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カフェとアクセサリー

「すごい……」

 広くなった空間を見渡す。単純に倍広くなっているが、更に、壁も少し高くなったような気がする。順番に見渡していくと、扉のある壁、スクリーン代わりになっている壁、作業机が面している壁、そして、最後の壁は収納棚になっていた。相変わらず木製の扉と畳が微妙に合わないが、かなり快適な空間になったと言えるだろう。

「ポイントもかなり使ったけど……」

 その分だけ便利になっているので文句なんてものはない。空間そのものを広くしたりすると引き換えに必要なポイントも多くなるが、逆を言えば、ポイントだけで工房自体を大規模改造できるというのはすごい能力だ。

「これが本物の工房なら、広くするなんてことはできないし……」

 机を持って移動させるだけでも大変である。このスキル、最初は貧弱な工房しかないと思っていたが、今思うとかなり便利なものなのではないだろうか。これからも使い勝手のいい工房を追い求めていこう、と心に決める。

「作業机は、和室にも合うデザインだ……」

 ちゃぶ台から高さのある作業机に変更したが、木製という事もあり、畳の上に置いてあっても違和感がない。足の部分にカバーがついていて、微妙に細かい配慮もされている。しかし、固い木製の机には一つ、問題がある。

「このままだと、ビーズが跳ねるよね……」

 ビーズは、固いものに当たると跳ねて、机の上から落ちてしまう。ちゃぶ台は部屋の中心にあり、且つ高さもなかったのでビーズが落ちたりしてもすぐに見つけることができていた。しかし、作業机の場合は落ちて転がって行ったら見つけるのが大変だし、今からワイヤー作品も作るので、踏んでしまうとかなり危ない。

「何か対策は……」

 呟くと、壁の文字列が移動し、ポイントで引き換えることができるビーズ用品が表示される。どうしたのだろう、と現れた字を読んでいくと、一番上にビーズマット、と書かれていることに気付く。色は黒で、ビーズやワイヤーが乗っていれば、すぐに気付けるだろう。

「……引き換えで」

 作業机にぴったりの大きさのビーズマットが、引き換えを宣言すると同時に現れる。ついでに、作業中に使いやすい、ビーズを入れる為の小皿を幾つかと、目盛り付きのカッターマットも引き換え、机の上に並べる。

「よし」

 後は、ゴミ箱を作業机の横に設置して完了である。燃えるごみと燃えないごみを一緒にするのは自分が許せなかった為、新しいごみ箱も増やす。満足して部屋を見渡すと、時計が目に入る。

「寝ようと思ってたけど、まだ日付は変わってないのか……」

 小枝ピアスが完成した時は達成感もあって眠くなっていたが、工房の改造をしている間に目がさえてしまった。日付が変わるまで後一時間あるので、もう一つくらい作っても良いかもしれない。

「次は、リース状にしよう」

 先程作った小枝ピアスを、広がっていく形ではなく、リースのような形にするだけである。手順は殆ど同じなのだが、シルエットが逆三角形になるか、丸くなるかで印象が全く変わるのだ。

「銀色と……、赤にしよう」

 先程は金色と緑色だったので、できる限り違う色で作ることにする。引き換えたばかりの小皿に赤いビーズをザラザラと入れ、マットの上にワイヤーと工具を並べる。適当な長さにワイヤーを切って、作業を開始した。


「おはようございます」

「おはよう、アユム。随分と機嫌がいいね」

 翌朝、キッチンにて。何時も通りの時間に目が覚めた時間は、手早く身支度を終え、ジュディさんよりも先に朝食の準備を始めていた。昨日は日付が変わる時間まで作業をしていたのだが、ちゃぶ台ではなく作業机と椅子に変えたからか、身体が痛むことはなく、更には新商品を完成させたからなのか夢見も良かったのだ。

「そんなにわかりやすいですか?」

「そうだね。アユムがそんなに機嫌がいいという事は、新しい商品でも完成したのかい?」

「大当たりです。ジュディさん、すごいですね……」

 そう言うと、大分アユムのことも分かるようになってきたからね、とジュディさんが笑った。確かに、此処の3階に住み始めてから、それなりの時間が経った。お客さんも常連さんと言える人が増えて来たし、この街での暮らしに馴染んできたと言えるだろう。

「アユムが新商品を出すと、カフェのお客も増えるからね。飽きられないように新商品を作って行かないと、って気持ちになるよ」

「カフェも新商品を出すんですか?」

「そうそう。幾つか案を考えていてね。後はその中から選べばすぐに出せるけど、どうせなら、アユムが新商品を出すタイミングに合わせようと思って」

 朝食の後に食べられるなら試作品のケーキを出すよ、と言われる。甘いものは好きなので、小さく頷くとジュディさんは少し笑って頷き返してくれた。そして、ジュディさんが冷蔵庫から取り出した3つのケーキのうち、1つを見て、私は固まった。

「それって……」

「ああ、タルトに飴細工と載せたものだよ。可愛いだろう?」

 その飴細工はまるで、木の枝を組んで作られた、鳥の巣の様だった。


次回更新は5月2日17時予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ワイヤーアートって今は言うんですね…!昔やってたころはそんな名前ついてなかったな。めがねどめが好きだったので穴のないルースを鳥かごに編んで中に入れたのを革紐に通すのにハマってた事を思い出しま…
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