八、月が綺麗な日
「ファンの呼称、なんて言うか知ってるよな?」
「もちろんです! 私たちが知らないわけ、ないじゃないですか!」
KiRaの話はまだまだ続くようで、小牧先生は色々教えてくれた。
「あの二人、ファンを『クォーツ』って、呼ぶことにしたんだよ。それぞれのファンの呼称は、考えなかったみたいなんだけどな」
「それは、ボツになったユニット名?」
「そうなんだけど、晶楽がさ。ファンの呼称にこだわって」
「まさか、晶楽君。ボツになったユニット名から、ファンの呼称を考えたとか?」
本当に和葉ちゃんは、KiRaが好きなんだなぁと、思う。
小牧先生との会話が、盛り上がりをみせているから、俺の居場所がない。
「まぁ、それもあるけど。『水』と『晶』をくっつけた名前が、『水晶』になるなら、ファンの呼称は『クォーツ』にしたいって」
「単純ですね」
「あの二人は、そういう奴らだからな」
チャイムが鳴り響き、最終下校の時間になっていた。
「もうこんな時間か。気をつけて帰れよ」
「「はーい」」
***
西の空には、大きな夕日。
部活終わりの生徒が多く、正門に向かって歩いていた。
「夕日が眩しいね。この時期は、暗くなるの遅いよね」
「和葉ちゃんは、帰ったら何する?」
「ご飯食べてから、執筆かな。今連載してる作品が、そろそろ終わりそうなの」
「厨病のやつ?」
「それとは別の。紘斗君、読んでくれてるでしょ」
「もしかして、あれのこと? えっ、もう終わるの?」
「うん。物語に一区切りつけたくて。シリーズとして、まだ続くから、楽しみにしてて」
「和葉ちゃん。本当、好き」
「私も好きだよ。紘斗君」
生徒玄関から正門までの距離が、こんなにも短く思えるのは、多分俺だけだろう。
「送っていこうか? 一人じゃ危ないし」
「そんな。いいよ。紘斗君ちと反対だよ?」
「俺は大丈夫だから。送るよ」
自然と手を繋ぐことも多くなった。
こうして一緒に帰れるなんて、話すようになる前は、想像出来ただろうか。
「KiRaの二人が、初めてステージに立ったのは、高二の文化祭だったんだよ」
「どんな曲だった?」
「『ラブオール・ラブゲーム』ってタイトルの曲。恋愛の曲だったよ。あの頃は歌詞の意味がわからなかったけれど、今になってわかるような気がする」
「今日の月も綺麗だね。紘斗君」
三日月が輝き始めている、東の空。
月が綺麗なのはきっと、二人で見る月だからかな。




