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飴細工のタルト

 ジュディさんが、新商品として考えていたケーキは3つ。一つは、丸いフルーツがたくさんのタルト。フルーツをビーズに見立てているらしい。二つ目は四角い形に切られたケーキ。表面にはチョコレートやソースで規則正しい模様が書いてある。これは組紐の模様に近付けたらしい。

「それで、これは……?」

「毛糸の玉みたいに作ろうと思ってたけど、飴細工は難しくてね。これは失敗して出た細かい物を集めてのせただけだよ」

 飴を巻いて、毛糸球のような物を作ろうとしていたらしい。今目の前にあるケーキに乗っているのは、その製作過程にできた副産物らしい。

「アユムはどう思う?」

「私が決めるんですか?」

 ジュディさんはテーブルの上にケーキを並べながら、私に意見を求めた。料理については全く詳しくないので、役に立てるような意見を出せるかがわからない。

「カルロと決めるんじゃ、作る手間とか、材料のこととかを考えすぎるからね。まずはお客さんの目線から、どれが一番目を引いたかを聞くのも大切だと思って」

「成程……」

 そう言われて、私が指差したのは、飴細工がのっているタルトだ。予想外だったのか、ジュディさんは若干食い気味に理由を尋ねてきた。

「……新しく作った商品と、一番似ているので」

「これに似た商品?アユム、今度はどんな商品を作ったんだい?」

「小枝ピアス、というものです。ちょっと待ってください。取ってきます」

 実物を見せて説明した方が早いだろうと思い、階段を駆け上がる。昨晩作った二つのピアスを持って二階に戻ってくると、カルロさんもキッチンに来ていた。大抵、朝食の時間まではカフェの方で仕込みをしているので珍しい。

「おはようございます」

「おはよう、アユム。ジュディが新商品を見せてもらうと言っていたものだから、僕も見せてもらいたくて来たんだけど、迷惑かな?」

「いえ、大丈夫です。此方が新商品の小枝ピアスになります」

 新商品に興味を持ってもらえるのは嬉しい事だ。二人に持ってきたピアスを見せると、ジュディさんは納得したように頷き、カルロさんは首を捻った。

「これは……?」

「なるほどね、アユムの言う通り、見た目というか、印象が似てる」

 小枝ピアスは、ワイヤー独特の尖ったような印象がある。ワイヤーをねじってあるだけの枝の部分が多い程、その印象は強くなるだろう。ケーキの方も、のっている飴細工は丸くしてあるのではなく、不規則な形で尖っている。

「飴細工の色も調節できるし、新商品にするのはこれが良いかもしれないね」

「ジュディが言うならそうだろうけど……」

「作る手間は大したことないだろう?今日から早速出すよ!!」

 今迄もタルトは作っていたので、生地はすぐにできるらしい。それにしても、決定までが早過ぎるのではないだろうか、とジュディさんの方を見ると、ふふ、と笑って言った。

「こういうのは、時期に乗るのが大切なんだよ。カルロは料理の腕はあるけど、接客は苦手だし、売り込みも得意じゃない。こういった時も決断を渋る。だから先にやってみて駄目だったら止める、ってくらいが丁度いいのさ」

「ジュディの目は確かだから信じてるけど……、取り敢えず、今日の分は仕込みが……」

「エッグタルトは最近売れ行きが悪いだろう?半分ほど新商品に回しても大丈夫だよ」

 どん、と胸を叩いて言うジュディさん。指示されたカルロさんは眉を下げているものの、反対する様子はない。お互いに信頼しあっていることがよくわかる。これが二人のやり方なんだろうな、と納得していると、話し声で目を覚ましたのか、トッド君とターシャちゃん、ソニアちゃんがリビングに入ってきた。

「「おはよ……」」

「おとうさん、おかあさん、アユムさん、おはよう」

 トッド君とターシャちゃんはまだ半分寝ているようだが、全員揃ったので、ちょっと早いけど朝食にしよう、とジュディさんが料理をよそい始める。

「アユムは試作品を持って行ってくれるかい?」

「わかりました」

「もう一つずつ冷蔵庫にあるから」

 私はジュディさん達と違って、一度に二つ以上の料理を運ぶことはできないので、まずはフルーツタルトと四角いケーキを持って食卓に移動する。と、椅子に座った状態で前後にゆっくり揺れていたトッド君とターシャちゃんが急に目を見開き、私の方、正確に言えば、私の手元を見た。

「「ケーキ!!」」

「新作だよ。三つあるから、どれが良いか選びなさい」

 そう言いながら、カルロさんは飴細工のタルトを持ってきた。すると、二人は目をきらきらと輝かせながら、笑顔で言った。

「「それ!!」」

「どうやら、子供にも飴細工は好評みたいだね」

「……食べ終わったら急いで作るよ」

「私も食べ終わったらポップを作るので、カフェの方でも飾って貰えますか?」

 同時に出すのなら、小枝ピアスと飴細工のタルトを並べたポップで宣伝をしたら効果的だろう。そう思って言うと、助かるよ、とジュディさんが頷いた。

「「…………ちくちくする」」

「先にケーキを食べるからだよ、全く……」

 勢いよく飴細工にかぶりつき、口に尖った部分が当たったらしい二人が顔を顰めるのを見て、ジュディさんは食べる時の注意喚起も必要かね、と笑ったのだった。


次回更新は5月3日17時予定です。

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