表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

真実と改竄の歴史

【真実の歴史】

 これは、今よりずぅ~っと、むかしむかしのおはなしです。

 この世界には昔から「魔族」という生き物が、暮らしていました。

 魔族は、人型・獣型・植物型と、個性豊かな姿をしています。

 魔族はみんなそれぞれ、「不思議な力」を持っていました。

 互いの個性を認め合い、みんな仲良く暮らしていました。

 ある日、「ヒト」と呼ばれる生き物が、別の世界からやって来ました。

 ヒトは、自分達の世界が滅んでしまったので、新天地しんてんちを求めてお引っ越ししてきたそうです。

 ヒトは人型しか姿がなく、魔族とは全く違う生き物でした。

 ヒトは、魔族が持つ不思議な力は持っていませんでした。

 代わりに「科学の力」で、進化してきた生き物です。

 魔族は、ヒトが移住いじゅうしてくるのを、喜んで受け入れました。

 魔族は、不思議な力でヒトを助けました。

 お礼に、ヒトは科学の技術を魔族に教えました。

 こうして、魔族とヒトは、みんな仲良く暮らし始めました。

 ところがヒトは、この世界の環境に適応できおう出来ませんでした。

 ヒトが生きていくには、この世界は気圧と酸素濃度が低すぎたのです。

 大勢のヒトの体には、少しずつ、顔や手足のむくみ、頭痛、吐き気、脱力感などの諸症状しょしょうじょう(色々な病気や怪我の状態)が現れ始めました。

 やがてヒトは、脳浮腫のうふしゅ肺水腫はいすいしゅ脳梗塞のうこうそく心筋梗塞しんきんこうそくなどで、次々と命を落としてしまいました。

 順化じゅんか(環境に適応する)して生き延びたわずかなヒトは、「このままでは、ヒトは全滅してしまう」と、危機感をつのらせました。

 ヒトは、自分達の遺伝子を残す為に、研究に研究を重ねました。

 魔族も、協力を惜しみませんでした。

 そしてついに、「この世界に適応するヒト」を、完成させました。

 ヒトの遺伝子に、魔族の遺伝子を組み込んで誕生した、新たなる生き物。

 ヒトと魔族の「間」に生まれたので、「人間」と命名しました。

「これで共存出来る」と、ヒトと魔族はとても喜びました。

 しかし、これが悲劇の始まりでした。

 魔族の遺伝子を組み込まれた人間は、「奇跡の力」を得ました。

 奇跡の力は本来、魔族が持っていた能力です。

 魔族は生まれつき、さまざまな力を使うことが出来ました。

 ですが人間は、ひとつしか使えませんでした。

 それは、何故でしょうか。

 ヒトの遺伝子は、魔族の力に、耐えられなかったからです。

 その上、全ての能力がヒトよりもおとりました。

 悪い言い方をすれば、人間は失敗作でした。

 人間は、失敗作の自分を作ったヒトと魔族を、責め立てました。

 そして、まもなく、ヒトは滅びました。


改竄かいざんの歴史】

 ヒトが滅びると、人間は新たに「独自の歴史」を作り始めました。

「『ヒト』などという生き物は、初めから存在しなかった」

「この世界は、最初から『人間』のものだった」

「『魔族』は、この世界を侵略する『邪悪なる異形の存在』」

「『奇跡の力』をひとつしか持っていないのは、魔族に奪われたからだ」

 このように「人間にとって都合の良い歴史」に、書き換えてしまいました。

 人間は、「真実の歴史を知る魔族」を敵視しました。

 魔族はヒトの移住を認め、力まで貸してくれたというのに。

 その恩も忘れて「人間だけの世界」を、勝手に築き上げてしまいました。

 居場所を奪われた魔族は、森へ追いやられてしまいました。

 これにより、人間と魔族に対立が生まれました。

 現在、「真実の歴史」を知っている魔族は、ごくわずかしかいません。

 知恵ある魔族の一族だけが、「真実の歴史」を語り継いでいるのみです。

 人間は、自分達にとって都合の悪い真実の歴史は、「なかったこと」にしました。

少しでもお楽しみ頂ければ、幸いに存じます。

不快なお気持ちになられましたら、申し訳ございません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ