表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界事件簿 ~魔法世界の誘拐事件 ~  作者: 黎明
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/20

19. 地下での発見

 

 ふうと息を吐く。

 ルイスの足元には気絶した4人の男達。

「終わったぞ、ルシャージャ」

 五分ほどで全員気絶させた。一応、縛っておくか。また攻撃されたら堪らない。

「・・・ルシャージャ?」

 いつもの落ち着いた声がしない。皮肉たっぷりの言葉もだ。


 そういえば、いつもなら魔法を放って援護してくれる筈なのに何も無かった。その魔法も、ルイスに当たるぎりぎりの所を狙ってだが。

(どこに行ったんだ?)

 周囲を見回すが、彼女の姿はどこにも無い。

 ったく、離れんなつったのに。

 ルシャージャは魔法に長けているが身体能力はあまり高くない。勿論、体術なんてできない。精々キレのいい蹴りが飛ぶだけだ。距離を詰められたら終わり。

 疑似身体強化も、今日は既に使っている。流す量もだが回数でも危険度は変わる。

 襲撃の時に限界ギリギリまで流したらしいし、これ以上はルシャージャの身が持たない。体だって、ルイスほど強くない。一般的だ。


(探しに行かねえと・・・)

 もし、ルシャージャの身に何かあったら。

 この部屋から行けるのは三ヶ所。一つは入ってきた扉。もう一つは最初の男が潜んでいたところ。もう一つは何があるか分からない。

 入ってきたところはないだろう。通った部屋は既に調べていたし、外に出る必要性も感じない。


「何挙動不審なの?ルイス」落ち着いた声がした。

 出所に視線を向けると、見慣れた色素の薄い美人が目に入った。彼女は男の一人が潜んでいた扉――ルイスが壊したからないが、その側の壁に凭れ掛かるようにして立っていた。

 柔らかく腰下まで流れた白髪、青に少しの紫を閉じ込めた宝石の様な瞳。神秘的に光る瞳が、ルイスを映していた。

「ルシャージャ!どこに行ってたんだ」

「ちょっとね・・・縛っておかないの?」

「あ、ああ。すぐにやる」

「いいよ。私がやる」

「おっ、頼むわ。縄探すの面倒だったんだ」

「そう思って向こうを見てきたけど、縄は無かった」

 面倒そうにルシャージャは長い指を男達に向ける。

 薄らと発光した輪が男達を捕縛した。

「相変わらず便利だなそれ」

「君、本当に・・・」呆れた目が向けられる。


 溜息を吐いた後、ルシャージャは男達の側に行く。

「どうした?」

「魔力を付け直すの。薄れてきたから」

「成程」


「終わったよ。じゃあ、進もうか」

「此奴等は」

「置いて行く。邪魔でしょ」

「おっしゃる通りで」肩を竦める。

 残っていた扉を開け、奥へと進む。


 二人分の足音が廊下に響く。

「・・・にしても」口角が上がる。

 きっと今、ルイスの顔はにやけてしているだろう。

「何?気持ち悪いんだけど」

「いや、別にぃ?ただ、さっきの悲鳴・・・」

 ルイスの言いたい事を察したらしい、ルシャージャの顔が歪む。

「‘‘きゃあ‘‘って、可愛かったよなぁ」

「ルイス、君さあ・・・」

 呆れた様な困った様な声だった。実際、対応に困っているんだろう。


「それを言うなら・・・」

「ん?」

「君だって、固まってたじゃないか」

 ――私の胸に反応してさ。

「っ、ルシャージャ、おまっ」

 気付いてたのか。

 そう、探知に集中する前、ルイスに頭を預けた時にルシャージャの胸が当たっていたのだ。

「えっち」じとりとした視線がルイスに突き刺さる。

「・・・悪かった」

「別にいいよ」クスリと笑う。「そういう目で見てないの、知ってるし」

「それでも、だ。そんな場合じゃなかったろ」

 ルシャージャがいいと言っても、ルイスにとってはよくない。

 あと、ルシャージャに反応するとか何か嫌。

「まあ、ルイスも人間だって事で」

「それでいいのか・・・?」

「いいんだよ」軽い調子で言う。

 ――私が言ってるんだから。ルシャージャは微笑んだ。

 それに、と続ける。

「当分の間揶揄うネタが出来た」

「おいこら」

 可笑しいと思った。お前が簡単に許すとか。何かを要求される方がマシかもな・・・。


「此処かな」

 足を止める。

 ちらりとルイスに視線が向けられた。

 気配があるかを問われているのだろう。黙って首を振る。

 中からは何の気配も感じない。


「開けるぞ」

 前に出て、少しだけ扉を開ける。

 気配が無いとはいえ、警戒しない理由にはならない。

 中に誰もいない事を確認して、ゆっくりと扉を開けた。

 中へ踏み込むが、罠なんかも無さそうだ。

「汚い・・・」

 ルイスの肩越しにルシャージャが覗き込む。


 するりとルイスの横をすり抜け、部屋を見回す彼女。

「・・・やられた」目を見開き、すぐに眉に皺を寄せる。

「どうした、ルシャージャ」

「ここ、アジトじゃない」

「どういう事だ」ルイスの目が鋭くなる。

「でも、反応は」

 ここからなんじゃないのか。

「此処から。それは、間違いないよ」

 ――魔法で誤魔化されてる感じもしない。口元に手を当てたルシャージャが言う。

「何より、さっきまた襲ってきた彼奴等が証明している」

 それはそうだ。ルシャージャが魔力を付けたのは彼奴等なのだから。

「じゃあ」

 一体どういう事なんだ、言いかけた言葉を飲み込んだ。分かっていたらルイスに言うだろう。

 流石にルシャージャも、この状況でルイスの反応を楽しんだりはしない。

「相手は警戒心が強いみたいだね」

「警戒心?」

「私が魔力を付ける事を予測していた――そうじゃなくとも、何かされるって思った。その可能性が高い」

「そこまでか・・・。いや、そうだな。向こうは警戒してるんだったか」

 ルシャージャとの会話で出てきた筈だ。

「うん」

「どうするんだ。当てが外れたが」

「勿論、予想はしてたよ。簡単に尻尾は掴ませてくれないだろうってさ。もしそうだったら、ルイス達がとっくに捕まえている筈だから」

「まあ、俺らも無能じゃねえしな」

 脳裏に浮かぶのは、隈を作り徹夜で残って調べる同僚達。鬱病と診断されて毎日進捗を聞きに来る子供達の親類。

 ルイス達が何度資料室を引っ繰り返しても、実際に尻尾を掴むことのできる情報は出てこなかった。


「知ってるよ。ルイスの隈、割と濃いし」ルシャージャの細い指が黒い手袋越しにルイスの目元を撫でる。

「あー・・・分かるか?」困ったように視線が泳ぐ。

「せめて、コンシーラーとか使ったら?」

 割と隠せるよとルシャージャは言う。

「俺に出来ると思うか?」

「慣れればいけるでしょ。ルイス、不器用ではあるけど全く出来ない事も無いし」

 ――色とか、今度選んであげるよ。

「解決したら頼む」

 今は正直コンシーラーよりも仕事片付けて寝たい。

「はいはい」


「下行こ」

 手に冷やりとした布の感触がして、引かれる。

 下。ああ、本当だ。部屋の奥、床に扉の様な物がある。一瞬、床下収納かと思ったが大きさ的に違うだろう。


 取っ手を掴んだルシャージャが持ち上げる。

「梯子か」

 覗き込むと、地下まで梯子が立て掛けられていた。

 屈んで梯子に手を伸ばす彼女の手を掴む。特注のぴったりとした手袋は体温を感じさせない。

「ああ、先に下りる?」きょとんとした顔でルイスを見つめる。

「そうする」

 ルシャージャが離れたのを確認し、慎重に下りていく。


「暗いな」

 地下室にルイスの声が反響する。この感じだと、割と広そうだ。

「灯りある?」

 上から少し張った声がした。ルシャージャの長い髪が垂れているのが、影で分かった。

「分かんねえ。ちょっと待ってろ」

 目を細め、上からの光が入らない所に視線を向ける。

 そろそろ目が慣れてきたな。改めて見回す。

 出入口がここなら、近くに灯りを点ける物があると思うんだが・・・。

(ん、これか?)

 壁にスイッチの様な物がある。近付いて押し込むと、室内が明るくなった。

 眩しさでまた目を細める。


「ルイス」

「なんだ?」

 梯子に足を掛け、此方を見ていた。

 目が合うと、ルシャージャが手を放して梯子を蹴った。

 体が宙を舞った。

「は?」

 慌てて手を伸ばし、ルシャージャを抱きとめる。

「な、にしてんだ!」

「面倒だったから。ナイスキャッチ」楽しそうに笑う。

「お前さあ・・・」

 溜息が零れる。

「いきなりは止めろよな。心臓に悪いから」

「御免御免」全く反省していない調子で言う。


「埃っぽいね」嫌そうに眉をひそめる。

「あー、だな」


 あれ、とルシャージャが声を上げた。

「これ・・・」

 何かを見つけたのだろうか。

「ん、どうした?」振り返ると、何かを見つめて固まっているルシャージャが居た。

 視線を辿ると、蓋が開いて転がっている小瓶が。

「なんだ、これ?」近付いて、拾い上げる。

「っ、駄目!」さっと顔色を変え、ルイスの許に駆けて来る。

 バチンと小気味のいい音が響き、瓶を持つ手に衝撃が走った。

「いっ」手から硬い瓶の感触が消えた。

 瓶が宙を舞う。

 バリンとガラスが砕ける音がした。破片が床に広がる。じわりと中の液体も床に広がっていく。照明を受けてきらきらと輝くそれに、綺麗だな、なんてどこかズレた感想を覚えた。

つんとするような甘いような、変な臭いが鼻を刺した。

「っ大丈夫、ルイス!?」珍しく必死な顔をしたルシャージャがルイスの肩を掴む。

「え、どうしたんだ?大丈夫って、何が?」

 何々どうしたルシャージャ。確かに凄い臭いだけど。

「・・・目眩とか、体調に違和感はある?」

「ねえけど・・・本当にどうした?」

 気でも狂ったか。

「馬鹿。能天気」じとりと睨まれる。

 ええ、理不尽・・・。

(俺なんかしたか?)


 さっきの瓶に何かあるのだろうか。

 床に広がった瓶の中身を指ですくう。顔の前に持ってくると、変な臭いが鼻をついた。

 人工的な強い甘さにツンと鼻を刺す嫌な臭いが混ざった臭い。凄く不快だ。

「ちょ、何してるの?」ルシャージャの顔が驚きに染まる。

「何って、・・・確認?」

「何で」

「気になったから」

 意味が分からない、という顔をするルシャージャ。お前にもあるんだな。ちょっと優越感。

「~~っ、馬鹿」言いたい事が言葉にならないようで唸る。

「お前こういう時いっつも馬鹿って言うよな。語彙力あるのに何で?」

 無言で頬を引っ叩かれた。

「ったいな、何すんだよ」

 幾らお前が非力でも、痛いもんは痛いんだが。


「分かんないの?」

「何が」

 信じられないといった顔をするルシャージャ。

「やっぱり馬鹿」

「理不尽だなおい」

 盛大に溜息を吐いたルシャージャは、仕方なさそうに口を開いた。

「さっきの小瓶――」

次話は8日20時に投稿。

よければ評価、感想お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ