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九、暑すぎる夏

 一学期があっという間に終わった。

 今日から夏休みなわけで、和葉ちゃんに会える日がなくなる。

 今頃何してるのかな~。宿題、やってるのかな~。


「和葉ちゃんに会いてぇ~!」


 クーラーがなく、扇風機で暑さを凌(しの)がなければならない、俺の部屋。

 窓を開けても、入ってくるのは暑い風。


「暑すぎだろ~! 何だよ夏って。こんなに暑くなるなよ~! 止まれ、温暖化!」


 って、さっきから何言ってんの、俺!

 暑いのは、俺と和葉ちゃんの関係だけでよくね?!

 いやいや、待て。きっと暑さのせいだ。うん。絶対そうだ。

 普段の俺は、そんなこと言わないだろ。


 ベッドにうつ伏せで寝そべり、暇すぎる平日の午前を過ごす。


「水希(みずき)君でも、晶楽(あきら)君でも、こういう時に来てくれたら遊べるのにな」


 あ、ダメだ。KiRa(キラ)はもうすぐ、東名阪での夏ツアーが始まる。

 帰省(かえって)来るのは、お盆の時期だけだろう。


 ピロン。


 机に置いた俺のスマホが鳴り、一瞬、驚いた。

 立ち上がり、スマホを確認すると、和葉ちゃんから。


『紘斗君、暇? よかったらさ、一緒に宿題終わらせて、ゲームしよ!』


 キター! 夏休みでも、和葉ちゃんに会える!

 ありがとう、神様! ありがとう、夏休み!


『暇すぎるよ! 和葉ちゃんとゲームしたい!』


 送信。

 すると、すぐに返信が来た。


『今から行ってもいい?』


 おぉ! マジですかぁ!


『いいよ! おいで!』


 和葉ちゃんから来てくれるなんて! 夏休み様々(さまさま)かよ!


 ***


「おじゃましまーす」


 和葉ちゃんが家に来たのは、それから二十分後。

 玄関まで迎えに行き、俺の部屋に向かいながら話す。


「いらっしゃい、和葉ちゃん。Sw◯tchバージョンでいい?」

「その前に! 宿題を先に終わらせよう。ゲームはその後」

「うぅ。俺は、和葉ちゃんと一緒に、ゲームをするつもりだったのに……」


 あんまりだぁ~!


「辛いことを先に終わらせれば、その後の楽しいことが、もっと楽しくなるよ? それとも紘斗君、後で辛いことをしたい?」

「和葉ちゃん、怖いよ?」

「それじゃあ、宿題しちゃおっか」


 和葉ちゃんは、夏休みエンジョイ勢なのだろうか。

 宿題を先に終わらせてしまえば、残りの日数を、勉強に縛られることなく、思う存分遊べる。


 確かにそうなんだけど、やっぱりさ。遊びたいじゃん! 

 遊びまくりたいんだよ! 和葉ちゃんがすぐ側にいるのに、宿題をやらなきゃいけないとか、残酷過ぎるでしょ!


「数学の宿題は、夏休み明けの、計算テストの範囲みたいだからね」

「小牧先生、そんなこと言ってた? 俺、聞いてない」

「寝てたでしょ~。このプリントが配られた時に、言ってたよ」

「マジかぁ。小牧先生、鬼じゃん」


 今日は天国なのか、地獄なのか。

 神の加護を、俺は受け取りたい。

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