっと覗き込んできた。


至って平凡な子供。特に容姿が優れている訳ではない。だが、覗き込んできたその顔が、くしゃりと破顔した。


「それにしても、透亜様って、ずっとそうやって作り笑顔してるんですか? 疲れません?」


それは、底抜けに無邪気な笑顔だった。


同時に、透亜の胸の奥で、どす黒い感情がふつふつと湧き上がる。これまでの人生で、自分の仮面をここまで躊躇なく踏み荒らしてきた人間はいない。


(なんだ、この無礼な生き物は……。狐狸は一体、何を考えてこんな奴を僕に……)


透亜の微笑みが、わずかに歪む。それは大人たちを騙してきた人形の笑顔ではなく、初めて他人に向けられた、本物の「腹黒い興味」の笑みだった。


「ふうん……。いいよ、面白い。君がいつまでその呑気な顔をしていられるか、試してあげる」


仮面の下の本性を隠しもせず、透亜は低く囁いた。

けれど翡翠は、言葉の意味があまり分かっていないのか、ただ嬉しそうに「はい! 精一杯お守りしますね!」と元気よく頭を下げるのだった。


序章をお読みいただき、ありがとうございました!

完璧な仮面を一瞬で剥がされた透亜様と、マイペースな翡翠。

この主従がこれからどんな関係になっていくのか、温かく見守っていただけると嬉しいです。

「この二人の掛け合い、ちょっと気になるな」「翡翠の着地かっこいい!」と思ってくださった方は、ぜひページ下部にある【ブックマーク登録】や、評価の【☆☆☆☆☆(星)】をぽちっと押して応援していただけると、執筆の物凄い励みになります!


第九章までは、本日中に、それ以降は毎日20時頃に投稿する予定です!

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ