二、KiRaと紘斗
「「おじゃましまーす!」」
それは、土曜日のこと。
聞き慣れた二人の声で、スマホで執筆していた手を止めた。
兄貴が玄関まで出迎えに行ったらしく、バタバタと足音が部屋まで聞こえている。
今日と明日は、九つ年の離れた兄貴の友達が、泊まる日なのだ。
部屋の扉を開け、キッチンに向かおうとした瞬間。
見つかってしまった。
「紘斗じゃん! 久しぶり~! 大きくなったな~。元気?」
「紘斗~! 会いたかったぞ~!」
兄貴の友人。その人たちは、今や歌い手好きの間で、知らない人はいない。
俺も好きな歌い手であり、和葉ちゃんも大好きな歌い手。
KiRa。
水希君と晶楽君は、高校時代からの兄貴の友人なのだ。
「久しぶり。いらっしゃい」
小学生の頃から、二人のことを知っているけれど、今も尚、緊張する。
だって、すぐそこに、大好きな歌い手の二人がいるんだぜ?
「今日、二人泊まってくから」
「それで母さん、はしゃいでたのか」
「二人のこと、応援してるからな」
二人が家に来ることは知っていたけれど、兄貴から聞かされるまで、泊まっていくなんて知らなかった。
「んじゃ。また後でな」
兄貴と部屋に行った二人を見送って、俺はキッチンへ向かう。
***
「紘斗~。今、暇?」
再び部屋で執筆していると、ドアをノックせずに、兄貴が俺の部屋に来た。
いつもノックしないから、そこだけはムカつく。
「ノックぐらいしろって、前にも言ったぞ」
「わりぃ。いつもの癖だ。それで、今、暇?」
「暇だけど?」
「ゲームの人数合わせで、付き合ってくんね?」
「何すんの? ホラゲーは無理」
「バトルゲーだから、大丈夫だろ」
こんなに近くでKiRaとゲーム出来るファンは、日本中で俺一人。
ごめんね、和葉ちゃん!
「お待たせ~」
俺、KiRaの二人と、ゲームするわ!
「おーし! まずはソロ戦な。何回戦かしてから、チーム戦するか! 紘斗!」
「ぜってぇ、負けねぇからな! 紘斗!」
「えっ!? 俺!? 」
「二人の標的は、お前だぞ」
「なんで!?」
このあとの言葉に、俺は衝撃を受けたのだった。
「「彼女いるらしいじゃねぇか!」」
「えー!! なんで知ってんの!? 兄貴ぃ!!」
「わりぃ。お前にやっと彼女ができたからさ、二人に言ったんだよ。そうしたら、こいつら……。ブフッ」
笑う兄貴。
標的にされたのは、お前のせいだろうが!!
責任を取ってもらいたい!
「いいな~。リア充。なぁ。晶楽」
「俺らのCD発売が決定して喜んでいたら、紘斗に彼女ができたとかな。羨ましいどころの話じゃないぞ! どんな子なんだよ!」
「えっと、それは……」
バトルゲーをしている間、俺は生きていられるのだろうか。




