『だれかいいバディ、いないかなー……』 ~モモカの場合~
「『ゴメンモモカ、また決闘申し込まれちゃって__;
悪いけれど当番変わってください。よろです!』っでそーうしん!」
「おーいいいのかよー」
「こないだ怒られたんだろ? そろそろいい加減にしないとバディ解消だって!」
「だーいじょぶだいじょぶ! モモカさんはやっさしーから!」
「へえええ?」
後ろから声をかけた。あえてにこやかに。
とたん、慌てた様子で振り返るわがバディ、いや、もとバディ。
「な、なななんだよモモカ! なんでここに……」
校舎の一角、かれらのいつもの『内緒の』たまり場。
ばれていないと思ってたんだ。ある意味、感動した。
まあ、それも、今日で終わり、なのだけれど。
青ざめているまわりの悪友たちは、このさいどうでもいい。
わたしはやつに、最後通告を突きつけた。
「そんなことはどうでもいいわ。
前にも言ったよね。バディは解消よ。
届け出はいま、オンラインで提出したから」
「ちょ、ちょっと待てよ! なんだよそれ!
だ、だいたいなんでだよ、当番かわれって言ったぐらいでさ!
いいだろ、かわってくれよ! バディだろ?」
その言い草に、最後の愛想も尽きた。
けれど食い下がられるのもいやなので、もう一度理由を説明することにした。
「あのね。……
代われるわけがないでしょ!
今日のあんたの当番、男子トイレのお掃除なんだからっ!!」
「ちょ、まじに……?」
悪友たちもさすがにあきれたのだろう。
絶句して、やつを見た。
* * * * *
この三週間前のことだった。わたしは、最初のバディを解散した。
原因は、わたしにある。
わたしはモモンガ装備の弓使い。魔法の弓で起こした風の力で舞い上がり、上空を旋回しつつ矢の雨を降らすのがわたしの戦い方。
いうなれば遊撃手、後衛アタッカーだ。
弓の腕には、もちろんそれなり自信があった。
それでもクラフターの、それも女子にとって、前に前衛の背中がないのは、精神的にも厳しいものということで。
二人でいっしょに模索を続けてきた。学園闘技場の初試合では、勝利を収めることができた。
それでも、前衛なしバディでの試合はきつすぎた、ということだ。
悪いことにその試合、対戦相手の二人が作戦でもめて、けんかになってしまっていた。
原因は、わたしたちバディの構成にあった。
わたしたちは二人とも後衛。対して相手は、スタンダードな前衛ハンター・後衛プリースト。普通に言って相手のほうが有利だ。
相手もそのつもりでいたのだろう。でもわたしたちは、ガンガンとボムを投げ、矢を射かけて、相手ハンターを削っていった。
ハンターの子は補助と回復を続けるプリーストの子に、お前も攻撃してといったけど、プリーストの子は無理だと断って……
試合は試合、わたしたちはそのまま押し切ったのだけれど、後味は最悪だった。
そのことも、彼女をつらくさせたのだろう。
数日後、何度も謝りながらバディの解消を申し出てきた。
さいわい、彼女と組んでくれる前衛の子はすぐ見つかった。
そして、わたしの新しい仮バディも。
さわやかな印象のハンター。剣士の男子だった。
バディマッチングの面談で、彼はニッコリ笑ってこう言った。
『後衛ハンター? いいじゃんいいじゃん! 前後ハンターでガンガン行こうぜ!
任せてくれよ。もちろん、宿題も当番もがんばるし!』
この時点でそこはかとない不安を感じたのだけれど、はたしてそれは正しかった。
やつは最初の三日は真面目だった。というか、それを過ぎたころから宿題をさぼり始めた。
バディとして放ってはおけない。自習室に引っ張り出し、一緒に宿題をやった。
当番をかわってくれといいだしたのも、そのころだった。
直前に決闘を申し込まれてしまったから、掃除当番を代わってくれとメールされること、二回。
ただ、その二回目というのが、男子風呂の清掃だった。
お風呂とトイレの清掃は、規則で異性は代わることができない。
というのに、しれっと頼んできたときには『はっ?!』と言ってしまった。
そのときには、困っているわたしをみつけた男子が(有償でだけど)代わってくれて。
そのときのTPはやつに払わせると同時に、またこういうことがあったら許さないからねと申し渡したのだ。
そのときは反省した様子だったから、すこし言い過ぎたかなと思ったところでこれだ。
当番の内容も確認してなきゃ、それがわたしにできるものかすら確認していない。
つまり、そういうことなのである。
理由を説明すれば、申請はあっさりと通った。
友人たちからもさすがにたしなめられたらしく、やつはそれ以上、食い下がってはこなかった。
かくしてわたしはフリーになった。
フリー、といえば聞こえはいいけれど、基本バディ制の高天原でこれは結構厳しい。
いまは一ツ星だからいいけれど、二ツ星になった場合は問題だ。
一ツ星、零星の寮質は基本的に、最大六人の大部屋。部屋代は何人いても変わらない。
けれど二ツ星になれば、二人部屋に入ることになる。つまり、バディもしくは部屋バディが探せなければ、二人分の部屋代を一人で払わなければならなくなる。
ぶっちゃけ、厳しい道のりである。
わたしには、夢があった。
高天原をカッコよく卒業して、レモン・ソレイユみたいなαプレイヤー兼、アイドルになること。
かなうなら、『しろくろウィングス』みたいに、在学中にデビューを果たして。
その第一歩と言っていいところで、はやくも雲行きは怪しくなってきていた。
女子寮のラウンジで一人。わたしは大きく大きくため息をついていた。
「あーあ、だれかいいバディ、いないかなー……」
「あーあ、だれかいいバディ、いないかなー……」
そのとき後ろから、同じこと言ってる声が聞こえてきて、わたしは振り向いた。
試合相手はミツルとソラ(カケル)です。
では、当番かわってくれたのはだれでしょう?
次回あとがきで発表します♪
次回はミクパートです。おたのしみに!




