『だれかいいバディ、いないかなー……』 ~ミクの場合~
「ごめんミク! 俺と、バディを解散してほしいんだ!」
「え、……
なんでそうしようと思ったのか、理由を聞かせてくれる?」
わがバディ『テンリュウ アオバ』は、あたしに両手を合わせ頭を下げてきた。
あたしたちは、高天原学園に入学して初めて出会った同士だ。
学園のあっせんでバディを組んで、ここまでやってきた。
あたしは剣士、アオバはここではめずらしいハルバード使いだったけれど、不思議と呼吸はあった。
幼い弟くんの手術費用の足しにするのだと、ファイトマネーを仕送りして。
困っている子をみつけたら、迷わず助けてあげて。
宿題も当番も、いやな顔一つしない。
さらには、大きな青葉色の瞳がきらきらで、ふっかふかのヤマネコ装備も似合ってて、なんというか、すごくかわいらしい。
こんな、主人公みたいな男の子が本当にいるんだ、と思うような子だった。
正直に言えば、あたしはアオバを好きになりかけていた。
この先もずっとバディとして、彼を応援していきたいと、そう思っていた。
その矢先の申し出にあたしは、困惑するばかりだった。
アオバが言うには、こういうことだった。
「あのさ。
マキノハラ イズミ、知ってるよな。陸上やってる、黒うさぎ装備の」
「え? ああ、こないだひざを痛めたって……」
「うん、そいつ。
実はひざの調子、けっこうよくないみたいでさ……
仮バディが解散申し出て、いま単騎に戻ってるらしい」
「ええっ? それって、ケガした子を見捨てたってこと、そのバディ?」
「まだ仮だし、一ツ星だからさ。さすがに厳しいんだよ」
「それでもアオバはほっとけない、と?」
「……ああ。
誰かがみてやらなくっちゃさ、イズミ、このままつぶれちまう。
だから……」
「いや、ちょっと待って。
イズミ君を助けるのは、あたしも反対してない。
けど、あたしたちが解散したら逆にやりにくいわよ?
先輩に聞いたけど。女子は絶対零星にはならないんですって。
最悪、あたしが一ツ星に残り続ければ、『エキュパージュ救済』でアオバも一ツ星に残れる。そうすれば……」
「いや」
アオバは、真面目極まる顔で首を左右した。
「そんな計算でミクを、利用したくないんだ」
『エキュパージュ救済』――バディを組む二人の星級に差がある場合、下のほうの者も上のほうの者とおなじ星級として扱われる制度――だって、女子生徒への援助だって、この学園が決めたこと。あくまで学園に理があるから運用されている制度であって、それを利用することはむしろ、合理的な判断のはず。
だからアオバに利用されることになるなんてこと、ちっとも思ってなかった。
けれどアオバの意志は固かった。
最後はほとんど喧嘩だった。
そうしてあたしは、アオバとバディを解消した。
正直なところをいえば、がっくりきてた。
アオバがあんな頑固な子だったなんて。
いや、知ってた。
アオバはこうと決めたらやり抜く根性の持ち主だ。今回はそれが、このカタチになってしまっただけだ。
大丈夫、なにもこの世からいなくなったわけでもない。困っていたらいつだって、助けてあげられるのだ。
というか、二ツ星になった時のことを考えれば、むしろこれでよかったのかもしれない。
男女バディで二人部屋に入るのだってもちろん可能だけど、あたしとアオバはそういう仲じゃない。だれか、二人部屋を分け合うための『部屋バディ』を、お互い探さなききゃならなくなる。
それを考えたら、いまここでバディを組みなおせたのはよかったかもしれない。
なんて考えていたときだった。
携帯用端末に通知が来た。開いてみれば、驚きの内容。
「うっそ……一ツ星部屋を二人用に改装――??」
言われてみれば、いまの女子寮の部屋。六人用なのに三人しかいなかった。ほかの部屋も似たようなもんで、なんなら空室もあった。
移行措置により、この一か月は一人利用でも部屋代は据え置きということだけれど、これは、のんびりしていられない。
女子寮のラウンジで一人。あたしは大きく大きくため息をついていた。
「あーあ、だれかいいバディ、いないかなー……」
「あーあ、だれかいいバディ、いないかなー……」
そのとき後ろから、同じこと言ってる声が聞こえてきて、あたしは振り向いた。
前回のこたえ
ずばりトラオ君です!
このころポーション代で困窮してたので、なんでも屋的なこともしてました。
次回、ガールズトークで完結予定です。
どうぞ、お楽しみに!




